2026北中米ワールドカップをどう戦う?(後編)

◆前編はこちら>>佐藤寿人「森保監督は自身のやり方を曲げない」

 半年後の2026年6月に幕を開ける北中米ワールドカップ。日本はグループステージでオランダ、チュニジア、欧州プレーオフBの勝者(ウクライナ、スウェーデン、ポーランド、アルバニア)と対戦する。

 グループステージの対戦相手には、強烈な個性を持つストライカーを擁するチームが存在する。ワールドカップでは「9番」の出来が結果を大きく左右するだけに、彼らを封じることが重要なミッションとなるだろう。

 元日本代表FWの佐藤寿人氏が警戒すべき対戦国のストライカーと、その攻略法を解き明かす。

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サッカー日本代表がワールドカップでオランダに勝つには? 佐藤...の画像はこちら >>
「ストライカー視点」で対戦国のタレントを見ていくと、まずオランダで注目したいのはメンフィス・デパイ(コリンチャンス)ですね。

 サイズがあってエリア内で仕事をする「クラシックなオランダの9番タイプ」ではありませんが、動き出しの秀逸さがこの選手の特長だと思います。

 緩急のつけ方が秀逸で、相手を動かすことができるんです。ゴールシーンを見ても本当に巧さを感じますね。ヨーロッパのクラブレベルでは不遇な時期もありましたけど、ブラジルに活躍の場を移したことでプレータイムが増え、コンディションが上がっているように見えます。心身ともにいい状態でワールドカップに臨んでくるのではないでしょうか。

 オランダはウイングにタレントがいますし、中盤の構成力も高い。ある程度相手を押し込んだなかで、スペースを見つける目のよさであったり、ボールを呼び込んだ時のフィニッシュワークのテクニックが非常に高い選手なので、日本としては守備ラインをなるべく下げたくないですね。

 下がって構えたとしても、彼には狭いスペースでもフィニッシュまで持っていく力がある。

高さ(178cm)はさほどないので、クロスやフィードを入れられても日本は跳ね返すことができると思います。

 しかし、押し込まれたなかで動かされて、たとえばウイングのカットインからくさびを差し込まれたり、2列目が関わってきて、コンビネーションで崩されたり......そういう流れのなかでゴールに近づかれると、非常に厄介ですね。ゴール前でのプレー判断が非常に早いので、なるべくゴールから遠ざけることが肝要です。

【チュニジアのFWを恐れなくていい】

 デパイはラインブレイクして抜け出すタイプでもないので、ラインを高くすることは問題ないと思います。ただ、ラインを高くするためには、ボールホルダーに対してうまく圧をかけなければいけない。

 プレッシャーをかけることで、コーディ・ガクポ(リバプール)をゴール前に近づけないと同時に、ボールを奪って出ていくことができる。そんな戦いができれば、理想的だと思います。

 第2戦の対戦相手であるチュニジアには、前線に名だたるストライカーは存在しません。日本ではガンバでプレーするイッサム・ジェバリが知られていますが、代表内での序列はさほど高くないのが現状です。

 ヨーロッパのクラブシーンでふた桁得点を取っているような選手はいませんし、さほど恐れる必要はないというのが正直なところ。アフリカ予選を無失点(9勝1分)で突破したように、守備に特長があるチームなので、日本とすればそこをどうこじ開けていくかが大きなテーマとなると思います。

 映像を見るかぎり、5バックを敷いて、攻撃は長いボールを送り込んで、ボックス内に人数をかけてくるスタイルでした。絶対に気をつけなくてはいけない選手はあまりいない印象ですが、あえて言えばセルティックでプレーするセバスチャン・トゥネクティとコペンハーゲンのエリアス・アシュリになるでしょうか。

 トゥネクティはノルウェー出身で、ストライカーというよりも2列目からボックスに入っていくスタイルの選手。アシュリはフランス出身で、アフリカネイションズカップのウガンダ戦では2ゴールを決めています。

 ただ、いずれにせよ個人を警戒するよりも、シンプルにクロスやフィードを入れてきて、セカンドボールを回収して攻め込んでくるスタイルなので、日本は確実に跳ね返しながらセカンドボールを相手に渡さないことがポイントになると思います。

【レバンドフスキをどう抑える?】

 本大会の出場権をかけて欧州プレーオフBを戦う4チームのなかでは、スウェーデンとポーランドに有力なストライカーがいます。

 スウェーデンと言えば、やはりアレクサンデル・イサク(リバプール)ですね。ただ先日、大ケガ(左足の腓骨骨折)を負ってしまったので、プレーオフの出場が危ぶまれています。

 イサク以外では、アーセナルのヴィクトル・ギェケレシュもいい選手ですね。ほかにもバルサのルーニー・バルドグジや、ニューカッスルでプレーするアンソニー・エランガもいる。前線のタレントは豊富ですが、やはりイサクの離脱の影響は大きいと思います。

 ポーランドには、言わずと知れたロベルト・レバンドフスキ(バルセロナ)がいます。かなり厄介な相手ですが、個人的には日本と対戦するところを見てみたい選手です。2018年ロシア大会で対戦し、その時はゴールを奪われませんでしたが、やはり止めることが難しい選手であることは間違いありません。

 レバンドフスキの真のすごさは、動き出しにあります。

なので、背中を取られないことが彼を抑えるために最も重要なテーマとなります。4枚であれ、3枚であれ、センターバックの間の距離が開いてしまうと、かなり危険です。ボックス内でフィニッシュワークできる空間を作られてしまうからです。

 彼はラインのずれを常に狙っていて、ラインブレイクから巧みにボールを呼び込んできます。少しでも目を離すと危険な位置に入り込んでくるので、常に守備者の監視下に置かなければいけません。

 カタール大会ではスペインに勝ちましたけど、アルバロ・モラタにやられて苦しい状況に追い込まれました。エースが点を取ると、チームは勢いづくもの。逆にエースが封じられれば、当然、チームとしてリズムが作りにくくなります。極端な話、ボールを触らせないことが勝利に大きく近づくことになると思います。

 レバンドフスキを個人で抑えることは難しいでしょう。したがってパスの供給元にタイトに行くことが求められます。ボールホルダーに対して圧がかかれば、最初のアクションを起こしづらくなりますし、ノッキングが起こりやすくなる。

一瞬でも隙を見せればやられてしまう可能性が高いので、90分間集中を切らさず、その作業をやり続けたいところです。

【対戦国は上田綺世を警戒している】

 ポーランドにはレバンドフスキのほかにも、優れたタレントが揃っています。クシシュトフ・ピョンテク(アル・ドゥハイル)もそのひとりです。ミランにいた時はかなり好きだった選手ですね。サイズ(183cm)もあるし、決定力もある。今はカタールに活躍の場を移していますけど、ピッチに出てくれば警戒したい選手です。

 出し手を抑えるという意味では、ピオトル・ジエリンスキが注意を払いたい選手になります。インテルではまだ絶対的な存在ではないですが、ナポリ時代には主力を担っていました。2列目で出し入れしながら攻撃のリズムを作り、自らも前に出ていけるので、日本とすれば彼を抑えることが重要なミッションとなるでしょう。

 対戦各国に強力なストライカーがいますが、日本にも上田綺世(フェイエノールト)がいます。

 過去のワールドカップを見ても、上に行く国には点の獲れる「9番」がいました。今、上田はそういう存在になっていると思います。

もちろん相手からすれば、上田だけを潰せばといいと思っているわけではないでしょうけど、ボックス内で仕事のできる選手がいるといないでは、まったく違ってきます。

 当然、対戦国は上田を警戒しているはずです。だけど、日本には上田以外にもストライカーがいます。小川航基(NEC)も今、いい状態にありますし、町野修斗(ボルシアMG)もドイツでがんばっています。

 とりわけ町野は、カタール大会で試合に出られず悔しさを味わった選手です。上田に比べれば絶対的な存在ではありませんが、彼がいることで戦い方の幅は広がるはずです。タイプは異なりますが、前回大会でキーとなった浅野拓磨(マジョルカ)のように、途中出場から流れを変える役回りも、彼なら十分できるんじゃないかなと思います。

<了>


【profile】
佐藤寿人(さとう・ひさと)
1982年3月12日生まれ、埼玉県春日部市出身。兄・勇人とそろってジェフユナイテッド市原(現・千葉)ジュニアユースに入団し、ユースを経て2000年にトップ昇格。その後、セレッソ大阪ベガルタ仙台でプレーし、2005年から12年間サンフレッチェ広島に在籍。2012年にはJリーグMVPに輝く。2017年に名古屋グランパス、2019年に古巣のジェフ千葉に移籍し、2020年に現役を引退。

Jリーグ通算220得点は歴代1位。日本代表・通算31試合4得点。ポジション=FW。身長170cm、体重71kg。

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