来年もこのチームに残ることができるかどうか──。それがこのオースティン(第19戦アメリカGP)からの2週間で決まる。

 レッドブルは10月末までのレース内容と結果をもって、角田裕毅をレッドブルに残留させるのか、イザック・アジャを昇格させるのか、そしてレーシングブルズの2席に誰を座らせるのかを決めると公言している。

 角田にとってはこのオースティンとメキシコシティの2連戦で、どんな内容と結果を見せられるかが2026年を決定づける重要な局面になる。

【F1】角田裕毅にとって運命の2連戦 「予選一発の速さ」さえ...の画像はこちら >>
 レーシングブルズに降格となったとしても、すべてを失うわけではない。しかし、F1という世界の頂点を目指すなら、レッドブルに残らなければならない。

 目の前のマシンがどんなに扱いづらくても、レーシングブルズのほうが容易に結果につなげられるとしても、常に優勝や表彰台を争えるマシンとチームでないことは明らかだ。そこを目指すなら、レッドブルというトップチームでなければならない。

「ある程度の成長は見せてこられたと思いますけど、チームの判断基準はわかりませんし、それが十分かどうかも僕にはわかりません。でも、少なくとも成長はしていますし、特にロングランは(苦戦していた)状況を完全にひっくり返して、かなり改善できたと思います。そこはかなりポジティブな要素だと思います」

 第17戦アゼルバイジャンGPでマシンとドライビングの両面に手を入れ、それまでに苦しんでいた異常なタイヤの劣化とロングランペースの遅さは劇的に改善された。第18戦シンガポールGPではスタート直後に大きく順位を落としたため、その実力を発揮できた場面はほとんどなかったが、フリーエアではその改善が確かなものであったことが確認できた。

「アゼルバイジャンGPまでロングランはどうしようもない状態でしたし、おそらく全マシンのなかでも最悪のレベルだったと思います。でも、そこは状況を一転させることができましたし、マックス(・フェルスタッペン)とのマシンスペックの差を考えれば、十分に理に適ったペースで走ることができていると思います。

 シンガポールでは、ほぼずっとトラフィックのなかで走っていたので、実力どおりの走りができる場面は少なかった。だけど、フリーエアで走れている時には、ハードタイヤで誰よりも長いスティントを走っていたことを考えても、かなりコンペティティブな走りができていたと思います」

【いいアイデアが見えてきた】

 ロングランの問題から脱却できたからこそ、今度は予選一発の問題が浮き彫りになった。

 シンガポールでは予選Q2でタイヤのグリップを引き出せず15位に終わった。それは、やはりタイヤの熱入れに問題があったせいだと角田は見ている。

「あとはショートランがすべて、そこはタイヤのウォームアップに起因していると思います。シンガポールではショートランで苦戦しました。

 FP2の赤旗で邪魔をされてしまったせいで、本来ショートランに集中するFP3でロングランをやらなければならず、妥協を強いられたところもあった。そういう状況では、まだRB21に自信を持ちきれていないことが影響してしまうのかなと思います。

 レーシングブルズとはアプローチの仕方がまったく違うので、昇格直後からずっと少し苦戦しているところなんですけど、いくつかいいアイデアが見えてきています」

 決勝のスタート直後に大きく順位を落としたのも、位置取りの不運は大いにあったものの、走り始めのタイヤのグリップが不十分でブレーキングで自信を持って攻めていけなかったことも、少なからず影響していたとみられる。決勝直前の雨で路面が濡れていたこともあり、やはりタイヤのウォームアップはここでも課題になっていた。

「位置取りの運・不運だったり、ブレーキングにどれだけ自信を持って攻めていけるかは、タイヤのウォームアップとも絡み合った問題だと思います。特にダンプコンディション(湿った路面)だったので、タイヤのウォームアップに関してはもう少し改善できたところはあったと思いますし、次に同じような状況があればもっとうまくやれると思います」

 フェルスタッペンに逆転ドライバーズタイトル獲得の可能性があるため、チームとしてはエース優先の姿勢を採らざるを得ず、依然としてマシンパッケージには差がある。シンガポールではそれがタイヤをうまく使いきれず、アンダーステア傾向になった一因でもあった。

【チームを責める前にやれること】

 しかし、旧型フロアを使っていた頃に比べれば理論上の差は小さく、それよりもドライビングでマシンの性能をフルに引き出すことに集中すべきだと角田は言う。確かにマシンの差はあるが、ドライビングにも差があるからには、スペック差とチームを責める前に自分にやれることをすべてやりきるべきだからだ。

「マックスと少し差があるのは確かですけど、チームは僕のマシンにも新型を投入しようと全力を尽くしてくれています。コストキャップ(や2026年型開発にリソースを割かなければならないこと)などいろんな事情を考えれば、そこは十分に理解できることです。

 2台のスペック差はベルギーGP以前ほど大きくないですし、パッケージの違いよりも自分自身の改善に集中できる状況には、とても満足しています。僕としては手持ちのパッケージで全力を引き出すしかないですし、マシンに対する自信という点で自分自身にもまだまだ改善できる部分があるので、今はそこが最優先です」

 予選さえ改善できれば、あとは上位で戦える。レースペースの改善が果たせたからこそ、予選一発という課題に専念すればいい。

 シンガポールで見えた光明と課題を背に、相性のいいサーキット・オブ・ジ・アメリカズで、角田の目はポジティブに未来を見据えている。

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