『ハイキュー‼』×SVリーグ コラボ連載vol.2(4)

群馬グリーンウイングス 中野康羽 前編

(連載3:群馬グリーンウイングス塩崎葵葉が振り返る、荒木絵里香との出会い 「将来有望!」のかけ声に導かれてSVリーガーに>>)

【ビーチでも全国2位に】

「レシーブは武器というか......自分が『好き』って言っているだけですが、相手が渾身の一撃で打ったところをしっかり拾った時は『ドンマイ』じゃないですけど......ふふ......レシーブで魅せたいです」

 アウトサイドヒッター、中野康羽(23歳/群馬グリーンウイングス)は小声で言う。ソファに座ったまま、体を小さく縮め、視線の先は膝のあたり。いかにも自信がなさそうな声色だが、言葉は不敵で、小さく笑い、どこか人を食ったところがある。

【女子バレー】群馬グリーンウイングス中野康羽は、京都橘時代に...の画像はこちら >>

「代表は、ユニバーシアードにも選ばれていないから遠い存在で......そうは思っているんですけど、バレー界にしっかり名を轟かせるように......『代表には選ばれないけど、あいつはすごい』みたいな」

 やはり声のトーンと話す様子は控え目だが、言葉は野心的で、挑戦的である。どちらが彼女の正体か。相反する感情のせめぎ合いは、彼女のバレー人生のなかにもあった。

 三重県のいなべ市に生まれた中野がバレーに出会ったのは、小学校1年生の終わり、小学2年生になる頃だった。

「家ではそわそわして暴れ回って、落ち着きがない子だったので『どこかスポーツクラブに入れてしまえ』ってなったらしいです。運動していたほうがマシだって」

 彼女はバスケットと悩み、バレーを選択した。最初は何もできなかったが、その分、上達の幅も大きかった。

「6年生のお姉さんがスパイクを打っているのを見て、『私も打てるようになってみたい』となりました。ボールがネットを越えた、助走がちゃんと踏み込めた......そのたびに、先生も『ナイス』って言ってくれて、私も『イエーイ』って(笑)。レシーブも好きで、とにかく、できることが増えていくのが楽しかったです」

 中学は部活だけじゃなく、クラブチームでもプレーした。単純にうまくなりたかった。JOC(将来のオリンピック選手を発掘・育成する目的で、各都道府県で中学生を選抜)に選ばれ、練習会場だった京都橘への進学を決めた。

強豪校で1年生から春高バレーを経験し、2年生の時にはベスト8まで勝ち進んだ。

「ひとつ上に(日本代表の)和田(由紀子/NECレッドロケッツ川崎)さんがいて。『最後は絶対に和田さん』って感じで、『みんなから頼られているエースってカッコいい』って尊敬していました。和田さんも高2ではライトをやって、最後はレフトになったので、自分もそういう感じで追いかけて目標にしていたし、今もしています」

 高2の時には国体のビーチバレーでも、京都代表として準優勝に輝いた。

「その年に、国体の少年・少女の部でビーチバレーが正式に初めて種目になったんです。それでビーチバレー専門の選手と、京都の高校のインドア選手を組ませたら面白いんじゃないか、となって。

 ペアを組んだ子が通う高校は山の中にあるんですが、敷地内に特設コートがあって。その子もうまくて、京都予選を勝ち抜いて、全国で準優勝しました。ビーチはオープンで陽気な人が多くて、気持ちが開放される感じがありましたね。駆け引きが面白いんですよ」

【一度はバレーを諦めかけた】

 京都では寮生活で、ほとんど毎日が練習だった。月に1日のオフは、先輩や同期と京都駅まで食事に出かけた。食事制限があってスイーツは食べられなかったが、ビュッフェでたらふく食べたという。

「朝錬、午後錬があって、女子高校生らしいことはしていなかったです」

 中野はそう振り返る。バレーに夢中だった。青春の日々だ。

 しかし、心が折れかけた時もあったという。京都橘は21年連続で春高に出場していたが、中野が高校3年時に予選の決勝で敗れたのだ。

「絶望っていうのか......続いていた伝統を自分たちの手で終わらせてしまった、という申し訳なさですね。3年生がふたりしかいなくて、下級生が多くて緊張していたし、『もっとできたことあったんじゃないか』って悔しくて。

 しばらくは負の感情が消えなくて、その時は『バレー、もういいかな』『こんなんで大学行けないよ。どうしよう』となっちゃって。でも、母が『ここで終わりじゃない。人生長いから、大丈夫だよ』と言ってくれたんです」

 中野は日本体育大学に進んで結果を残し、SVリーグでプレーする道を切り開いた。在学中に、内定選手としてデビューを飾っている。

敗北を糧にしたのだ。

「バレー界に名を轟かせる」

 その意気やよし。いつか、ビーチバレーとの"二刀流"だってあるかもしれない。

(後編:中野康羽が選ぶ『ハイキュー‼』ベストメンバーとは? 一番好きなシーンは、成長した日向翔陽のディグ>>)

【プロフィール】

中野康羽(なかの・やすは)

所属:群馬グリーンウイングス

2002年7月30日生まれ、三重県出身。171cm・アウトサイドヒッター。小学校1年でバレーを始める。京都橘高では1年時から春高バレーに出場し、2年時にはベスト8に進出。国体のビーチバレーボール競技にも京都代表として出場し準優勝した。日本体育大学では4年時に主将を務めた。卒業した今年、群馬グリーンウイングスに入団した。

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