ラ・リーガ第7節、バルセロナ対レアル・ソシエダ(以下ラ・レアル)の一戦は、2-1でバルサが下馬評どおりの勝利を収めた。
「みんなが、"これぞラミン(・ヤマル)"という姿を目にすることができただろう」
試合後、バルサのドイツ人指揮官ハンジ・フリックはそう振り返っている。
スペイン代表アタッカー、ヤマルは交代出場で試合を一変させた。バロンドール投票で2位。すでに世界のスーパースターであるが、異次元と言っていいのか、1対1で相手のディフェンスを置き去りに、右足クロスでロベルト・レバンドフスキのヘディングゴールをアシスト。交代出場後、1分足らずで決勝点を演出した。
ヤマルは、まだ10代の選手である。だからというわけではないが、プレーが無邪気で遊び心にあふれる。左足のダブルタッチで相手の股を通し、ドリブル突破。子どもがストリートサッカーで遊んでいるような奔放さで、それをトッププロ相手に簡単にできることが瞠目に値する。即興性、創造性で他と一線を画す選手だ。
バルサは、ハイラインを敷いて攻め続ける。ボールをつなぎ、運び、迫る。そこのコンビネーションに特化してそれを極めたチームで、確実に崩せるアタッカーがいることで、これだけのスペクタクルを見せられるのだろう。
バルサ戦で敗者になった久保も、ヤマル同様にゲームチェンジャーになっていたことは間違いない。彼がピッチに入ってからは、ラ・レアルはボールが右サイドで落ち着くようになった。その結果、ゴールに迫る機会も増えた。
【状態は思った以上に思わしくない?】
久保はゴールライン近くまで侵入し、ドリブルから間合いに飛び込ませず、ミケル・オヤルサバルのシュートを演出している。また、ブライス・メンデスとのワンツーから抜け出し、GKの逆を突いたニアへのシュートはポストを直撃、オフサイドの判定だったが、鋭くゴールに迫った。メンデスが相手からボールを奪ってからのカウンターでは、左のオヤルサバルの折り返しを拾った久保が相手をひとりかわし、左足を振ってシュートをバーにぶつけた。
ヤマルは結果を残したが、久保も決して悪くなかった。
足首の状態が思わしくないなかでも、久保は強大なバルサを脅かしていた。ゴールネットを揺らせなかったことに焦点が当たりがちだが、その直後、バルサのレバンドフスキもイージーな利き足シュートをバーに当てたように、ミス自体は起きるものである。正しいポジションを取って、ボールを呼び込み、コンタクトできている点に着目すべきだ。
久保本人が試合後のコメントで認めているように、足首の状態は思った以上に思わしくないようだ。マジョルカ戦で先発出場し、勝利につなげたのはまさに綱渡りで、バルサ戦も30分間の出場は限界だった。少なくとも、数日間は休養が必要なのだろう。完治させなければ深刻なケガにつながる可能性もあるのだ。
あらためて、久保の重要性が示されたバルサ戦だった。
もうひとつ、ラ・レアルのチームとしてのバルサ戦の戦い方は、敗れたとはいえ、決して的外れではなかった。攻撃的な編成を崩さずに挑み、結果的には押し込まれたが、その姿勢が拮抗した試合展開につながっていた。
その点は、森保ジャパン対強豪国にも置き換えられるかもしれない。
日本がワールドカップで強豪国と対戦すれば、ラ・レアルがバルサと戦ったように劣勢を強いられる。しかし極端に、5バックにしたり、パワーやスピードに長じた選手を起用するといった弱者の立場を取る必要はない。弱みを見せれば、むしろ押し込まれる。
久保が万全だったら、どこかで勝機も作れるだろう。
それだけに、10月の代表戦で久保を無理して招集する必要はなかった。パラグアイ戦、ブラジル戦は貴重な強化試合だが、久保がいない、という状況はいくらでも考えられる。他のテストに切り替えるべきだった。
そもそも適材適所ではない5-4-1は、いったん、引き出しに格納すべきだろう。どういう了見で、フランクフルトの堂安律のように欧州トップクラブでウィンガーとして活躍する選手をウイングバックに使っているのか。本来の場所に配置して南米勢と戦うほうが収穫も望めるはずだ。
話が逸れたが、久保は前回の代表戦で負傷した。もし今回の代表戦でケガが再発しようものなら目も当てられない。日本に毎月のように戻るのは心身ともに負担も大きく、招集のタイミングは考慮に入れるべきなのだが......。
10月5日、ラ・レアルはラージョ・バジェカーノを本拠地に迎える。