SVリーグ開幕戦で注目を集めた選手たち(前編)
SVリーグの2年目のシーズンが始まり、女子に続いて10月24日には男子大会が開幕した。
新シーズンのオープニングマッチとなったのは、昨年と同様に大阪ブルテオン対サントリーサンバーズ大阪の一戦だ。
昨季のレギュラーラウンドで首位を争った両チーム。初代王者となったのはサントリー大阪だが、どちらも日本代表で活躍する選手が多く、今季から新主将に就任した西田有志(大阪B)と髙橋藍(サントリー)の対決も注目を集めた。ミドルブロッカーに目を向ければ、パリ五輪で活躍した山内晶大(大阪B)と小野寺太志(サントリー)のマッチアップだけでなく、今年9月の世界選手権で存在感を示したエバデダン ラリー(大阪B)、アウトサイドヒッターには現役大学生でありながら大阪ブルテオンと契約し、開幕戦のスターティングメンバーとしてコートに立つ甲斐優斗もいる。
互いにリーグ随一の選手層の厚さを誇るなか、サントリーには今季からセッターの関田誠大とリベロの小川智大も加わり、人気、実力ともに注目度は抜群。対する大阪ブルテオンの守護神には東京、パリと2度の五輪に出場した山本智大がいて、セッターには同じ東京、パリ五輪の2大会で金メダルを獲得したフランス代表のアントワーヌ・ブリザールが加入している。
なんとも豪華な面々が揃う開幕戦で、満員に近い会場を特に大きく沸かせたのは196センチのセッター、ブリザールだった。
世界を制した司令塔とはいえ、コンビネーションを構築するためにはコミュニケーションも不可欠だ。また世界選手権後の合流となり、コンディション面や日本のバレーとの相性など、不安要素もなくはなかった。だが試合が始まると、まさに圧巻と言うべきパフォーマンスを随所で見せつけた。
【すべてがワールドクラスのプレー】
強烈なジャンプサーブでレシーブの返球の位置がネットから離れても、ブリザールは素早く移動し、潜り込んでオーバーハンドでトスを上げる。しかも至近距離のアタッカーに対してではなく、体勢が崩れた状態でもファーサイドの攻撃を選択するため、相手ブロックも1、2枚になり、供給されるトスには十分な高さと伸びがある。
ワンハンドで巧みにボールを操るトスや、胸のあたりに返球されたボールをそのままミドルのクイック、ラリー中も「ここで使う?」と唸らせるようなトスワークに目を奪われた。なによりすごいのは、前述のように、サボろうと思えば安易にアンダーハンドでトスを上げられるボールも、アタッカーの打ちやすさを考えてしっかり潜り込んでボールをコントロールしながら上げること。何げないプレーではあるが、ボディバランスやパス精度のどれをとっても、さすがだ。ほかの言葉が見当たらないほどすばらしいパフォーマンスを見せ、観客だけでなく対戦相手をも魅了していた。
ラリー中を含め、8本のスパイクを打って7本を決め、87.5%という高い決定率を残した山内も、「(ブリザールと)一緒にやっていて楽しい」と笑う。
「どこからでも上がってきますから。もちろん丁寧なトスは大事だけど、いろんなとこからミドルを使ってきたりするバレーは、見ていても楽しいと思うし、やっていても面白い。そういうほうが僕は好きですね。それどころか、(ブリザールは)自分でも点を獲るし、ブロックもウィークにならない。もはや2枚替えが必要なくなったんじゃないかな、と。いろんな概念を変えていく選手だと思います」
点を獲らせるだけでなく、自ら点も獲る──。山内の言葉にあるように、第2セットではネット際のボールを「(自分がスパイクに入る)アプローチの時間を取るために高く返球した」という西田がつないだボールを、バックセンターからブリザールが2本目に打つ。
【「彼のサーブに対して何をするのが正解か」】
フランス代表でも武器としてきたジャンプサーブで、1本目からエースを奪ったかと思えば、2本目は強打を警戒して空いたスペースを狙い、相手のバックアタックを潰す。ただ打ちたい場所に強く打つのではなく、1本1本に意図があり、しかもその1本1本が強烈かつ高精度だ。
日本屈指、世界も認めるサーブレシーブの名手であるリベロの小川も思わず苦笑いを浮かべた。
「とにかくサーブがいい。もちろんわかっていましたけど、ビッグサーバーでありながらもショートサーブもあるし、いろいろな種類がある。僕個人としても、リベロとして彼のサーブに対して何をするのが正解か。模索して、考えながらプレーしました。それぐらいブリザール選手のサーブはよかったし、今日の試合のなかでは間違いなく、彼のサーブがブレイクの起点になっていました」
ブリザールだけでなく、ブルテオンには西田やミゲル・ロペスといったビッグサーバーも揃い、山内、エバデダンのジャンプフローターやハイブリッドサーブも効果を発揮する。レシーブの要となるリベロにとっては気を抜けない相手ではあるが、それでも「次は大丈夫」とばかりに小川は笑顔で言った。
「1本、(第3セットの序盤に)西田選手のサーブをダイレクトで返しちゃったボールがあったんですけど、あれは単純に僕のミス。回転がきれいだったので、これぐらいかな、と合わせにいったらオーバーしてしまった。
ただ単に「すごいサーブだった」で終わらせるのではなく、そのサーブの何がすごかったのかを教えてくれるリベロの存在。しかもそれがひとりだけではない。反省を述べた小川に対し、年々強烈さを増していくサーブに対して「準備をして臨んできた」というのがブルテオンの山本だ。
「まだ1試合ですけど、やってみて手ごたえもあった。だいぶ、楽しみだな、という印象です」
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