鄭大世解説! プレミアリーグのFWたち 後編
プレミアリーグの解説で人気の鄭大世さんに、今季注目のFWを挙げてもらった。テーマは「がんばれ!おっさん」。
>>前編「鄭大世の移籍100億円超のストライカー診断」
【動画】「おっさんストライカー」がんばれ! 鄭大世が注目するプレミアリーグのベテランストライカーたち↓↓↓【人間味あふれる姿】
カラム・ウィルソン(ウェストハム・ユナイテッド)
生年月日:1992年2月27日
プレミアリーグ成績:10試合4ゴール0アシスト
カラム・ウィルソンは、常にゴールを決めることを念頭にプレーしている、旧時代の9番タイプの選手です。
前所属のニューカッスル・ユナイテッド時代は、今夏にリバプールへ移籍したアレクサンデル・イサクとポジション争いをしながら、最終的にはベンチを温める時間が長くなっていました。ただ、それでも試合に出れば結果を残していたのが彼のすごさと言えると思います。
試合に出場することができない"悔しさ"をゴールに変えられる、人間味あふれる姿が印象的でした。
今シーズン移籍したウェストハムは、開幕からチームの調子があまりいいとは言えません。特にウィルソンのようなタイプの選手からすると、引いたところからカウンターに出る守備的な戦い方を選択しているチームは難しいと思います。
というのも、彼はスピードもありますが、ひとりで局面を打開できる選手ではありません。カウンターでも最後にポジショニングのうまさで点を取る選手です。
ウィルソン個人がクラブの調子を上げることは難しいと思いますが、逆にクラブの調子が上がればウィルソンの状態も自然と上がってくると思います。
【総合力の高さで勝負】
ダニー・ウェルベック(ブライトン)
生年月日:1990年11月26日
プレミアリーグ成績:13試合7ゴール0アシスト
ダニー・ウェルベックは、旧時代の9番タイプとネオ9番のどちらにも属さない、トップクラスでバランスのよい選手だと思います。昨シーズンはキャリア初のリーグ戦2桁ゴールを達成するなど、まさに「がんばれ!おっさん」を体現しています。
スピードで相手をはがすことはできませんが、それ以外は何でもできる選手だと思います。ケガが多いながらも試合に出場すれば結果を残すクオリティがあるからこそ、この年齢までプレミアリーグの第一線でプレーできています。
ウェルベックは自分が得点を決めるよりも、周りを生かすことが中心にあって、そのなかのひとつにゴールがある選手だと思います。まずはチームの流れを良くする潤滑油としての役割を一番大切にしていますね。
彼が他のストライカーと大きく異なるのが、ビルドアップ時の視点だと思います。
普通は味方選手がボールをつないでいるのを眺めているだけです。しかし、彼の場合はピッチを上から見ている感じで、センターバックやボランチの選手がボールを持った時にチームが数的優位を作れるかを確認しています。
だからこそ、自分の判断で的確なタイミングに下がって、ボールを受けることができるのだと思います。
その上でフィニッシュの局面では、インスイングのクロスにもアウトスイングのクロスにも合わせられる技術があり、チームが苦しい重要な場面でゴールを決めてくれます。まさに精神的な支柱ですね。
オリー・ワトキンス(アストン・ヴィラ)
生年月日:1995年12月30日
プレミアリーグ成績:13試合1ゴール0アシスト
個人的にプレミアリーグのストライカーで1番いい選手は、オリー・ワトキンスだと思っています。
彼は総合的に能力が高く、本当に何でもできる選手です。ゴール数は得点王争いに割って入るほど多くはありませんが、楔のパスを受けることも、クロスに合わせることも、ボックス内での崩しもできる。足を止めずにスピードで裏も取れますし、プレッシングもできます。
今シーズンも開幕からあまりゴールを決めることができていませんが、ワトキンスは得点以外の部分でもチームを機能させることができます。
彼が旧時代の9番タイプの選手と大きく異なるのが、サイドに流れてボールを受けることです。昔のストライカーは監督からも「ゴールから離れるな」「ボックスのライン(幅)の外に出るな」と言われていました。
それが今は逆で、サイドに飛び出してボールとの距離を近づけるだけで、チームのパス成功率やコンビネーションが向上し、崩しやすくなります。ワトキンスはサイドの裏に走って起点を作り、全体を押し上げるための時間を作って助ける場面も多いです。
自分が最後にゴールを取る動きだけじゃなくて、自分の動きが次のプレーにつながる。それを自然にできるのがワトキンスだと思います。
【チームが頼る9番】
ドミニク・カルバート=ルーウィン(リーズ・ユナイテッド)
生年月日:1997年3月16日
プレミアリーグ成績:11試合2ゴール0アシスト
ドミニク・カルバート=ルーウィンは、典型的な旧時代の9番タイプの選手です。彼ほどヘディングの垂直跳びが高い選手を見たことがありません。
その存在感が強すぎるあまり、チームが依存するような選手です。そのため組織力の高いトップチームでは苦戦をすると思いますが、残留争いするチームなどにとっては本当に頼りがいがあります。
近年はあまり多くのゴールを決めることができていませんが、彼のスタイルを見ていると、自分も「こういうふうになりたいな」って思います。
自分も現役時代は、どんなボールでも食らいついて、どれだけ遅れても絶対ボールに触りにいくか、体を当てに行っていました。でも、それを最近やる選手はあまりいないです。きれいなゴロのボールを受けるのがうまい選手はいますが、ラフなボールをマイボールにするといった、気持ちの入った選手はなかなかいません。
だからこそウィルソンやカルバート=ルーウィン、ウェルベック、ワトキンスのようなラフなロングボールを活用していた時代の生き残りの選手たちを応援したくなります。
ただ、30歳を過ぎるとロングボールを受けるのは大変です。自分も(ロングボールを受けることに)自信があったのでボールを受けたかったのですが、ロングボールはスプリントするので体力の消耗が激しいです。
それでも、逆に細かいパスを受ける動き直しをするのも大変です。細かいチェックの動きでマークを外して足元でボールを受けたり、裏を取る動きをずっと続けないといけません。
だから足元へのボールよりも、ラフなボールを自分に蹴ってくれるほうが楽な選手もいます。それでやっていけるのであれば、得意なプレーを続けるのがいいと思います。

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