学校での部活を取り巻く環境が変化し、部員数減少も課題と言われる現在の日本社会。それでも、さまざまな部活動の楽しさや面白さは、今も昔も変わらない。

 この連載では、学生時代に部活に打ち込んだトップアスリートや著名人に、部活の思い出、部活を通して得たこと、そして、今に生きていることを聞く――。部活やろうぜ!

連載「部活やろうぜ!」

【声優】西山宏太朗インタビュー 前編(全2回)

【部活やろうぜ!】人気声優・西山宏太朗が語る、中学バスケ部で...の画像はこちら >>

 中学時代、男子バスケットボール部に所属していた人気声優の西山宏太朗。西山の学校は当時、『テニスの王子様』(許斐剛・集英社刊)の影響もありソフトテニス部が大人気で、男子バスケ部は学年でわずか2名という"超少数チーム"。勝てない時期も長かったが、それでも彼の足は体育館に向き、練習の時間が何より好きだった。そこにあったものは、勝敗を超えた「仲間とスポーツを楽しむ感覚」だった。

 最近では、声優仲間とテニスを始め、再び"部活のような時間"を楽しんでいる。西山が語る、青春の原点とは。

【声優仲間と夜のテニスコートへ】

――1カ月前からテニスを始められたそうですね。

西山宏太朗(以下、同):そうなんです。声優仲間にお誘いいただいて。増田俊樹さん、山本和臣さん、蒼井翔太さん、山下大輝さんと5人でやっています。まだ4回くらいしかやってないんですけど、2回目でもうラケットとシューズを買いに走っていました(笑)。最初はレンタルでいいかなって思ってたのに、気づいたら「これは道具から入った方が気持ち上がるぞ」って。

 みんなで夜に集まって、仕事じゃない時間を共有しながら、ただひたすら球を追いかけるのがすごく新鮮で。運動しながら笑って、ちょっと失敗してもいい。その空気が部活みたいだなって思ってしまって。「テニスって楽しいな、趣味にしたいな」って素直に思いました。

――声優テニスクラブですね。

 そうですね(笑)。都心だとコートの予約も大変で、料金もなかなかするんですよ。それでも、時間を作ってでも行きたくなるんです。お酒じゃなくて、体を動かしてリラックスするっていうのが、すごく心地よくて。みんなでラリーしながら「うまくなりたいね」って言い合ってると、自然と心の距離も近くなるというか、まさに部活の延長みたいだなって思います。

 最近は、いいストレス発散にもなっているんです。前は飲みに行ってワイワイ話してリフレッシュすることが多かったんですけど、いまは汗をかいて、仕事の話をいっさいせずに、ただテニスに集中する時間がすごく気持ちよくて。

なんか、すごく健全ですよね(笑)。ボールを追いかけていると、余計なことを考えなくなって、頭の中がすっと軽くなるんです。

――体を動かしてストレス発散って、健康的で素敵ですね。スポーツは昔からお好きなんですか?

 小学生の頃、朝のミニバスに通っていました。いつもより45分くらい早く学校へ行って、友達とボールを追いかけて。そういう時間が好きでしたね。

 そしてそのまま中学ではバスケットボール部に入部。入学した年が『テニスの王子様』ブームで、ほとんどの男子がソフトテニス部へ行ったんですけど(笑)。バスケ部は僕らの代が2人、先輩合わせても10人ほど。でも、人数が少ないほど、一人ひとりの顔が見える距離感があって、部室の空気もすぐに自分の場所になっていく感じが心地よかったです。

――バスケのポジションは?

 センターです。練習ではリバウンドもシュートも決まるのに、本番になると急に体力がなくなるんですよ。

監督には「練習の王子様」と言われていました(笑)。練習は本当に大好きだったんですよね。

 でも、先輩が卒業して自分が部長になったタイミングで、「ちゃんとしなきゃ」という意識が自然と強くなっていきました。強くないチームだったからこそ、後輩の前で情けない姿は見せられないなという思いもあって。だから、練習後は残って自主練していました。ゴールに向かって黙々とシュートを打つ時間は、自分を奮い立たせる時間でもありましたし、同時にやっぱり好きな時間でもあったんです。ボールの音や体育館の匂いに包まれながら、夢中で練習している瞬間は、追い詰められているはずなのに不思議と楽しくて。あの"ひとりのコート"の時間は、いまでも忘れられません。

【初めて掴んだ"勝利の余韻"】

――練習したことで勝てた試合の記憶は鮮烈ですか。

 そうですね。弱小と言われ続けていたなかで掴んだ一勝。ベンチもコートも同じ喜びで揺れる瞬間があるんですよね。

女子バスケ部は強かったので、いつも比べられて悔しい思いをしていましたが、その日だけは全員が同じ方向を向いていて「やったね!」って喜びを分かち合いました。あの光景はいまだに胸に残っています。

――ちなみに、当時憧れていた選手はいましたか?

 ちょうど田臥勇太選手がNBAへ挑戦された時期で、ニュースで追っていました。あまり日本でバスケが取り上げられることがない時代だったので、日本人が世界に挑戦する姿に、漠然と夢を感じていましたね。

――日本人選手の挑戦に胸が熱くなる一方で、ご自身の部活ではどんな時間がいちばん印象に残っていますか?

 とにかく、みんなでワイワイやる時間が好きでした。休み時間の延長みたいな空気で、キャイキャイ言いながらボールを回している瞬間がいちばん楽しくて。勝ち負けの緊張感より、純粋に「仲間と一緒にいるのがうれしい」という感覚が強かったですね。練習が一日のご褒美でした。

――いまのテニス仲間との空気感にも通じますね。

 そうですね。知らない人とガチで勝負するより、気心が知れた仲間と練習する時間が本当に好きなんです。うまくなりたいし努力もするけど、楽しさが中心にあるほうが自分らしい。

中学の頃からその感覚は変わっていません。

――その「仲間と一緒に楽しむ」という感覚は、他の部活に入っていても芽生えていたと思いますか? もしバスケ部に入っていなかったとしたら、どんな部活を選んでいたと思いますか?

 うーん......。正直、当時はほぼ一択でバスケだったんですけど、もし入っていなかったら、どこでしょうね。男子が入れる部活が限られていたので、卓球とか野球とかになっていたかもしれないですし、仲のいい友達が吹奏楽部にいたので、その流れで吹奏楽に入部していた可能性もあります。

 あと、もし学校に男子バドミントン部があったら、そこに入っていたと思います。なかったんですよ、男子バドミントン。いま思うと、絶対楽しいだろうなって(笑)。結局、仲間と一緒にキャイキャイできる場所を選んでいた気がしますね。

(後編につづく)

【部活やろうぜ!】人気声優・西山宏太朗が語る、中学バスケ部で育った"楽しむ力" 「練習は誰より好きだった」

●Profile
西山宏太朗(にしやま・こうたろう)/10月11日生まれ、神奈川県出身。
2009年に行なわれた第3回81オーディション特別賞を受賞し、2011年より81プロデュース所属となる。デビュー以降数々の作品に出演し、2018年には第12回声優アワードにて新人男優賞を受賞する。声優として活躍するなか、2020年秋頃にミニアルバム「CITY」にてアーティストデビュー。

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