福田正博 フットボール原論

■J1は残り4試合で、首位の鹿島アントラーズと2位柏レイソルの勝点は3差。福田正博氏が双方の優勝のための勝敗や勝点獲得の条件を計算した。

【状況は鹿島が相当優位】

 J1は首位と2位との勝点3差で残り4試合。いよいよ次節が天下分け目の戦いになりそうだ。

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 日本代表戦の中断から2週間ぶりに開催された10月17日~19日のJ1第34節は、首位の鹿島アントラーズがヴィッセル神戸と0-0の引き分け。鹿島を追う柏レイソルは、アウェーでガンバ大阪を5-0で粉砕。残留争いをしている19位湘南ベルマーレとの試合に臨んだ京都サンガF.C.は、優勝を狙ううえでは痛恨の1-1の引き分けとなった。

 この結果、首位は勝点66の鹿島、2位は柏で勝点63。柏は5得点の大勝で得失点差でも鹿島の+24に迫る+20とした。3位、4位はともに勝点61で京都と神戸。

 J1は残り4試合。普通にいけば優勝は鹿島だろう。勝点3差という数字だけ見れば、優勝の行方は混沌としているように映るが、これはトリックで、実際は鹿島が相当優位なのは間違いない。

 過去を振り返ると、J1優勝の勝点の目安はシーズン全勝した場合に得られる勝点の3分の2ポイント。今季であれば全38試合終了時点で勝点76前後に到達していれば優勝に届く計算になる。

もちろん混戦になれば優勝ラインは下がるし、独走になれば優勝ラインは上がる。

 あくまで目安に過ぎないが、今季の鹿島は34試合終了の現段階で勝点は66。残り試合を全勝すれば勝点78だが、混戦の今季はそこに達しなくても勝点74くらいまで伸ばせば、優勝できるのではないか。

 鹿島は2勝2分けで勝点74に届くのに対し、2位の柏は勝点74に到達するには残り4試合を全勝しなければならない。3位の京都、4位の神戸は残り4試合に全勝しても勝点73と鹿島には届かないのだ。優勝争いの趨勢は、だいぶ鹿島に傾いているのだ。残り4試合を2勝2分けが容易かどうかはチーム状態によるが、いまの鹿島ならクリアできると見ている。

【鹿島vs京都は最注目カード】

 鹿島は今季、4月と6月に3連敗を食らった。普通なら3連敗を喫すればズルズルと順位を後退させるものだが、鹿島は2度の3連敗を乗り越えてきた。際立った強さがあるわけではないが、チームが苦しい時に粘り強く愚直に戦い、軌道修正して優勝戦線に戻ってきた。その経験がここから優勝へのプレッシャーが増大する最終局面で生きてくるはずだ。

 重要なのは次節の京都戦だ。この試合に勝てば優勝にぐっと近づくだろう。

ただ、3位の京都もすんなりと引き下がるわけではない。鹿島は京都に敗れると、勝点74に到達するにはラスト3試合で3連勝でのフィニッシュが必要になり、2勝1分けなら勝点73、1勝2分けなら勝点71となる。京都にとっては直接対決での結果次第では、優勝への可能性が再び見えてくるだけに、なんとしても勝点3を奪いにいくはずだ。

 京都戦に負けた場合、鹿島の選手たちやサポーターを覆う空気は重いものになるかもしれない。優勝への重圧というのは、不安が大きくなっていくものだからだ。京都戦の次の3試合は、横浜FC(現18位)、東京ヴェルディ(現12位)、横浜F・マリノス(現17位)との戦い。順位を見れば力の差があるが、残留争い渦中の横浜の2チームとの対戦がある。慎重になりすぎると苦しむ展開もありえるだろう。

 ただ、こうした想定は、鹿島にとっては杞憂かもしれない。なぜならJ1優勝を誰よりも経験している監督がいるアドバンテージがあるからだ。今季からチームを率いる鬼木達監督は、川崎フロンターレを率いた2017年から2024年までにJ1優勝4回。リーグ戦終盤の優勝争いの戦い方を熟知する監督の経験が、選手のみならず8シーズンも優勝から離れていたクラブスタッフやサポーターたちにとって、心強いものになるはずだ。

【引き分けの多い柏は4連勝できるか】

 一方、柏にとっての残り4試合は、自分たちが勝利を積み上げながら、鹿島が2勝2分けのラインから足を踏み外す展開を待つことになる。そのためには次節の横浜FC戦を、前節のG大阪戦と同じように複数ゴールで勝点3を奪って、鹿島にプレッシャーをかけるのが必須だ。仮に鹿島が敗れれば、勝点で横に並ぶ。

 それにしても昨季17位でかろうじてJ1残留となった柏が、今季は優勝争いをしているのは、見事というしかない。「たら・れば」を言えば、自陣でのパスミスを奪われて失点し、勝点を取りこぼした川崎戦(第32節)のような戦いがなければ、もっと勝点を伸ばせていただろう。ただ、そうした試合がありながらも、今季から率いるリカルド・ロドリゲス監督のもとでGKからボールをつなぐサッカーに徹したからこそ、勝点を積み上げてこれたとも言える。

 いずれにしろ柏にとって必要なのは、次の横浜FC戦で勝利すること。11月1日に控えるJリーグYBCルヴァンカップ決勝でサンフレッチェ広島に勝利して王者につくことだろう。そこで勢いづけば、その先に控えるリーグの最終3試合(名古屋グランパス戦、アルビレックス新潟戦、FC町田ゼルビア戦)に連勝して逆転優勝への道が切り開かれる可能性はある。

 今季のJ1で最多の引き分け数の柏にとって、ここからの連戦連勝はかなり難しいかもしれない。ただ、故障者が戦線復帰し4連勝をマークした4月頃の勢いはある。柏には最後の最後までJ1を盛り上げてくれることを期待している。

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