U-20ワールドカップ2025チリ大会で日本代表が快進撃を見せている。U-20ワールドカップに臨む日本代表としては初めてのグループリーグ3連勝を果たし、勝ち点9で決勝トーナメント進出を決めた。

 船越優蔵監督の率いるチームが目指すのは「今大会最大の7試合を戦うこと」。ストレートに受け取れば決勝進出を目標とすることではあるが、最低でもベスト4には入って3位決定戦には進出しようという、裏メッセージも読み取れる。

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 2005年1月1日以降に生まれた選手が対象の今チームは、世代トップの集合体であることは間違いなのだが、それでも所属クラブで出場機会の少ない選手もいる。そんな彼らが最大限の経験を積むべく、現地時間10月8日(日本時間9日朝)の決勝トーナメントではフランスと戦うことが決定している。一発勝負なだけに、手に汗握る試合となることは必至だ。

 グループリーグを振り返ると、3試合すべてに先発した選手はふたり。主将でCBの市原吏音(りおん/RB大宮アルディージャ)と左SBの小杉啓太(ユールゴーデン/スウェーデン)だ。2連勝して迎えた第3戦ニュージーランド戦では、船越監督がGKを含め9選手を入れ替えたからだ。

 初戦と第2戦で市原とCBコンビを組んだ喜多壱也(きた・かずなり/レアル・ソシエダB)は、ニュージーランド戦では市原との交代で後半45分間をプレーした。今大会の招集選手21人のうちCBは市原、喜多、塩川桜道(はるみち/流通経済大)の3人だけに、それぞれがしっかり力を発揮する必要がある。

 喜多はグループリーグでの自身に関して、こう振り返る。

「チームとしては無失点で、点も取れて、結果だけ見たら完璧。

内容もすごい。もっと(ゴールを)決められるところとか。細かい守備の部分は(課題も)あると思うんですけど、今はすごくいい雰囲気でできているなって思います。ただ、個人としては全3試合に出たけど、なかなか自分のプレーっていうのは......(相手に)勝てた感覚はなかった」

【京都ではリーグ戦出場なし】

 身長189cmの大型CBである喜多は、空中戦はもちろんのこと、フィードをはじめ攻撃への関与も得意とする。だが、ここまでの3試合では「発揮できていない」と反省点を抱えている。守備としては3試合クリーンシートを続けているものの、自分のストロングポイントを発揮できていないもどかしさが、喜多には残っている。

「ロングフィードを今大会まだ1本も通せてないので。自分の得意なところを、絶対に通さなあかんところで通せてないのは、自分の課題かなと」

 思い当たる理由はこうだ。

「たとえ守備的に引かれても(縦パスを)入れられるところだったり、通せるところもあった。原因は自分の意識かなと思います。行けるところを(市原)吏音や(小杉)啓太やゼキ(大関友翔)に渡してしまって。もっと(攻撃に)参加していかないと、この先のトーナメントは厳しい」

 自分の攻撃参加が決勝トーナメントを勝ち抜くひとつのカギになれば、と思っている。

 喜多はこの夏、スペインのレアル・ソシエダBに移籍した。

レアル・ソシエダといえば久保建英が所属するクラブ。そのBチームで、今大会に合流する直前の2試合は先発出場を果たした。もちろんスタメン定着はこれからではあるものの、さっそく高い評価を得ている。

 移籍話は今年3月、U-20アジアカップが終わった頃からあったという。喜多自身は当初、この移籍話をあまり信じられなかったそうだ。

「ホンマは『少し気にかけてる』くらいな感じ、けっこうある話じゃないですか。なので、信じられなくて。ちゃんと決まったのは7月なんですけど、嘘やと思った。信じてなかった部分があったんで『ホンマなん?』みたいな」

 正式なオファーを前に、喜多は戸惑ったという。

「行けるチャンスがあるなら行くべきやと思ってたんですけど、いざそうなると、すごく迷った部分があった。京都で試合に出てなかったんで、京都で出たいっていう気持ちもあったし。京都の選手にすごく憧れてたので、先輩に相談したり、親に相談したりして......。

背中を押してもらった部分はありました」

【川﨑颯太の言葉が後押し】

 海外移籍に対するハードルが下がった昨今において、「迷った」という話はわりと珍しい。喜多の場合は迷ったものの、長く海外でプレーした奥川雅也や山田楓喜といったチームメイトが後押ししてくれたという。

 なかでも、同じく今夏にドイツ・マインツへの移籍が決まった川﨑颯太の言葉が喜多の背中を押した。

「颯太くんとしゃべってる時に、冗談まじりですけど、『行ってあかんかったらそのレベルやったってことやし、(戻って)また成長していったらええやん』っていうのを気軽に言ってくれた部分があって。僕はその言葉に、すごい救われたっていうか。海外に行くなら絶対に成功したいっていう気持ちがあったけど、そう言ってくれたおかげですごく気がラクになった」

 ソシエダでも、U-20ワールドカップでも、喜多は自身のストロングポイントを最大限に発揮したいと考えている。

「絶対に負けたらあかんのは、高さやと思う。でも、自分が最も得意としているフィードの部分でも負けたらあかんと思うし......って、今大会まだ通せてないですけど。もっともっと、通していかないとあかんって思います」

 そう言って、喜多は表情を引き締めた。

 最後に「夢や目標は?」と聞くと、もっとも近い目標を口にした。

「U-20ワールドカップ優勝が一番です。このメンバーで少しでも長く戦いたい」

 これから世界に羽ばたこうとしている20歳の喜多壱也が、まずはチリでの活躍を誓った。

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