F1第20戦メキシコシティGPレビュー(後編)

◆レビュー前編>>

 いつも不運が降りかかる角田裕毅(レッドブル)のメキシコシティGPだが、今年もピットストップのミスとチームプレーがなければ入賞ができていたはずだ。

「特に第1スティントは、マックス(・フェルスタッペン/レッドブル)から大きく離されてはいませんでした。

ほぼ同じペースで周回を重ねることができていたので、最終的に3位でフィニッシュした彼と第1スティントの時点でそれほど大きく離れていなかったのはよかったと思います。

 僕自身も厳しい状況のなかで、安定してマシンの性能を最大限に引き出すことはできた。それでも難しいところはあったので、これからしっかりと分析していく必要があると思います」(角田)

【F1】角田裕毅に求められるのは、フェルスタッペンのような「...の画像はこちら >>
 レース序盤はフェルスタッペンのタイトル争いの相手であるオスカー・ピアストリ(マクラーレン)を抑え、チームに貢献した。

 集団のなかでの走行でパワーユニットの温度が上がり、冷却するためのリフト&コースト(ストレートエンドでスロットルを戻しエンジン負荷を下げること)や、低速コーナーでひとつ上のギアを使って回転数を下げるなど、地道な作業が要求されていたことも確かだ。

 冷却効率を向上させる改良型フロアが、フェルスタッペン車のみに投入されていた差もあったのかもしれない。

 そんななかでも角田は好走を見せた──レッドブルのローラン・メキース代表は評価する。

「裕毅はかなり以前まで振り返ってみても、ベストな週末だったと思う。最初のスティントはマックスと同様に長く引っ張ったが、とても力強く、マックスとのペース差は0.2~0.3秒程度だった。しかし、ピットストップで少し時間がかかってしまい、結果的に彼が本来獲れたはずのポイントを失ってしまった」

 2台ともにトラフィックのない状態で走った25~31周目のペースを比べると、その差の平均値は0.217秒。そして予選Q2でもフェルスタッペンとの差は0.211秒差であり、新型フロントウイングが角田車にも投入されたこの週末は、着実にギャップを縮めていた。

【まだまだやれることはある】

 もちろん、改善すべき課題もある。

 Q2の最後のアタックでセクター1を詰めきれておらず、自己ベストセクターが揃えられていればフェルスタッペンとの差はさらに0.123秒まで縮まってQ3進出も容易に果せていたし、決勝でももう少し序盤のペースがあれば、上位集団のなかでレースを展開できていた。

 レッドブルとしてもチーム全体が本来のパフォーマンスを引き出しきれない週末となり、フェルスタッペンも予選5位に沈んだ。ただそれでも、決勝でフェルスタッペンは3位まで挽回する力強い走りを見せた。

「今週の我々はセットアップを正しく仕上げることができなかった。予選では車高が低すぎたんだ。しかし決勝では燃料がフルタンクで、コーナーをそこまで攻めるわけではないし、ダウンフォースもそこまで多く発生するわけでもない。だから予選のようなボトミングはしないんだ。

 そしてマックスも信じられないほど限界までタイヤを保たせて、第1スティントを伸ばしてくれた。ソフトタイヤの第2スティントもラップタイムが低下するかと懸念していたが、マックスは1分21秒2前後のラップを刻み続けた。

 まさに、あれこそがマックス・フェルスタッペンだ。マックスはレースになれば、すべてを忘れてとにかくプッシュする。レースはまったく別なんだ」

 ヘルムート・マルコ(レッドブル・モータースポーツアドバイザー)はフェルスタッペンの力強いレースを絶賛した。

 チームが角田に求めているのは、そういう力強いレースだ。

どんな苦境にあっても、最大限のパフォーマンスを発揮し、結果につなげられる強さと安定感だ。

 もちろん角田自身も、そのことはよくわかっている。

「僕は自分のやれることに集中してプッシュし続けるだけです。モチベーションはありますし、シーズン後半戦はずっとそうです。学び続け、改善し続けるだけです」

 フラストレーションではなく、モチベーションへ。ネガティブなエネルギーはポジティブなエネルギーへ。

 まだまだやれることはある。

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