新連載 水沼貴史×平畠啓史

 国内外のサッカー中継の解説者として活躍する水沼貴史さんと、日本屈指のサッカーマニアで知られる平畠啓史さんが、サッカー界のホットな話題をしゃべり倒す連載がスタート。今回は、水沼さんにJリーグで「今見てほしい」という日本人センターバックを3名選んでもらった。

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【すごい頼りになる】

平畠 さあ今回は、今見てほしい日本人センターバック(CB)3選です。CBって意外と目が行かないというか。 

水沼 それがおかしいんですよ。なんで見ないのかなと思います。先日、FC町田ゼルビア横浜FCの試合の解説をやったんですけど、中継の前の打ち合わせで注目選手にCBふたりをあげました。大体FWの選手になるところなんですが。

 なんでかというと、最近のDFはしっかりとビルドアップできるところなどが注目されがちですが、僕は「俺はひとりで守るぜ!」みたいな、そういう選手が好きなんですよ。

平畠 わかります。なんかこうラインで守るとか、ビルドアップ云々じゃなくて、ひとりで守りきるみたいなところですね。

水沼 CBで試合中20本もスプリントする選手とか、あまりいないですよ。それだけカバーするエリアが広くて、その範囲を全力で行くわけです。そういうのを見ていると、すごいなと思います。やっぱりこれがDFだろうみたいな。

平畠 なるほど。では水沼さんからひとり目を。

水沼 昌子源(FC町田ゼルビア)です。31試合消化したところでは、すべて90分フル出場。3バックの真ん中、左、右と全部やるんですよ。左が一番多いですけど。

 やっぱり、なんといっても最終的に相手にゴールを割らせないところですね。体の張り方が尋常ではないです。この間の試合では、這いつくばりながら顔面ブロックしたプレーがありました。「うわ、すごい頼りになる」って思いませんか?

平畠 なりますよ。その実際のプレーもそうだけど、DFとしての矜持みたいなことですよね。

水沼 それと別の試合では、カウンターを食らった時に全速力で戻ってくる姿がありました。

これはロシアW杯のベルギー戦の失点を忘れていないのかと確認したんです。そうしたら「あのシーンは忘れていないんで、絶対戻る」と言ってくれたんです。

 あと周りにもシュートブロックのことは相当言ってるみたいですね。体の張り方とか、ブロックに行く方向とか。もうそういうのがすごいと思って、まずは昌子を選びました。

平畠 今、昌子選手は右サイドへのフィード、展開がいいですよね。

水沼 対角に出すフィードがいいですよ。右にいる時は左サイドに。左のCBをやっている時は右サイドに出すヤツですね。

【俺ひとりいたら大丈夫】

平畠 では、次のひとりをあげてもらっていいですか?

水沼 鈴木義宜(京都サンガF.C.)です。

平畠 ああ、いいですね。

水沼 京都の、あのみんなが前にガンガン行くサッカーのなかで大変だと思います。サイドバックもみんな行っちゃって。

平畠 隣のCBも行きますからね(笑)。

水沼 そうしたなかでコントロールをする。なんか彼を見ていると心を打たれるんですよね。別の番組では彼のことを「皇帝」と呼んでいたんですが、大分トリニータから(キャリアが)始まり、清水エスパルスに行き、大ケガをしてしまったんですけど、また戻ってきている姿とか。

 今季は31試合消化時点で30試合フル出場。1試合だけ途中出場です。

平畠 なんかこう周りが前に出て行くじゃないですか。それを「行くな、行くな」みたいな感じは見たことないですよね。「行ってこい、俺が止めるから」みたいな。

水沼 俺ひとりいたら大丈夫的な感じがある気がするんです。

平畠 たとえばゴール前で体を張るとか、跳ね返すとかもあるけど、相手のFWに入る縦パスとかも、もう早めに潰しますよね。

水沼 そうした予測ができて潰せる時は潰すし、距離を空けたほうがいい時などもあって、その判断がやっぱりすばらしい。

シュートブロックで最後に体を張るところもすごいなと。

平畠 鈴木選手がいなかったら、今の京都のサッカーはなかなか難しいでしょうね。

水沼 そうだと思います。後ろで構えてブロックを作っている町田の昌子とは違って、周りが前にガンガン行くなかでのCBの役割。背後にはスペースがあるけど、後ろに残っていたら全体が間延びしちゃって、相手がやりたい放題だからラインコントロールもしなければいけない。

平畠 京都のサッカーって、綺麗にラインを作って守るとかではないじゃないですか。そうすると結構意外なところからボールが出てきたりすることもあるわけで、そこもしっかりと対応できているのもすごいですね。

 いや、これまたいい選手をあげていただきました。そして、もうひとりですね。

【ひとりで守って、ひとりでビルドアップする】

水沼 ちょっとここで感じの違うタイプを。古賀太陽(柏レイソル)。

平畠 ああ、いいですね。

これも鈴木選手じゃないですけど、ひとりで守る......。

水沼 ひとりで守って、ひとりでビルドアップする。

平畠 忙しいな(笑)。でもそういう役割ですもんね。

水沼 もうレイソルのサッカーに、彼は欠かせないでしょ。両利きですよ。右足、左足、両方でパスを出せるし。まあ、すごいですね。

平畠 古賀選手の横って、いわゆるCBタイプの選手じゃないですもんね。攻撃に行くし。そうすると古賀選手の仕事量もかなり多いんじゃないですか。

水沼 大体2バックで回すような形が多くて、左肩上がりになったり、逆もあったり、あとはボランチが下りてきたりといろんな形はあるけど、結局は古賀太陽経由なんですよ。

平畠 確かにそうですね。

水沼 そこからは縦パスのコースを見つけてズバッと入れる。そこでスイッチが入って前が連動しだす。で、いくら引っかかっても入れ続けるでしょ、彼は。

 日本代表の時にはまた彼の違う能力を見ました。3バックの左とか、5バック気味になる時の左とかをやりましたが、何でもできる。3バックと外側との間のスペースをうまく絞って消すなど、危ない場面を先読みしてどんなポジションを取ったらいいかというのもできる。だから真ん中もできるし、3バックのサイドもできるし、多分4バックのセンターや左もできるし。まあ、能力が高い。

平畠 レイソルって攻撃的じゃないですか。自分たちで主体的にボールを動かしながらプレーしていますけど、失点ってやっぱり多くないですもんね。

水沼 29点しか取られてないです。そのなかで31試合フル出場。

 ひとりで守れて、ひとりでビルドアップできるって、見ていて面白いですよね。「レイソルの太陽」が本当に出てきた、みたいな。

平畠 こんなレイソル向きの名前もないでしょう。古賀太陽って......。

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