『ハイキュー‼』×SVリーグ コラボ連載vol.2(2)

埼玉上尾メディックス 目黒安希 前編

(連載1:埼玉上尾メディックスの岩澤実育が語る「見えない目標」だった日本代表でのプレー>>)

【三姉妹で刺激し合いながら成長】

「お姉ちゃんの後を追いかけているなっていうのはありました。『ああなれたらいいな』って」

 目黒安希(27歳/埼玉上尾メディックス)は、少し照れたように言う。リーグで活躍する"目黒三姉妹"の次女で、長女の優佳(29歳/大阪マーヴェラス)、三女の愛梨(25歳/群馬グリーンウイングスからVリーグの信州ブリリアントアリーズに移籍)とともにバレーの道を歩んできた。

年齢も近い3人のバレー人生が重なり合わないはずはない。

【女子バレー】埼玉上尾・目黒安希が三姉妹で歩んだSVリーグへ...の画像はこちら >>

「お姉ちゃんがバレーでうまくいっていて。中学では全中(全国中学)に行って、高校も全国大会に行ったので、自分も学生時代はあまり考えず、『自然にそうなるのかな』って思ってました。レールが敷かれていたのかもしれません」

 姉妹の"バレー列車"だ。

 目黒は小学校2年でバレーを始めたが、最初は乗り気ではなかったという。放課後は友達と遊んでいるほうが楽しかった。しかし、3つ上の姉が所属していたバレー部の監督に「バボちゃんの長袖Tシャツをあげる」と言われて入団を決めた。

「みんなが着ていて、かわいかったので『私も欲しい』と。騙されました(笑)」

 目黒はそう言って明るく笑う。

「小学校の時、『バレーは楽しくないな』って思っていました。友達と遊べなくなったし、怒られてばっかりでやめたかった。でも、姉が学区外の中学でも続けて、自分もなんとなくそこに通ってバレーをすることにしました。

陸上やバスケとか、ほかもやったんですけど......バレーを続けたのは、"みんなで1点を取る"っていうのが、バレーならではで楽しいと思えるようになったからです」

 彼女は、姉の真面目さにいつも感心していたという。母が家のなかにひもを吊るし、「ジャンプの練習」と言うと跳び続け、反復横跳びもした。そんな一家で姉妹は育った。

「妹は2つ年下なので、中・高とも同じチームなんですがすごく厳しくしちゃって、かわいそうだったと反省しています。『喋りかけないで』『近くを歩かないで』とか言ったり、球出しでもわざと当てて......意地悪しかしてないです(笑)。

期待していたというか、『こうなってほしい』というイメージもあったんですけどね。今は『もうちょっと優しくてもよかったんじゃない』って言われます」

 妹であり、姉でもある目黒は言った。

【「身長が低い」からこそ身につけた武器】

 青山学院大学入学後は「周りと比べると身長が低い」と気づき、そこからはレシーブの練習を頑張った。高校までライト(オポジット)でプレーしていたが、レフト(アウトサイドヒッター)で出られるようにした。

「正直、私は周りの選手に比べて体格は恵まれていません。でも、『コツコツできるのは強みだな』って思うようになりました。できない課題に対して、何が足りていないのかを見つけるのも得意かもしれません」

 機敏な動きも武器に、攻守で活躍するサイドになった。

そこから、トップリーグ挑戦の扉を開いたのも姉だったという。

「大学では普通に就活をして『就職しよう』と思っていました。でも、コロナ禍でいろいろ考えちゃう時期で。試合もなくなって『これで終わるのか』と思っていたんですが、プロでやる自信もあまりなく......。その時、お姉ちゃんに『ここでやらないと後悔する。できなかったらやめる、という気持ちでやってみたら』と背中を押されました」

 目黒は選手として生き抜くため、レシーブ技術を高めた。昨シーズンのサーブレシーブ成功率は41.9%だ。

「チーム1の負けず嫌い」

 そう言われる気質が、自身も知らないうちに彼女を鍛えたのだろう。

「今年こそはメディックスで優勝したいです! 若い選手も多いなか、私は5年目になるので周りの選手を生かしていきたいですね」

 妹でも、姉でもある彼女のバレー人生の覚悟だ。

(後編:

【プロフィール】

目黒安希(めぐろ・あき)

所属:埼玉上尾メディックス

1998年5月25日生まれ、福島県出身。172cm・アウトサイドヒッター。姉の優佳、妹の愛梨もバレーボールの選手。

姉の影響で小学校2年でバレーを始め、郡山女子大学附属高校では春高バレーに出場。青山学院大学を経て、2021年に埼玉上尾メディックスに入団した。

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