2027年からセ・リーグでDH制が導入される。打撃優位型のドラフト候補は「パ・リーグ向き」と評価されることが多かったが、今後はDH制導入を見越してセ・リーグのスカウティングが変わっていく可能性がある。

そこで、今年のドラフト候補のなかから打撃の一芸が際立つ「七人のバットマン」を紹介していこう。

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【プロ志望届を提出した東京六大学の三冠王】

 大学球界から真っ先に推薦したいのは、山形球道(立教大)だ。

 山形は今春に東京六大学リーグで三冠王(打率.444、5本塁打、17打点)に輝いた左打者。身長172センチ、体重82キロと上背はないが、独特の打撃スタイルが目を惹く。右足をダイナミックに上げてタイミングを取り、上段に構えたバットをしならせてインパクトに強さを出す。今夏は大学日本代表にも選ばれた。

 レギュラーを奪取したのは4年生になった今春からだが、昨年までも打撃力は光っていた。東京六大学リーグも来春からDH制を導入するが、もし昨年からDH制が導入されていれば山形の出場機会が増え、ブレイク時期も早まっていたかもしれない。

 当初は大学卒業後に社会人入りする予定だった。だが、評価の高まりを受けて方針を転換。9月9日にプロ志望届を提出した。右投左打の外野手はプロで飽和状態にあり、ドラフト指名のハードルは必然的に高くなる。とはいえ、山形ほど打力が突き抜けていれば、話は別だろう。

 大学生の右打者では、金子京介(神奈川大)を押さえておきたい。身長185センチ、体重93キロのたくましい肉体で、迫力のあるスイングから強烈な打球を飛ばす。今春の神奈川大学リーグでは10試合で4本塁打、13打点をマークした。

 盛岡大付(岩手)では高校3年夏の岩手大会で5試合連続本塁打を記録するなど、通算58本塁打を放っている。大学進学後も当然ながら期待されたが、大学3年時に体重を105キロまで増やしたことで不振や腰の故障に悩まされた。現在は体重を絞り、打棒に磨きをかけている。一塁手ではあるが動きのキレは悪くなく、足も遅くない。

【ドラフト】強打自慢の「七人の侍」に注目 バット一本でプロ野球のDH時代を生き抜く!
今夏の都市対抗で10打数5安打をマークしたJR東日本の高橋隆慶 photo by Kikuchi Takahiro
 社会人からは、即戦力に近いDH候補として高橋隆慶(JR東日本)の名前を挙げたい。明秀学園日立(茨城)、中央大と潜在能力を評価された右のスラッガーだが、パフォーマンスにムラがあった。JR東日本に入社後は「まずはとらえないと始まらない」と思考がシンプルになり、才能が開花。1年目から強豪の主軸を張り、長打を連発している。

 今夏の都市対抗では本塁打こそ出なかったものの、10打数5安打をマーク。

身長185センチ、体重88キロの大型打者ながら、コンタクト能力の高さは大きな魅力になる。入社後に本格的に取り組んだ三塁守備も上達しているとはいえ、プロレベルで見ると甘さも目につく。まずは打撃を武器にのし上がりたいところだ。

 社会人の左打者では、外山優希(SUBARU)を忘れてはいけない。身長186センチ、体重97キロの大きな体躯で、自分の間合いでとらえた際の打球は迫力満点。中堅方向の打球がぐんぐん伸びるなど、広角に長打が打てる点も光る。現在、守備位置が一塁手に限定されているため注目度は高くないが、高い次元で見てみたいバットマンだ。

【夏の県大会を盛り上げたドミニカ人留学生】

 高校生ではドミニカ人留学生のエミール・プレンサ(幸福の科学学園高)をピックアップしたい。父のドミンゴ・グスマン(元中日ほか)はNPB3球団で活躍した元プロ野球投手。中日時代の恩師である森繁和の橋渡しで、息子は日本の高校へと留学した。

 身長190センチ、体重107キロの巨体ながら運動能力は高く、天真爛漫な性格も人を惹きつける。今夏の栃木大会3回戦・小山西高戦では、起死回生の同点本塁打を放った次の打席で、サヨナラ満塁弾を放り込んでみせた。

野球を始めた年齢が13歳と遅く、無限の伸びしろを残していると言っていいだろう。

【ドラフト】強打自慢の「七人の侍」に注目 バット一本でプロ野球のDH時代を生き抜く!
栃木ゴールデンブレーブスの長距離砲・田端真陽ダッタ photo by Kikuchi Takahiro
 国内独立リーグからは、大坪梓恩(石川ミリオンスターズ)と田端真陽ダッタ(登録名・ダッタ/栃木ゴールデンブレーブス)の怪力自慢の右打者を紹介しよう。

 大坪は身長190センチ、体重108キロと圧巻の巨躯で、打席に入ると一際大きく見える。インパクトの瞬間、打球がピンポン玉のように弾ける打撃練習を見れば、誰もが衝撃を受けるはずだ。まだ粗さは目立つものの、メジャー級のスケールと言っても過言ではない。

 日本海リーグでは今季40試合に出場し、打率.296、8本塁打(リーグ1位)、32打点をマークした。通信制高校、スポーツ専門学校を経て、独立リーグに流れてきた変わり種。2004年2月生まれの21歳と年齢も若く、可能性は青天井に広がる。プロの環境で本格的に鍛えれば、とてつもない化け方をしても不思議ではない。

 ダッタはインド出身の父を持ち、東海大山形高でも右のパワーヒッターとして注目された。アメリカのオーロニ大を経て、今季からBCリーグ・栃木に入団。今季は53試合の出場で打率.308、4本塁打、48打点を記録した。

9月末に開催された独立リーグ日本一を決めるグランドチャンピオンシップでは、2打席連続本塁打をマーク。その破壊力のあるインパクトは、NPBの世界でも武器になるだろう。

 最後にひとつ、大きな「誤解」を解いておきたい。一部メディアによると、セ・リーグ球団が近未来のDH候補として小田康一郎(青山学院大)をリストアップしたという。だが、小田を「打撃専門」ととらえてしまうと、本質を見落とすことになりかねない。

 小田の打撃力がアマ球界屈指なのは間違いない。その一方で、守備も走塁も一流になる可能性を秘めている。現在はチームで一塁を守っているものの、これは守備力を評価されてのこと。プロでも、遊撃以外のポジションをこなせる素養を十分に備えている。本題からはそれるが、小田の「打撃以外」にもぜひ注目してもらいたい。

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