連載 水沼貴史×平畠啓史『水平感覚』

 国内外のサッカー中継の解説者として活躍する水沼貴史さんと、日本屈指のサッカーマニアで知られる平畠啓史さんが、サッカー界のホットな話題をしゃべり倒す連載。今回はJ1優勝を争っている柏レイソルで躍動する注目選手、小泉佳穂について語った。

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【左右両利きのすごさ】

平畠 サッカー選手ってもちろんプロスポーツ選手ですから、肉体的威圧感がある方っていらっしゃるじゃないですか。体もでかくて、ムキムキで、オラー!みたいな。でも小泉選手って真逆というか。

水沼 確かに。

平畠 だから、僕は「アスリート」というよりも「フットボーラー」だと思ってるんです。最高のフットボーラーで、見ていて楽しいですね。

水沼 サッカーもうまい。技術も高い。頭もいいと思います。

平畠 ポジショニングもいいじゃないですか。あと両足であれだけ器用に......。

水沼 彼は両利きですからね。多分、僕が初めて認めた両利きかな。

「あ、すごい!」って思いました。

平畠 右も蹴れる。左も蹴れる。だけじゃなくて、全部できますよね。左足でコントロールもできる。ドリブルもできる。右と同じように扱えるところがすごいですね。

水沼 体の向きとか関係なくて、どっちでもできるんですよ。右側を向いたら右で止める。左側を向いたら左で止める。状況に応じて臨機応変に変えられるから、たぶんプレーの選択肢がいっぱいになるんだろうなと。それで、近くや遠く、逆サイドまで、相手も見れているから、まあ、うまいですよね。

平畠 右利きの選手って、ドリブルの時、右足で運ぼうとするのが普通じゃないですか。でも、そういう時も左足が必要なら普通に左足で運びますよね。あの感覚がちょっとわからないんですよね。

水沼 たぶん右利きなんですよ。本当はね。それで「右は放っておいてもうまくなる」と。でも「左は放っておいたらたぶんうまくならないから、相当練習した」みたいなことを彼は言っていたんです。

 頭がいい選手でいろんなところが見えているから、「あそこに出したい!」と思った時に左が蹴れなかったら出せないとか考えたんだと思う。そうした判断とかが彼のプレーの広がりにつながっているのかな。

 右利きで左で蹴れなかったらなんとかボールを右側に持ってきてパスを出す場合もあるけど、「今だ!」っていう時に左側にボールがあったら、そのタイミングを逃すわけじゃないですか。そこをスムーズに出せるから、判断と技術がリンクしている感じがします。

【レイソルでいちばん能力を表現】

平畠 第34節のガンバ大阪戦でのゴールもすごかったけど、いいスルーパスも出している。姿勢がよくないですか? なんか肩に力が入っていないんですよ。

ずっと自然体ですよね。

水沼 柏レイソルに来てからが、いちばん彼の能力が表現されていると思うんです。浦和レッズの時もよく見ていたけど、僕のなかでは彼はかわいそうに映った。

 例えば、ビルドアップで後ろの選手がパスを出したいんだけど、出すところがない。そういう時、彼は責任感があるから自分が受けようとしてどんどん下りてくるんですよ。でも、彼の周りが動いていないから、それは相手に狙われやすいんですね。それで相手にカットされるシーンを僕は何回も見ていて、犠牲になっているなと思ったんです。

 それがレイソルだと、自分が動くことによって味方も動くようになっている。自分ひとりじゃなくて、周りが相当連動しているというのを感じながらプレーできていると思います。だから周りの選手を見ながら使っている感じがすごいですよ。それで自分も最終的に生きるところに行けると。

平畠 あとですね。

走行距離もJ1の上位(第35節終了時点で4位)ですごいんですよ。走っている姿を見ていると、なんかひょうひょうとしているじゃないですか。でも、ちゃんとこれだけ走っているのはすばらしいなと。

水沼 相手ボールを刈るタイプじゃなくて、それだけ動けているのはすごいですね。

【話も魅力あり】

平畠 お話ししていても、自分の考え、意見をちゃんと言える人ですね。場に流されて「こんなん言っとけばいいでしょう」みたいなことではない。「自分はこう思ってます」「こう考えてます」「それはわからないです」とか。はっきり言える人。

水沼 まあ、この終盤にきて「優勝できるチャンスがある」とか、ルヴァンカップの準決勝2戦目で大逆転したところとかでも、すごい発言してますよね。「死ぬ気で戦ってるのかどうか」とか。

平畠 ちゃんと言いますもんね。見た目はどちらかというと可愛らしい感じなのに、中で一本筋が通ってるというか。

 あとはですね。レイソルのサッカーで「いや、守備も楽しいですよ」って言っていたんです。なんで楽しいかと言ったら「後ろ向きじゃないからです」って。「前向きに走って守備にいけてるので、守備もすごく楽しいです」と。

 やっぱりこの人はうまいだけじゃなくて、サッカーを楽しむことも知っている人だなと伝わってきますね。しゃべっているとなんか吸い込まれるっていうか、ずっとこの人としゃべっていたいなって思うんです。 

水沼 サッカーのことを深く話したいなあ、みたいなね。

平畠 見ていて本当に楽しい選手。これからも要注目ですね。

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