セルジオ越後の「新・サッカー一蹴両断」(23)

サッカー日本代表のワールドカップの組み合わせ決定も、セルジオ...の画像はこちら >>

 いよいよ北中米ワールドカップの組み合わせが決定。グループFに入ったサッカー日本代表の対戦相手はオランダ、チュニジア、ヨーロッパプレーオフB組(ウクライナ、スウェーデン、ポーランド、アルバニア)の勝者となった。

おなじみのご意見番、セルジオ越後氏に感想を聞くと、今回の組み合わせ抽選会に覚えた違和感から語り始めた。

【ベスト32から本当のワールドカップが始まる】

 ワールドカップというか、サッカーの価値が下がってしまうんじゃないか。そんなふうに思ったのは僕だけかな。それが組み合わせ抽選会の中継を観ての率直な感想だ。

 まず、抽選が始まるまでがとにかく長かった(苦笑)。中継を観るために、わざわざ夜中に起きたことを後悔したよ。サッカーに関係のない人が次々に出てくるし、FIFA(国際サッカー連盟)のインファンティーノ会長はアメリカのトランプ大統領にペコペコしてばかり。よくわからない賞(新設の「FIFA平和賞」)をプレゼントしていた。だったら(共催国の)カナダとメキシコの大統領にもあげないと不自然だ。

 FIFAはニューヨークにあるトランプタワーに事務所を開設するなど、政治的、ビジネス的なすり寄りがあまりに露骨。今大会の決勝では(アメリカンフットボールの)スーパーボウルみたいにハーフタイムショーをやることも発表していた。ピッチは荒れるだろうし、いったい何分やるつもりなのかと今から心配だ。

 これまであまりサッカー人気が高くなかったアメリカという巨大市場を一気に開拓しようという狙いがあるにしても、見ていて恥ずかしくなるくらいだった。

世界のサッカーファンは置き去り。おカネのことしか頭にない。

 そして、何より肝心の組み合わせだよ。過去の大会と比べると、明らかにワクワク感が少ない。

 出場国が32カ国から48カ国に増えたことで、レベルの拮抗したグループがほぼなくなった。いわゆる"死のグループ"が存在しない。どのグループも勝ち抜けが予想できてしまう。レベルのよくわからない、おそらくあまり強くない国もいる。ヘタをすると、興醒めするような大差のつく試合も出てくるだろう。10-0とかね。

 僕に言わせれば、今回のグループステージはワールドカップの"前夜祭リーグ"だ。そこを勝ち進んだ32カ国によるトーナメントから、ようやく本当のワールドカップが始まる感じだね。

【オランダはだいたいいつも強い(笑)】

 さて、グループFに入った日本(FIFAランキング18位)は、オランダ(7位)、チュニジア(40位)、ヨーロッパのプレーオフB組(ウクライナ、スウェーデン、ポーランド、アルバニア)の勝者と対戦する。今大会はグループ3位でも決勝トーナメント進出の可能性があるので、日本の決勝トーナメント進出は問題ないと思う。ただ、3位の通過では喜べないし、過去の大会のように2位以内で突破してほしい。

 最大のライバルは、やはり初戦で対戦するオランダ。ワールドカップ優勝経験はないけど、だいたいいつも強い(笑)。

 古い話で申し訳ないけど、僕がオランダに持つイメージは、1974年西ドイツワールドカップで準優勝したときの「トータルフットボール」だ。(2次リーグで対戦した)ブラジルがクライフの見事なジャンピングボレーでとどめを刺されたからよく覚えている。当時のサッカーは、DFは足元の技術がないのが当たり前だったのに、オランダは全員にスキルがあって、DFも攻撃に加わっていた。いわば現代のサッカーを先取りしていた。

 今回のオランダ代表の顔ぶれを見ても、DFファン・ダイクのように体が大きくても高いテクニックを持っている選手ばかりで、通じるところがあるなと感じるね。あとは日本の選手たちと比べて、格上のリーグ、クラブに所属している選手が多い。どのポジションにも世界的な選手がいて、バランスがいい。

格上の嫌な相手だ。

 ただ、日本もヨーロッパでプレーする選手が増えてレベルが上がった。簡単にやられることはないと思う。押し込まれる時間は長くなるかもしれないけど、苦手なセットプレーの対策をしてしっかりと守りながら、カウンター攻撃に活路を見出したい。

 続いて対戦するチュニジアは、アフリカ予選(グループH)を9勝1分け(22得点、0失点)と圧倒的な数字で突破してきた。でも、対戦相手を見ると、それほど強い国はいない。むしろ、もっと得点を取れなかったのかなと思う。

 過去の実績、選手の所属クラブを見ても、日本のほうが上。11月に親善試合でブラジルと対戦して1-1と引き分けているというから侮れないけど、仮にも「優勝」を目指す日本にとっては、勝たなければいけない相手だろう。

(24)を読む>>>セルジオ越後「サッカー日本代表のワールドカップ優勝はともかく...今度こそベスト8を達成して花火をあげたい!」

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