U-20ワールドカップで地元チリも完封し2連勝 前評判が低か...の画像はこちら >>
 U-20日本代表の世界挑戦は、相手のスピードに面食らうことから始まった。

「(事前の分析で)速いし、強いし、というのはわかっていたけど、想像以上で、自分たちが準備していたより、もっと速くて強いという印象だった」

 U-20ワールドカップのグループリーグ初戦、エジプトとの試合を終え、そう語ったのはセンターバックの喜多壱也(レアル・ソシエダB)である。

 日本は前半、エジプトの選手が見せる強度の高いプレーに後手を踏み、自陣に押し込まれる展開を強いられた。

 喜多とセンターバックのコンビを組む、キャプテンの市原吏音(RB大宮アルディージャ)もまた、「映像で見る以上に速かったし、フィジカルチックだなと思った」と、エジプトの選手を評する。

 だが、「この2年間積み上げてきたものがあるし、ヨーロッパや南米の選手を相手に戦ってきたので、やることは変わらないなと思っていた。すぐにみんな順応できていた」と市原。日本は攻撃機会が限られるなかでも、前半29分にキャプテン自らのPKで先制できたこともあり、後半に入ると、主導権を握って試合を進めることができた。

 はたして、後半開始早々の石井久継(湘南ベルマーレ)のミドルシュートで追加点を奪った日本は、大事な大会初戦を2-0で勝利し、勝ち点3を手にしたのである。

 ボランチを務める大関友翔(川崎フロンターレ)が、「(エジプトに)球際のところやスピードで上回られる場面も多かったので、課題が残った」と反省の弁を口にしつつも、「そこで失点しなかったのはチームとしての成長」と語る、貴重な勝利である。

 しかしながら、2年前のこの大会を振り返れば、日本は初戦を勝利しながら、残る2戦で連敗し、グループリーグ敗退。この1勝が何かを保証してくれるものでないことは、過去の歴史が証明している。

 しかも、第2戦の相手は開催国のチリ。5万人近いサポーターがスタンドを埋め、地元チームを後押しすることは容易に想像がついた。そこでアウェーの雰囲気に飲まれてしまうようなら、単に勝ち点を落とすにとどまらず、大会を通じての勢いという意味でも、初戦の勝利をフイにしてしまいかねなかった。

 実際、チリ戦が始まると、「隣の(ポジションの)選手の声も全然聞こえなかった」とは、右サイドバックの梅木怜(FC今治)の弁。耳をつんざくような大歓声のなか、「(ポジションが隣り合う)自分と(市原)吏音も、近づいて話さないとコミュニケーションがとれなかった」と振り返る。

 だが、チリにボール支配率で上回られても、日本は慌てなかった。

 大関は、「チリがやっていたことを、本来は自分たちがやりたかった。特に前半は、もう少し前でプレーしたかった」と言いながらも、こう語る。

「相手にボールを持たれていたし、(試合の)入りのところで少し(相手の)圧力を感じてしまったので、不本意ではあったが、少し守備から入ろうかなというところがあった」

 守備への高い意識は、ボランチやDFラインの選手ばかりではない。

「(相手に)ボールを運ばれると、僕ら(DFライン)がちょっと引く部分があったので、その間延びするところを前の人たちが埋めてくれたのはすごくありがたかった。DF陣だけで守れればいいが、そういう世界ではない。チームみんなで守れたのはよかった」

 DFラインを支える喜多がそう話したように、日本は常にコンパクトな守備陣形を保ち、ほぼ完璧にチリの攻撃を封じ込めた。

 だからといって、日本は55分に市原のPKで先制したあとの時間も含め、決してベタ引きで専守防衛に徹していたわけではない。バランスのとれた守備を見せながらも、マイボールの場面ではしっかりとチーム全体で押し上げ、人数をかけて敵陣に攻め入った。

 A代表を率いる森保一監督の口癖ではないが、まさに「いい守備からいい攻撃へ」の好循環が作れていたのである。

 こうなると、ホームの大声援が余計なプレッシャーになるのも、サッカーの常である。

 試合終盤、次第に焦りが見え始めたチリの攻撃に対し、日本が失点しそうな危うさを感じることはまったくと言っていいほどなかった。

「前半の終わりのほうからそうだったが、相手のプレスが少し弱くなっている実感はあったし、そこでセンターバックとボランチ間のパス交換も増えたので、いい形で前向きでボールを受けられるようになった」

 そんな大関の言葉どおり、時間の経過とともに、むしろ効果的な攻撃回数を増やしたのは、日本のほうである。82分には「長いボールからセカンドを回収するという狙い」(大関)が当たり、途中出場の横山夢樹(FC今治)がミドルシュートを叩き込むと、赤く染まったスタンドは静まり、事実上勝負が決した。

 終わってみれば、日本は初戦に続く、2-0の快勝である。

 この勝利でグループリーグ2連勝とした日本は、勝ち点を6に伸ばし、1試合を残して決勝トーナメント進出が決定。まだグループ内での順位が確定しておらず、日本には1~3位までの可能性があるが、仮に第3戦に敗れて3位になったとしても、全6グループの3位のなかで成績上位4カ国に入ることが確定したためだ。

 得失点差でプラス4の貯金がある日本は、グループリーグ最後のニュージーランド戦で勝ちか引き分けならもちろん、負けても大敗を喫しない限り、1位通過が濃厚という有利な状況にある。

 とはいえ、せっかくなら、ここまでのいい流れを決勝トーナメントにつなぐためにも、グループリーグの締めくくりでもたつきたくはない。選手を入れ替え、主力を休ませながら、内容や結果もついてくれば言うことなしだ。大関が語る。

「先を見据えたときに、3連勝して上に行くか、2勝1敗や2勝1分けで行くかで全然違うと思う。

2連勝できたのはすごいことだけど、優勝するのが目的なので、もう一回気を引き締めて3戦目を頑張りたい」

 日本がU-20ワールドカップに出場するのは、今大会で12回目を数えるが、無失点での開幕2連勝は史上初。アジア予選でのもたつきもあり、前評判が高いとは言い難かったU-20日本代表が、さらなる勝ち上がりを期待させる快進撃を見せている。

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