前編:「ウインターカップ2025男子」ここに注目!
中学時代から日本バスケットボール界の"逸材"として注目を集めてきた白谷柱誠(ちゅそん)ジャック。だが、今年4月に福岡大学附属大濠高校に入学して以降、世代別の日本代表活動も含め駆け抜けてきたが、本人にとっては決して満足のいく時間を過ごしてきたわけではない。
12月23日に開幕する第78回全国高等学校バスケットボール選手権大会(SoftBank ウインターカップ2025)は高校ルーキーイヤー最後の大舞台。この9カ月の経験をプラス思考に変え、思いきり挑むつもりだ。
【高校バスケ1年目で感じた自らの課題】
学生バスケットにおいては毎年のように注目のルーキーが現われる。しかし"逸材"となると話は違う。数年に一度、出るか出ないか。福岡大学附属大濠の白谷柱誠ジャックは、その"逸材"と呼ばれるにふさわしいルーキーだ。
2009年、三重県津市に生まれ、小学生の時にバスケットを始める。四日市メリノール学院中学(三重)に進学すると、1年生のときから同校の全国大会優勝に貢献。以降、夏の全国大会は3連覇し、冬の全国大会「ジュニアウインターカップ」でも2年次に優勝。1年、3年次の同大会でもベスト4入りを果たすなど、チームの中心選手として活躍し続けた。
中学2年生の時にすでに193センチ。それでいてゴール近辺だけのプレーに留まらない指導方針もあって、スケールの大きな、ダイナミックなプレーを見せていた。
福岡大学附属大濠に進学した今年は、16歳にして年齢制限のない日本代表のディベロップメントキャンプ(若手主体の日本代表への登竜門的なキャンプ)にも召集された。負傷者との入れ替わりではあったものの「ウィリアム・ジョーンズカップ」と呼ばれる国際大会に出場している。それらの経歴を見るだけでも、彼が"逸材"と言われておかしくないことを理解できるだろう。
しかし本人は周りの喧騒に振り回されることなく、しっかりと地に足をつけている。中学バスケットでいくら結果を出そうとも、高校バスケットでも同じように結果が出せると思っていない。
「高校ではプレーの強度が上がるぶん、簡単に1対1で得点が取れなかったり、自分のペースだけでプレーしようとすると、相手にとっては楽な状況になってしまいます。その意味でも、自分のやりたいようにできないことが、一番の苦戦しているところだと思います。ただ今の自分としては、1年生らしく常にチャレンジする気持ちでアタックし続ける部分と、アタックだけじゃなくて、ほかの部分でも......たとえばリバウンドを取ることだったり、コーナーまでしっかり走ることだったり、そうした得点以外の部分でチームに貢献しようかなと思っています」
高さだけでなく、パワーやオールラウンドなスキルで圧倒していた中学時代とは異なり、高校バスケットではそれらの面でも上をいく選手は多い。でも、だからこそ、高校バスケットの階段を一段一段登っていこうというわけだ。
そのうえでなお、白谷はステップアップへの意欲を失っていない。
「リバウンドだったり、走り続けるっていう泥臭い部分は、確実に自分のバスケ人生のなかでも継続するところではあるんですけど、得点という部分ではまだ自分のスキル不足だったり、判断の悪さがあると思います。そこは徐々に質を高めていって、最終的には来年からでも......いや、今年からでも世代を代表するスコアラーになりたいと思っています。常にスコアリングっていう部分を捨てずに、自分の武器としてやっていこうかなと思っています」
【多くの経験を積んだ1年のすべてを初のウインターカップで】
「夏のインターハイに関してはチームとしての成績(ベスト8で敗退)が思うようなものではなく、その後の『U18日清食品トップリーグ』では優勝することができたんですけど、個人としてはどちらの大会の成績も全然納得がいってないんです。ウインターカップは今年最後の全国大会でもあるし、3年生からすれば高校バスケの集大成ですけど、自分からしてもこの1年間に経験したことをすべて出す場でもあると思っているので、全力で挑みたいなって思っています」
白谷がこの1年で経験してきたことは、実に濃密だ。前記のとおり、6月に日本代表のディベロップメントキャンプに召集され、7月にはウィリアム・ジョーンズカップに出場、そのままインターハイへ。8月には八村塁(ロサンゼルス・レイカーズ)が主催するキャンプ「BLACK SAMURAI 2025」に参加、その後U16日本代表としてU16アジアカップを戦うと、福岡県代表の一員として国民スポーツ大会で優勝し、福岡大附属大濠が出場した「U18日清食品トップリーグ」でも、全試合ではないもののコートに立って、チームの大会連覇に貢献した。
なかでも「BLACK SAMURAI 2025」で八村から受けたアドバイスは、白谷が次のステップに進むうえで大きな道しるべにもなっている。
「八村さんからはシュートについてのアドバイスを受けたんですけど、そこの部分は自分でも疎かにしていた部分だったんです。具体的に言えば、ボールを持ち上げるときにおでこの後ろまで振りかぶってしまうことと、ジャンプして着地するときにフェイドアウェイ気味になって、真っすぐ下りていないところの2点です。
たったふたつのポイントですけど、シュートフォームを変えるってことは、選手からしたらあまり居心地がよくないものです。自分も練習当初はシュートもなかなか入らなくて、苦戦したんですけど、U18日清食品トップリーグが終わってから、そのシュートフォームの改革が自分にとっても効果が出てきているんじゃないかと実感できています」
自ら疎かにしていたところを認め、居心地の悪ささえも受け入れて、ステップアップの歩みを進めようとする。
「夏前は日本代表活動に行っていて、なかなかチームにフィットできていなかったし、ジャック自身のコンディションも、決していい状態ではありませんでした。それでもチームのために頑張ってくれる、いいマインドではあったんですけど、結果的にU16のアジアカップもそうですし、インターハイも、優勝した国スポも、ジャック自身は不完全燃焼で終わってしまった、すごく悔しい感じだったんです。
でも今は体のキレも、プレーそのものもだいぶ思いきりよくなってきているので、ウインターカップではのびのびと、自由に暴れさせようと思っています。一番はチームが優勝することですけど、ジャック自身のよさもしっかり披露してほしいなと思います」
白谷本人も、多くの経験を積むことができた収穫はあるものの、同時に、いくつもの悔しい思いをしてきたと認める。むろん何かを取れば、何かを取れないことはある。日本代表活動に参加することで、福岡大学附属大濠のチームメイトと連携が取れなかったことも、そのひとつだ。チーム外での経験がすべてを即プラスにするわけでもない。しかし、マイナスに振れたことをプラスに転じることは、自分の思考次第でできることでもある。
「ケガをしたり、チームに合流できなかったことで自分としての自信や、やるべき役割を明確にできず、得点が1ケタで終わるようなゲームも多かったんです。でも、そうしたゲームがあったからこそ、今でもまだうまくなろうと努力する思考が持てていると思います。その思考を今年最後のウインターカップの舞台で出せたらいいんじゃないかなと思っています」
注目されようが、されまいが、「ルーキー」と呼ばれるのは、わずか1年でしかない。
ウインターカップ2025ここに注目!「女子・桜花学園高」



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