前編>>>新天地を求めた日本代表セッター、大宅真樹と永露元稀がそれぞれの意気込みを語る

後編:SVリーグ2年目、新天地でスタートを切る注目選手たち

 2シーズン目を迎えるSVリーグでは、プロ化への流れのなか、選手の移籍が活発になっている。日本代表の司令塔、関田誠大がジェイテクトSTINGS愛知からサントリーサンバーズ大阪へ移り、同じく日本代表のリベロ、小川智大もSTINGS愛知からサントリーに移籍するなど、スター選手の動向が開幕前から話題をさらっている。

 そんななか、今年度、日本代表候補のひとりとしてバレーボールネーションズリーグに出場した村山豪も、移籍を決断したプレーヤーだ。STINGS愛知から東京グレートベアーズへと活躍の場を移した。

【SVリーグ開幕】"変人速攻"を身上とする村山豪は東京GBへ...の画像はこちら >>

 村山は語る。

「バレーボール選手としても、ひとりの人間としても、成長できると思い、グレートベアーズへの移籍を決めました」

 身長は192㎝とミドルブロッカーとしては決して高いほうではないが、男子選手では珍しいワンレッグのスパイクや、東京GBのチームメイトの深津旭弘が「『ハイキュー!!』の〝変人速攻〟のようなスピード」と評した超高速クイックが魅力。出身地である東京でのホームゲームを、今から楽しみにしている。

「STINGS(愛知)の一員としてグレートベアーズと対戦していた頃から、どうしてこんなにグレベアの選手はプレーの幅が広いんだろうと不思議に思っていました。実際、STINGSのチームメートとも話していたくらいです。移籍して、実際に練習に参加してみて『こういう練習をしているから、引き出しがたくさんあるんだ!』と納得しました」

 カスパー・ヴオリネン監督からは入団時に、「Open communication(意見交換すること)」、「Open Mind(心を開いて他を受け入れること)」、「Compete(競争すること)」という3つの約束を提案された。

「同時にサーブのバリエーションを増やしてほしいと言われたのですが、それこそが意見交換につながっているのかなと、僕は受け止めています。自分の速い攻撃に合わせるセッターの方は大変だと思うのですが、コンビに関しては合流してからずっと練習していて、プレシーズンマッチで戦ってみて、だいぶ完成していると感じました。開幕までにもっと詰めていければいいなと考えています」

 東京GBには新外国籍選手のヤン・コザメルニクや大竹壱青、伊藤吏玖といったミドルブロッカーが在籍しているが、オポジットのバルトシュ・クレクのコンディションに不安が残るため、大竹をそこで起用する布陣も考えられる。村山が新チームに一日も早くフィットすることを、ファンも望んでいるに違いない。

【44歳のレジェンド、松本慶彦は故郷で現役生活の晩年を】

 最後に紹介するのは今年44歳となったバレーボール界のレジェンド、松本慶彦だ。17シーズン在籍した日本製鉄堺ブレイザーズから、VC長野トライデンツへ移籍した。

 長野県生まれで、岡谷市にある岡谷工高出身。移籍の理由について、松本は「現役生活の終盤は、地元のチームに貢献したかったから」と明かす。

 VC長野は2018-19シーズンから当時のDIVISION1(V1リーグ)に昇格したが、2023-24シーズンまでの6シーズン、10チーム中、9位が2回、10位が4回と低迷。SVリーグとなった昨シーズンも10チーム中9位と、不振が続いている。苦しむ若いチームを引き上げるため、ベテランの力が必要だと、首脳陣は考えたのだろう。

 松本は話す。

「(自分の次に)選手で一番年上なのが27歳の藤原(奨太)選手で、監督やコーチ陣のほうが年齢が近いんです(苦笑)。まずは選手たちに『近寄りがたい』と思われないように、自分のほうから話しやすい雰囲気を作っていきたいですね」

 奇しくも、10月25日に予定されている開幕戦の相手は古巣の日鉄堺BZだ。

「もともといたチームとの対戦なので、『手の内が全部わかっているだろう』と思われるかもしれませんが、どのチームも今シーズンからだいぶ選手の顔ぶれが変わっています。外国人選手の力も含めて、試合が始まってみないとわからない。その意味では古巣との対戦も、長野のファンの方に楽しんでいただけると思っています」

【「選手個人が強いチームとの違いを肌で感じて、プラスアルファを習得しなければ」】

 とはいうものの日鉄堺BZのミドルブロッカー、竹元裕太郎、蔡沛彰、渡邉晃瑠らは、コーチ兼任として松本が指導した選手たちである。

「VC長野の選手たちとは、まだ年間を通じて一緒にプレーしていない。そう考えるとブレイザーズの選手たちのほうが、特徴などはよくわかっていると思います。しっかり対策を立てて、(ブロックで)抑えられればいいですね」

 そしてVC長野についてはこう分析した。

「昨シーズン、対戦相手として見ていた限りですが、上位と惜しい試合をしても、最後に勝ちきれないことが多かったように思います。この相手にはこのプレーが通用するけれども、このプレーは通用しないなど、まずは選手個人が強いチームとの違いを肌で感じて、プラスアルファで何を習得しなければいけないのか。それらを感じることが大事だと考えています。
 
 さらに上の順位を目指すためには、もうひと工夫が必要とも思っていますので、自分がその辺りを実践していければいいなと。昨シーズン、VC長野はこれまでで(トップリーグ参加後)最多の10勝を挙げています。今シーズンはもちろん、それを超えるのが目標です」

 精神的支柱としても期待されている松本の加入で、VC長野はどう変わるのか。その戦いぶりに期待したい。

編集部おすすめ