2026年ワールドカップ本大会の行方を占おうとすれば、その2週間前まで行なわれている欧州の2025-26シーズンの動向を抜きにして考えることはできない。過去を振り返れば、それぞれが密接な関係にあることは一目瞭然となる。

本大会で活躍が有力視される各国代表選手の大半が欧州でプレーする現在、その傾向は加速するばかりである。

 日本選手も例外でない。しかし、欧州組と言われる数は相変わらず右肩上がりの一方で、トップクラスは伸び悩んでいる。チャンピオンズリーグ出場人数は昨季より減少。ケガのために戦列を離れている選手も多数存在する。ワールドカップを半年後に控えた日本代表に対し、楽観的にはなれない理由である。

 リバプールに所属する日本代表キャプテン遠藤航は、12月13日(現地時間)に行なわれたプレミアリーグ16節、ブライトン戦でもケガの影響もあるのかベンチ外となった。今季の出場試合は5試合。時間にするとわずか44分である。本人のためにも日本代表のためにも、この冬に移籍すべきではないかとの声が上がるのは当然だろう。

 一方、この試合でブライトンの三笘薫は、9月27日のチェルシー戦以来、10節ぶりに出場の機会を得た。踵の痛みとされる症状のためか、今季は開幕直後からプレーに精彩を欠いていた。

左ウイングを象徴するプレーである縦突破を、すっかり披露できなくなっていた。

サッカー日本代表のカギを握る三笘薫の回復度 リバプール戦、ワ...の画像はこちら >>
 敵地アンフィールドで行なわれたこの一戦。三笘がブラヤン・グルダ(U-21ドイツ代表)と交代で左ウイングのポジションについたのは後半19分だった。スコアは2-0。ホームのリバプールがウーゴ・エキティケ(フランス代表)の2ゴールで、ブライトンを圧倒している状況だった。

 入るやいなや、三笘は左SBフェルディ・カディオグル(トルコ代表)からサイドチェンジ気味のパスを受ける。目の前で対峙するリバプールの右SBはドミニク・ソボスライ(ハンガリー代表)で、さらに右ウイング、モハメド・サラー(エジプト代表)も三笘の対応に駆けつけた。

【世界的選手ふたりを前にした三笘は...】

 ソボスライは、ハンガリー代表がワールドカップ予選で落ちたため、本大会には出場しない。筆者的にはフビチャ・クバラツヘリア(パリ・サンジェルマン/ジョージア代表)とともに、ワールドカップで見たかった選手のひとりである。

 ワールドクラスの選手とマッチアップしたとき、どれほどやれるか。これはワールドカップでの活躍度を占う重要なポイントだ。そういう意味でも、この世界選抜チームといっても過言ではないリバプールとの対戦は、ワールドカップの抽選会を終えたばかりのいま、注目に値した。

 リバプールには、日本がワールドカップ本大会において同じグループFで対戦するオランダ代表選手が4人(DFフィルジル・ファン・ダイク、MFライアン・フラーフェンベルフ、FWコーディ・ガクポ、SBジェレミー・フリンポン)所属している。ガクポとフリンポンが故障で離脱中とあって、この日、ピッチに立ったのはファン・ダイクとフラーフェンベルフだった。一方のブライトンにも3人のオランダ代表選手がピッチに立っていた。GKバート・フェルブルッヘン、CBヤン・ポール・ファン・ヘッケ、右SB兼MFマッツ・ウィーファーだ。

 三笘の回復度を測るには、そういう意味でも貴重な物差しと言えた。森保一監督には、この試合を現地で生観戦してほしかったとは、偽らざる気持ちである。

 後半19分、世界的な選手ふたりを前にした三笘は、縦に行く素振りを見せながら、駆け引きの末に真ん中に戻した。

 この試合一番の見せ場となったのは、その4分後に見せた、ジョルジニオ・ルター(元U-21フランス代表)とのコンビネーションプレーである。三笘は左ウイングの位置でボールを受けると、内寄りに入ったルターにボールを預け、その脇を走った。それがワンツーとなって三笘はゴール前に侵入。シュートチャンスが到来したかに見えた。

 だが三笘は基本的にお人好しだ。

オラオラ系ではない。この場面をラストパスにしようとした。その結果、絶好のチャンスを逸することになった。

 三笘が個人としてもっとも前向きなプレーを見せたのは後半32分。ソボスライに対して1対1を仕掛け、縦抜けを図ったシーンである。フェイントは効いていた。縦抜けは成功したかに見えたが、完全ではないと見るや、三笘は縦抜けを断念。切り返しを図り、右足に持ち替えたボールを中央に送り込もうとするも、カバーに入ったカーティス・ジョーンズ(イングランド代表)に阻まれた。

 もう1本は後半39分のプレー。ファン・ヘッケから大きなサイドチェンジのパスを受けた瞬間だった。流れ的にここだと思ったのだろう。三笘は右足のアウトで、真ん中で構えるダニー・ウェルベック(元イングランド代表)にパスを送った。

しかし、イブラヒマ・コナテ(フランス代表)にカットされてしまった。

 三笘の動きそのものは悪くなかった。プレー機会も、パスが頻繁に回ってきたこともあって多かった。しかし、かつてのレベルに戻っているかと言えば、答えに窮する。まだ様子を見る必要があるだろう。

 三笘のプレーが全開になるか。これこそが、日本がワールドカップの決勝トーナメントを賑わせることができるか否かの最大のカギになる。残りのシーズン、期待感を持って見守りたい。

一方で心配になるのは遠藤だ。日本代表キャプテンが、オランダ代表選手が計5人もプレーしたこの一戦にベンチにも入れなかった現実は、むしろ三笘より深刻と言うべきだろう。

 いま日本代表にもっともほしいのは「勢い」だ。本大会の結果はその有無に委ねられると言っても過言ではない。

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