勝てた試合、いや、勝っていなければおかしい試合だっただろう。
U-20日本代表は、U-20ワールドカップのグループリーグを3連勝で首位通過。
ところが、0-0のまま延長戦に突入した一戦は、PK戦突入目前の延長後半120+3分、ゴール前の混戦のなかで起きた反則(ハンド)によって与えたPKを決められ、0-1で敗れた。
「数多くのチャンスを作ったなかで、(ゴールを)決められなかった。僕の責任かなと思う」MF佐藤龍之介(ファジアーノ岡山)がそう語ったように、日本は明らかにフランスを上回る数のチャンスを作っていた。だが、敗戦の責任を自らに課す佐藤のみならず、FW神田奏真(川崎フロンターレ)が、MF石井久継(湘南ベルマーレ)が、MF齋藤俊輔(水戸ホーリーホック)が、MF横山夢樹(FC今治)が、決めるべきところで決めておかなければ、相応の報いを受けることになる。それがサッカーの怖さである。
試合は、序盤こそボール保持率で上回るフランスが優勢に試合を進めたものの、前半15分をすぎたあたりから、一方的と言っていいほどの日本ペースとなった。
多くのチャンスを作り出し、次々に決定的なシュートを放つも、相手GKばかりか、クロスバーやポストにも防がれ、なかなかゴールネットを揺らせない。こうなると、逆に攻勢であるがゆえの嫌な流れになるのが、サッカーという競技の常である。
「僕個人の意見としては」
そう前置きして、試合を振り返ったのは、ボランチの大関友翔(川崎フロンターレ)である。
「いい形で試合ができているにもかかわらず、あと一歩のところ(でゴールを決まらない)ということで、逆にネガティブな感情を持ってしまい、最後の冷静さを欠いていたのは事実だと思う。後ろから見ていても、シュートの場面で、もう少し冷静になれるところを、強引にいく場面が目立っていた」
グループリーグでの戦いを振り返れば、日本は少ないチャンスを確実にものにして、3つの勝利を重ねてきた。
結果論を承知で言えば、3連勝したグループリーグの戦いからは、明らかに潮目が変わっていた。大関が続ける。
「今まで(の試合で)は少ないチャンスをものにしてきたので、逆にチャンスが多いなかで入らないと、やっぱり今までと違うというか、少しネガティブな感情がピッチのなかに流れていた。そこは自分たちの力不足だと思う」
後半に入っても、日本ペースは変わらなかったが、同様にシュートが一向に決まらない展開もまた変わらなかった。
結局、両チームが攻め合うもノーゴールのまま延長戦に突入した試合は、それでも得点が生まれない。延長戦の試合時間も残り5分を切り、いよいよ勝負はPK戦決着かと思われた、そのときだった。
延長後半の119分、右サイドからのクロスをゴール左で拾ったフランスのFWルーカス・ミハルが、再びゴール前に送ろうとしたパスは、日本の右サイドバック梅木怜(FC今治)の左手に当たり、コースが変わった。
主審の判定はノーファール。そのままプレーは流れたが、すぐさまフランスがビデオサポートリクエスト(今大会はVARが採用されておらず、判定に疑問があった場合、チームが主審にビデオ確認をリクエストできる)。
はたして、主審がオンフィールドレビューを行なった結果、ハンドの反則が認められ、フランスにPKが与えられたのである。日本はPK戦に備え、すでに交代出場の準備をしていたPKストッパー、GK荒木琉偉(ガンバ大阪)をピッチに送り出すも、ミハルに落ちついて決められ、万事休した。
率直に言って、フランスは決して怖い相手ではなかった。
ワールドカップ優勝2回の実績を誇る世界屈指の強豪国の看板に照らせば、拍子抜けと言ってもいいくらい。組織力においても、個人能力においても、日本はまったく見劣ってはいなかった。
とはいえ、本当の世界レベルがこんなものではないことも確かである。
かつてU-20ワールドカップと言えば、20歳以下の世界の精鋭が集うビッグイベントであり、のちに各国のA代表で活躍するスター選手が数多く顔をそろえる大会だった。ところが、最近はヨーロッパのクラブの青田買いが進み、南米やアフリカの選手も若くして海を渡るケースが多くなった。
その結果、所属クラブの協力が得られず、この大会に出場できない選手が増加。今大会のフランスにしても、現時点での20歳以下のベストメンバーがそろっているとは言い難い。
この大会も、もはや本当の意味で20歳以下の世界一を決める大会とは言えなくなっているのが現状だ。
しかしだからこそ、この程度のフランスなら、コテンパンに叩きのめしてほしかった。内容的に見れば、1-0や2-0どころか、4-0や5-0のスコアで勝利し、特大のインパクトを残すことも可能だったはずである。
「こういった試合を勝たなきゃいけない。
日本が今後、本気で世界のトップを目指すなら、あってはならない敗戦だった。