韓国人Jリーガーインタビュー
キム・テヒョン(鹿島アントラーズ) 後編
鹿島アントラーズのDFキム・テヒョンにインタビュー。2022年の来日以降、ベガルタ仙台、サガン鳥栖でプレーし、今年鹿島にステップアップ。
>>前編「韓国の"部活育ち"キム・テヒョンが日本に来て衝撃を受けたこと」
【ホームの雰囲気がとんでもなかった】
10月5日、2025年のJ1リーグ終盤戦を戦う鹿島アントラーズのホームゲームを取材で訪れた。
この際の雰囲気は、番記者ではなく、筆者のように時折スタジアムを訪れる存在を驚かせるものだった。
0-0で迎えた後半、ホームチームのゴールを期待する雰囲気が一気に盛り上がった。
Jリーグ30年間の積み重ねなのだろう。サッカーファンなら「昔から聞き覚えのある鹿島のチャント」に合わせて、メインスタンド、バックスタンドからも大きな拍手が巻き起こる。
ホームチームに対する声援が本当にスタジアムに鳴り響くのだ。
この日、鹿島のセンターバックとしてフル出場を果たしたキム・テヒョンは、前年の2024年にサガン鳥栖のプレーヤーとしてこの雰囲気を初体験した。
「実は去年、鳥栖で対戦した際には鹿島に勝っているんです。『強いチームに勝てるのなら、自分もここでやれるのでは?』とも思ったのですが、アウェーの選手として鹿島に来たら違いました。ホームのファンがとんでもなかったんです。0-3の完敗でした。この雰囲気のなかでやれれば自分も成長できるだろうな、と感じたものです」
2022年にJ2ベガルタ仙台でJリーグデビューを果たしたキム・テヒョンは、同クラブで2年のプレーを経て2024年に鳥栖でJ1を経験した。
【鹿島の強さの秘訣を痛感する日々】
チームには植田直通、関川郁万という盤石のセンターバックコンビがいる。鬼木達監督が「まだまだ若いので、これから」(10月5日のガンバ大阪戦後)と評価したとおり、キム・テヒョンはふたりのバックアップという位置づけだった。確かに関川が負傷する5月上旬までは、カップ戦が主戦場となっていた。
「鹿島に来て、競争が必要な状況でした。以前とは違い、『まずいい準備をしよう』と考えられるようになりました。僕自身の過去の失敗から得た経験もありますが、クラブの伝統がそう思わせてくれた面もあります。『ここで試合に出続けられれば、選手としての価値がまた変わる』と思える環境なのです」
内側からあらためて見る、鹿島の強さの秘訣を痛感する日々だ。
「今季序盤、ベンチにいた時からいい意味でのプレッシャーがすごかったんです。サポーターの雰囲気がやっぱりとてもすごい。タイトルを目指さなければならず、毎年のようにそれを続けていかないといけない。
トレーニングでも「伝統」の力をひしひしと感じ取っている。
「もちろんどの日本のチームでもトレーニング中から激しく、強くぶつかってやるんですが、鹿島の場合は『試合のような雰囲気』がありますね。本当にミスをしちゃいけない、そういう雰囲気もあります。選手同士も仲間であることには違いない。でも喧嘩してでも意見を疎通し合っています。それほどまでに練習からやっているから、強い気持ちで試合に臨めるんです」
【7月に韓国代表デビュー】
本人の願いどおり、今年の7月に「選手としての価値」が変わった。7月と9月、キム・テヒョンに韓国A代表からの招集がかかったのだ。7月に母国で行なわれたE-1サッカー選手権では、残念ながら日本戦での出場機会は得られなかったものの、7月11日の香港戦に出場しA代表デビュー。その際に、「Jリーグで成長できた部分」を聞いてみたが、やはり今回のインタビューと同じ話をしていた。
「本当にJリーグはすごいリーグだと思います。僕はプロ選手ですが、サッカーの基本的な、精密な部分を教わったと思っています。
とはいえ、鹿島の鬼木達監督は「まだまだ」と見ている面もある。G大阪戦後、キム・テヒョンに対する評価を聞くとこんな返事が返ってきた。
「試合を重ねるごとに、自信も芽生えて攻撃のところも徐々によくなってきていると思います。守備の面ではまだまだアラート(集中力を失わないこと)が必要ではありますけど、経験を積むことで自信が今の形になっているのかなと。スピードもありますし。本当にアラートの部分がより出てくると、もっともっとセンターバックとして怖い存在になれると思います。まだまだ若いので、これからかなという風に思っています」
韓国で「部活」出身ながらも年代別代表に呼ばれ続けるほどの「超天然素材」は、22歳でJリーグの精密な個人戦術に触れ、目覚めた。鳥栖での苦境を経て、今、鹿島の伝統に心を震わせながら成長する日々を送っている。
本人は言うのだ。
「22歳、ベガルタで個人戦術を知り衝撃を受けた時に『なんで今まで知らなかったのか』と悔やんだものです。日本の選手はもっと若い年齢から知っているはずですから」
いやいや、どうだろう。
「年代別代表が嫌だった」
「高校まではセンターバックからドリブルして突破していた」
「Kリーグ時代、プロに入って初めてのサブの経験に戸惑った」
こういったエピソードは「枠にはまらず育った」と言える話ではないか。それが今、日本の地で"細かいこと"を学んでいるのだ。
先に枠を教えるのがいいのか、後づけも有効なのか。
Jリーグにとっても、キム・テヒョンは"興味深い成長曲線"を示しうる存在ではないか。
本人は来年の北中米ワールドカップ出場、そして未来の欧州進出も目標にしているのだという。
(おわり)
キム・テヒョン
金太鉉/2000年9月17日生まれ。韓国・ 京畿道金浦市出身。レフティのセンターバック。2019年にKリーグ1部の蔚山現代(現蔚山HD)に入団。7月から2部の大田ハナシチズン、翌2020年は同じく2部のソウルイーランドFCに期限付き移籍。2021年は蔚山現代に戻り、2022年にベガルタ仙台へ期限付き移籍し2シーズンプレー。2024年にサガン鳥栖に完全移籍。

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