F1第24戦アブダビGPレビュー(前編)

 新王者誕生の歓声が響くパルクフェルメを背に、マシンを降り、汗だくのレーシングスーツ姿のまま、パドックの喧噪のなかを歩いてきた角田裕毅(レッドブル)は、明らかに落胆していた。呆然とした表情で、声をかけるのもはばかれるような様子で、力なく歩いていた。

 だが、テレビカメラの前に立った瞬間、パチンとスイッチが入り、いつもの"角田裕毅"に変わった。

【F1】角田裕毅は最後までピーキーなマシンに苦しむ 2年前の...の画像はこちら >>
「何もないですね。普通です。これで終わりだという実感もないです。普通です」

 14位という結果に落ち込んだ様子も見せず、むしろペナルティ裁定への不満や、長いストレスから解き放たれた解放感を全面に出して饒舌だった。

 このアブダビの週末もまた、ストレスの溜まる3日間だった。金曜はFP1を新人枠で譲り、1セッションのみの走行となったFP2ではリアが不安定で思うように走れず。

 土曜に向けて大きくマシンのセッティングを変更したが、FP3の最後にアタックラップに出ようとしたところ、ピットレーンでアンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデスAMG)に接触され、予選に向けた最終確認ができなかった。フロアとサイドポッドに大きなダメージを負い、マックス・フェルスタッペンとともに使うはずだった新型フロアが使えなくなってしまった。

「アントネッリとの接触で旧型フロアに交換せざるを得なくなってしまったので、予選に向けてパフォーマンスをかなり失うことになってしまったのが痛手でした。なので予選は難しくなるだろうと思っていましたし、Q3に行くのはかなり厳しいと覚悟していました。そんななかでパフォーマンスを最大限に発揮してなんとかQ3まで行けて、マックスをアシストできたのはよかったかなとも思います」

 0.3秒の間に15台がひしめくような僅差のなか、ぶっつけ本番の旧型フロアで、Q1は0.008秒差、Q2は0.007秒差で通過し、アゼルバイジャンGP以来のQ3進出を果たした。

 そしてQ3では、フェルスタッペンの前を走って2本バックストレートでトウ(スリップストリーム)を与え、ここで驚異的なラップタイムを記録できたことで、最終アタックにリスクを負った限界ギリギリのドライビングができる状況を作り出した。フェルスタッペンの逆転タイトルに望みをつなぐポールポジション獲得に、角田も大きく貢献してみせた。

【今季はQ1突破も苦しむ大接戦】

「Q3まで行ければ、マックスのアタックをアシストするのは予選の前から決めていたベースプランでした。練習はまったくしていませんでしたし、ターン5で近すぎてもダメだし、遠すぎてもダメなので、かなりストレスはありましたね。

 でも、マックスに少なからず利益をもたらすことができたのでよかったと思います。彼もあそこで好タイムを出したことで2回目のアタックに自信を持って臨めたと思いますし、僕としても自分の果たした仕事に満足しています」

 ひさびさのQ3進出だったが、今回が特別よかったわけでも、これまでの予選が特別悪かったわけでもない。フェルスタッペンとは常に0.3~0.4秒程度のところにいるが、トップチームから中団グループまでが超僅差だけに、その0.3秒の間に何台ものマシンが入ってくる。これは角田自身にはどうすることもできない状況だ。Q1敗退からQ3進出までの差はあまりに小さい。

 レッドブルのマシン自体はピーキーで、うまく機能するセットアップ幅も狭い。驚異的なドライビング能力とこのチームで9年の経験を持つフェルスタッペンには扱えても、今季途中で加入し、まだチームにもマシンにも完全には慣れきっていない角田にはどうしても埋められない差があった。

 それでもその差は着実に縮まってきており、2年前のレッドブル独走状況なら余裕で表彰台圏内を争えたはずだった。

 それが今は、Q1突破にも苦戦するような大接戦。そんな苦しい状況のなかで戦ってきた8カ月間を象徴するような予選だった。

◆つづく>>

編集部おすすめ