F1第19戦アメリカGPレビュー(前編)

 会心の一撃とは、まさにこういうことだ。

 まさかの時間切れでSQ1敗退に終わった18番グリッドから、角田裕毅(レッドブル)はアメリカGPスプリントレースのスタートで、一気に6位までポジションアップを果たした。

「前で何台もクラッシュしていたので6位か7位までポジションアップしましたけど、そもそもターン1手前のレイトブレーキングで3~4台は抜いていました。それができていたからこそのポジションアップだったと思います。もちろんリスクは伴いましたけど、今回はブレーキングで攻めていくことができたのがよかったです」

【F1】角田裕毅がスタートで一気にポジションアップ レッドブ...の画像はこちら >>
 オスカー・ピアストリ(マクラーレン)に端を発した多重事故をすり抜けられたのは幸運だった。しかしそれと同時に、シンガポールではできなかったスタート直後から限界ギリギリのブレーキングで攻めていくことができた。走り始めのタイヤに自信を持てるようになり、角田本来のアグレッシブなドライビングができるようになったのが大きかった。

 ニコ・ヒュルケンベルグ(ステーク)が落としたフロントウイングが引っかかり、その間にアレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)に先行を許しはしたが、好ペースを維持して7位でフィニッシュ。しっかりと入賞を果たした。

「シンガポールはひどかったので、そこから学んで改善できたのはよかったと思います。もちろんスプリントのあとには予選が控えているので、大きなダメージを負うようなことはできませんけど、普通のレースに比べれば失うものがない状況ではあったので、リスクを負って攻めていく価値はありましたし、それがうまくいったことには満足しています」

 その自信と攻めの姿勢は、決勝のスタートにも存分に生かされた。

 予選で13位に沈んだものの、好発進でリアム・ローソン(レーシングブルズ)を抜いて12位に上がり、ターン1でフェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)を抜いて11位へ、ターン11のブレーキングでヒュルケンベルグを抜いて10位へ、そして2周目のターン1ではカルロス・サインツ(ウイリアムズ)のインをうかがい、3周目のターン1ではサインツに抜かれた直後のオリバー・ベアマン(ハース)のインに飛び込んで9位を奪い取った。

【1ストップ作戦で7位をキープ】

「今日もすばらしいオープニングラップだったよ」

 レースエンジニアのリチャード・ウッドが褒め称えると、チーム代表のローラン・メキースも「1周目が裕毅の得意技になるね」と声を揃えた。

 さらにサインツがアンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデスAMG)に接触して脱落し、角田は7位に上がって上位でレースを進めていくことになった。

 序盤にプッシュした代償として、前のジョージ・ラッセル(メルセデスAMG)についていくことは難しかったものの、だからこそ無理をせずタイヤマネージメントに徹し、1ストップ作戦で走りきることを最優先事項に据えた。

 29周目には早々にピットインした実質2位のシャルル・ルクレール(フェラーリ)を抑え、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)をアシストしてからピットイン。そのバトルでタイムロスを喫しかねない展開だったが、角田はロスを最小限に抑え、後方のベアマンに抜かれることなくポジションを守った。

◆つづく>>

編集部おすすめ