セルジオ越後の「新・サッカー一蹴両断」(24)

セルジオ越後「サッカー日本代表のワールドカップ優勝はともかく...の画像はこちら >>

 ワールドカップのグループステージでの対戦相手が決まった日本代表。今大会で、これまではね返され続けてきた「ベスト16の壁」を破れるのか? 森保一監督と選手たちが目標に掲げる「優勝」の現実味は? ご意見番のセルジオ越後氏に、前回に続いて組み合わせの印象、大会の展望を聞いた。

(23)を読む>>>サッカー日本代表のワールドカップの組み合わせ決定も、セルジオ越後「ワクワク感が少ない」

【モロッコよりブラジルのほうが戦いやすい】

 日本のグループステージ3戦目の対戦相手は、ヨーロッパプレーオフB組(ウクライナ、スウェーデン、ポーランド、アルバニア)の勝者。アルバニア以外の3カ国のどこかになるだろう。そして、その3カ国のどこが出てきても弱くない。ポット4のプレーオフ組とはいえ、普段からワールドカップ予選、EURO(ヨーロッパ選手権)予選、ネーションズリーグと、レベルの高いヨーロッパの公式戦でもまれているわけだからね。FIFAランキングもあまり関係ない。

 だから、グループFはオランダと日本とこのプレーオフ組の3カ国で1位、2位を争うことになる。

 日本としては、初戦のオランダ戦で勝ち点1(引き分け)以上、2戦目のチュニジア戦で勝ち点3(勝利)を奪い、余裕を持った状態で3戦目に臨むのが理想だ。参加国の増えた今大会はグループ3位でも通過の可能性があるとはいえ、仮にも「優勝」を目指しているなら、「2位以上での通過」はクリアしてほしい。

 いずれにしても決勝トーナメント進出は問題ないだろう。本番はそこから先だ。グループFを2位以内で突破すると、決勝トーナメント1回戦(ベスト32)はグループCの1位か2位との対戦になる。ブラジル、モロッコのどちらかだね。

 個人的には、ブラジルのほうが戦いやすいと思う。

10月の親善試合では日本が3-2で逆転勝ちしたとはいえ、ブラジルはベストメンバーではなかったし、レベルの低いアジアの日本に2連敗するわけにはいかないと、次は油断もしてくれないだろう。でも、それを差し引いても、今のブラジルはあまりよくない。国内でも期待されていないんだ。

 タレント不足は深刻で、特にFWの切り札がいない。以前のネイマールのように、ひとりでチームを勝たせるスーパーな選手がいない。エースと言われるヴィニシウスにしても、レアル・マドリードで活躍できているのは中央にエムバペがどんと構えているからこそ。そもそも彼はストライカーではないからね。

【あらためて「優勝」は現実的な目標ではない】

 そのブラジルに比べると、勢いのあるモロッコのほうが嫌な相手だ。前回のカタールワールドカップでベスト4に進出した後も、2023年に親善試合でブラジルに勝つなどして、今はどんな強豪が相手でも勝てると思っているはずだ。そういう自信を持った相手にガンガンこられるのは怖い。

 ただし、ブラジルも"モロッコに比べればマシ"というだけで、どちらが相手になっても勝つのは大変だ。それをクリアして、ようやくベスト16。

相手はフランスかドイツになる可能性があるらしいけど、考えても仕方ない。はっきりしているのは、ベスト8に進むのは相当に大変だということ。当たり前だけど、優勝するにはそこからあと3試合も勝たなければいけない。気が遠くなるよね(苦笑)。

 今の日本代表はヨーロッパでプレーする選手がほとんど。世界的なスター選手はまだいないけど、本当に強くなったと思う。ワールドカップに出られない、まるで人気のなかった時代から日本のサッカーを見てきた身としては、感慨深いものがある。

 でも、森保一監督や選手たちは今回の目標を「優勝」と言っているけど、組み合わせを見て、あらためて現実的ではないと思った。過去、日本は何度もベスト16の壁にはね返されてきた。PK戦も含めて、勝てそうで勝てなかった。まず、その壁を破ること。それじゃないかな。

僕もあと何回ワールドカップを観られるかわからないし、今度こそベスト8を達成して花火をあげたいね。

編集部おすすめ