残酷な幕切れ。そう表現したくなるほど、試合の終わりは非情だった。

 現地10月8日に行なわれたU-20ワールドカップ・ラウンド16の日本vsフランス戦。日本は立ち上がりから攻めに攻め、枠内6本を含む22本のシュートを記録したが、どうにもシュートが入らないまま延長戦へ。逆に、内容に乏しく勝利への意欲すら疑わしかったフランスが延長戦の終わり際、ハンドで得たPKをきっちりと決めて、それが決勝点となった。

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 試合後、日本の選手たちは崩れ落ちた。ミックスゾーンにやってきた選手たちの大半は、まだ涙を隠せずにいた。

 ハンドをしてしまった梅木怜(FC今治)は、それでもミックスゾーンで立ち止まり、こちらの質問に答えた。拭っても、拭っても、涙はとめどなくあふれた。

「決められるところで決めきれなかったので、こういう結果になりました。ラストの最後のところで自分のハンドになってしまったのは、これまでの自分(のやってきたこと)なのかなと思いました。これをしっかり今後、生かせるようにがんばっていきたいと思います」

 嗚咽(おえつ)の合間に声を絞り出すようにして、懸命に話した。

「4試合戦って、日本のチームが世界で戦えることを証明できたと思いますし、本当に最後のところだったり、足りないところが自チームで取り組んでいきたいなと思います」

 話を終えてもなお、涙を流しながら、ロッカーへと戻っていった。

 守備陣にとっては気の毒すぎる試合でもあった。

大したピンチにこそならなかったものの、それでも時折スピードの脅威を感じさせる相手の攻撃を無力化し120分近くクリーンシートを保った。

 グループリーグ3試合でも、すべて無失点。決勝トーナメント進出の要因は、間違いなく守備のよさにあった。喜多壱也(レアル・ソシエダ)が振り返って言う。

「PKは誰も悪くないし、フランス相手にも崩される気がしなかった。自分たちディフェンダーとしては、今後につながるかなと思いました」

【得点の形はまったく見えず】

 反省が残るのは、PKを与えてしまったワンシーンだ。右のCBでプレーする喜多と右SB梅木の間で起きたプレーだった。

「手に当たったのは見ました。けど、あそこに至るまでにやることはあった。僕と梅木の間で挟んだ時にファウルでも止めるべきだったし、その前にあそこに行かせないようにするとか、大きくクリアできなかったのかとか......。ハンドは仕方ないことだけど、僕自身ファウルでも止めるべきだった。悔しいです」

 ゴールが遠い攻撃陣を、後方からどう見ていたのか。

「前半からチャンスも多かったし、自分のヘディング(シュートのチャンス)もあった。

『決めろ!』とは思っていましたけど、自分たちの役割はフォワードに点を決めさせることだし、相手にやらせないこと。『おい』ってなるのではなく『次、次』って感じにディフェンスライン4人はなれた」

 喜多はそう振り返った。

 決して耐えに耐えた長い120分ではなく、あっという間に時間は過ぎたという。つまり、苦しさのなかでプレーした120分では決してなかったということだ。それほど、日本ペースで進んだ試合だったのに、一発のPKであっけなく負けてしまった。

 勝負は残酷で戦っていた選手たちが気の毒に思えるとはいえ、さほど驚く試合展開でもなかったのもまた事実。後出しのようではあるが、グループリーグ3試合の戦いぶりから想像できた結果でもあった。

 というのも、3試合無失点の守備陣に手応えこそあれど、得点の形はまったく見えてこなかったからだ。

 3試合のなかでPKのチャンスが3回あった一方で、クロスは入らず、相手を崩して得たチャンスもなし。相手のミスからのゴールや、ミドルシュートでの得点だった。だからこそ、押しても押しても点が入らず、最終的に唯一に近いチャンスを決められる、もしくはPK戦に突入する、という展開は想像できた。 

【プロセスを疑うつもりはないが...】

 また、選手たちが「個の力の相手に対し、チーム力の自分たち」と言い続けていたのも気になっていた。

 フランスの圧倒的な個の力(実際にはさほど脅威ではなかったが)に相対するのは、自分たちのチーム力だというのはもちろんわかる。だが、守備はそうだとしても、得点のために最後は個のフィニッシュする力が必要だ。その欠如が露呈した試合でもあった。

 中盤で攻撃の起点として存在感を発揮したのは、大関友翔(川崎フロンターレ)だった。

「まだ整理できないけど、負けた事実を消化するのに精一杯です」

 大関にもゴールのチャンスはあったし、それを決めることはできなかった。

「やっていていい感触はあったけど、ゼロはゼロ。後悔することは何ひとつないけど、これが自分の実力で、今のみんなの実力。しっかり受け止めないといけない」

 淡々と噛み締めるように、そう振り返った。

 これまでU-20日本代表を率いてきた船越優蔵監督は、うっすら目に涙を溜めた状態で取材に応じた。

「やれることはすべてやったつもりですし、選手たちも準備してくれた。チームとしてはまったく悔いはない。ただ、最後は勝ちきれなかったし、勝たせてあげられなかった。

私の勝利への執念が足りなかった。

(「決定力不足?」という質問に対して)まあ、それも含めてサッカーかなと。フランスが我々を上回っていた。執着の次に足りなかったものは、運ですかね。選手たちにも話しましたけど、運も自分たちで引き寄せないといけない。『結局は運かよ』ってなるかもしれないけれど、できる準備は全部やったが結果は出なかった」

 つまり、人事を尽くして天命を待つ──状態だった。

 もちろん、そのプロセスを疑うつもりなど1ミリもない。だが、執着と運だけではない、次につながる材料を彼らは見つけたのだと信じたい。それこそが、オリンピックやA代表での活躍を誓う選手たちにとって、なによりも大切なもののはずだ。

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