スペイン、ラ・リーガの2026年初戦で、久保建英(レアル・ソシエダ)はマッチMVPに輝いている。昨年12月にセルヒオ・フランシスコ監督が成績不振で解任。

暫定監督となったジョン・アンソテギをはさんで新たに就任したペレグリーノ・マタラッツォ監督の初陣を敗北から救った。

 試合は強豪アトレティコ・マドリードを本拠地に迎えて1-1のドロー。久保は見事なアシストでポルトガル代表ゴンサロ・ゲデスの同点ゴールを演出した。

久保建英が見せたワールドカップにつながる風景 アトレティコ戦...の画像はこちら >>
「(久保は)とてもよくなった姿を見せ、それこそ求められたものだった。アクティブなプレーで、(マッテオ・)ルッジェーリを躍らせ、次に(ダビド・)ハンツコを餌食にした。ルッジェーリを退場にも追い込むことができたのではないか。そしてアシストはすばらしく、機転が利いていた。また、ゴールライン奥まで切り込んだプレーでは、(ミケル・)オヤルサバルへのグラウンダーパスもすばらしかった。これぞ、久保だ」

 スペイン大手スポーツ紙『エル・ムンド・デポルティーボ』は、久保のプレーを手放しで称えている。

 不振のチームのリスタートで、エース久保のプレーは注目されていたが、一発回答だったと言える。

「新監督になって、輝きと技巧を取り戻した」

 スペイン大手スポーツ紙『マルカ』も、両チーム通じて最多の星二つ(0~3の四段階評価)で及第点を与えた。

 2026年は、久保にとってキャリアの分岐点となるだろう。

夏には北中米ワールドカップが待っている。日本代表のエースとしての活躍が期待される。

 もっとも、まずはラ・レアル(レアル・ソシエダ)でシーズン残り半分をどう戦うか。そこが最重要であり、地に足をつけたプレーで全力集中する姿勢が必要になるだろう(移籍云々は一切、封印すべきだ)。チーム再建に関わるプレーができれば、自ずと進むべき道は開ける。

 その意味で、満点に近い今年初戦だったと言える。

 久保は4-4-2の右アタッカーで先発し、序盤は苦しい形でボールを受けることが多く、イタリア代表左サイドバックのルッジェーリ、スロバキア代表センターバックのハンツコで組んだ守備ラインを崩せなかった。

【久保が右サイドで起こした波動】

 しかし39分、スローインでボールを受けると、立ちふさがったコケをはがして一気に加速。ルッジェーリを置き去りにし、奥深くを取ってマイナスのクロスで決定機を演出し、敵陣にパニックを引き起こす。

 43分、ルッジェーリはカウンターで久保に前に入られて焦り、後ろから引き倒し、イエローカードを食らう。これでギリギリのディフェンスができなくなってしまった。ディエゴ・シメオネ監督はすかさず動き、ルッジェーリを前半で下げると、ハンツコをセンターバックから左サイドバックに移したが、全体的に守勢に回ってしまったのである。

 久保が右サイドで起こした波動が、戦局を優位に動かした。

 ラ・レアルは先制を許したものの、久保は右サイドからのカウンターで輝く。味方がFKのボールを弾き返すと、ブライス・メンデスが右に流したパスを受けた久保は、ドリブルで一気に相手ゴール前へ。マーカーを引っ張るオヤルサバルをおとりにしながら、左ファーでフリーになったゲデスに左アウトサイドで横パス。ゲデスは冷静に右足を振ってゴールネットを揺らした。

 その後も、久保はゴールに迫っている。ビルドアップにもたつくアトレティコをはめ込むと、ブライス・メンデスからのパスを受けると、左足でゴール正面から右隅へコントロールショット。完璧に見えたが、やや距離があったこともあり、名手ヤン・オブラクに防がれてしまった。

 終盤には、今度は久保が自らボールを奪い、オヤルサバルとのパス交換から切り込んで左足でゴールを狙っている。これもオブラクの牙城は崩せなかったが、世界一流の攻防戦は見物で、これはワールドカップにもつながるような風景かもしれない。

「インスパイアされた久保は、走り、発明し、役を務めた!」

 スペイン大手スポーツ紙『アス』の久保評も興奮気味で、絶賛に近かった。

 この日の久保だったら、世界のどこのチームが相手でも脅威となるだろう。

右サイドを蹂躙する久保をひとりで止められるディフェンダーは皆無に等しい。いくら屈強でも、激しく守ってくるからこそ、イエローカード1枚で動きを封じられる。90分を戦うなかで、久保は相手をひれ伏させる。そこまでの逞しさ、ふてぶてしさを持ったアタッカーは、日本人では稀有と言える。

 現状、森保一監督が率いる日本代表での久保は、シャドー(トップ下)で起用される公算が高い。しかし、フォーメーションやポジションにかかわらず、相手にとっては久保のような選手がいることは災厄に近い。いるだけで災いが降りかかってくるような怖さがあるのだ。そうした心理的アドバンテージを生かすような戦い方を、指揮官が見つけることができれば......。

 ともあれ、久保が本来のプレーで2026年をスタートさせたことは、日本代表にとっても福音と言えるだろう。

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