ミラノ・コルティナ五輪 フィギュアスケート展望 女子編

坂本花織の「銀メダル以上」に立ちはだかるアメリカの世界女王と...の画像はこちら >>

【坂本花織を成長させた「意味のある負け」】

 現役ラストシーズンの大舞台、ミラノ・コルティナ五輪に向け「個人と団体でともに銀メダル以上」との目標を宣言している坂本花織(シスメックス)。

 例年よりスロースタートだった今季、6試合を終えて1位3回で2位2回、3位1回と、坂本としてはやや不安定な結果になっているが、敗れた試合も本人は「意味があるもの」と捉え、次へのステップにしてきた。

 シーズン初戦となった9月のチャレンジャーシリーズ(CS)木下グループ杯では「マイペースで練習をしすぎた」と、ミスが出て203.64点で、千葉百音(木下グループ)に13点弱の大差をつけられる2位だった。

GPシリーズ・フランス大会では224.23点に上げたが、シニアデビューの中井亜美(TOKIOインカラミ)が227.08点を出し、2位に終わった。

「ハイレベルすぎだと思ったけど、シーズン序盤に220点台で勝てない経験ができたのは自分にとってもすごく大事だった。自分が2位になる時は本当に意味のあることが多い。取りこぼしもあったので、『気を抜いている場合とちゃうぞ』と気持ちが引き締まりました」

 こう話す坂本は、11月のNHK杯ではスピンの取りこぼしをしっかりと修正。ジャンプはショートプログラム(SP)、フリーともにわずかなミスが1本ずつあったが、合計は今季世界最高得点となる227.18点にして優勝した。

 その後のGPファイナルは試合へ向かう気持ちをうまくコントロールしきれず、SPで3回転ルッツが2回転になる想定外のミスがあって出遅れ、フリーで追い上げたが総合3位にとどまった。だが、全日本選手権では、ジャンプの課題を残しながらも、合計を234.36点にして優勝。精神力の強さを見せた。

【ハイスコアを持つ世界のライバルたち】

 銀メダル以上を狙う五輪で、坂本のライバルとなるのは今回、中立国枠で出場してくるロシアのアデリア・ペトロシャンと、2025年世界女王で今季GPファイナル優勝のアリサ・リュウ(アメリカ)になるだろう。18歳ながらロシア選手権3連覇中のペトロシャンはトリプルアクセルと4回転ルッツ、4回転トーループを跳び、2024年ロシア選手権は262.92点の高得点を出している。

 だが今季のロシア選手権はトリプルアクセルを入れたSPは86.52点で、フリーでは4回転ルッツと4回転トーループがミスになり合計235.95点だった。また、ミラノ・コルティナ五輪最終予選では1位になったものの、大技を封印し、安全策を取って209.63点にとどまった。

 五輪では彼女がどんな演技をし、ジャッジがどう評価するかという点が注目されるが、初めて経験する世界の大舞台で緊張感もあるだけに、坂本にもつけ入る隙が出てくる可能性もある。

 一方、リュウも自己最高得点は3シーズンぶりに復帰した昨季の世界国別対抗戦の226.67点だが、まだまだポテンシャルがある。昨季の世界選手権や今季のGPファイナルを制した強さとともに、GPファイナル後に映像を公開したトリプルアクセルを大舞台で使ってくるか、見どころになってくる。

【中井亜美、千葉百音にもメダルの可能性】

 順当にいけばこの3選手の表彰台争いになるだろうが、今季シニアデビューの中井もフランス大会で227.08点の高得点をマークしているだけメダルの可能性を秘めている。カナダ大会は203.09点で3位、全日本選手権は213.56点で4位とプレッシャーのあるなかで力を出しきれなかったが、GPファイナルは合計220.89点で2位と結果を引き寄せる力を持っている。

 初めての五輪のプレッシャーに、挑戦する気持ちで打ち勝てばメダル争いに加わることもできそうだ。

 2回目の出場だった昨季の世界選手権で3位になった千葉は、CS木下グループ杯で坂本を破って優勝したあとも、GPシリーズ2試合ともに217点台と安定感を見せて2勝。だが、ポイントランキング1位で進出したGPファイナルは、結果を求められる大きなプレッシャーのなか、SPは自己ベストの77.27点で1位発進しながら、フリーでは前半の2本のジャンプでミスをして総合5位に落とす悔しい結果になった。

 それでも2週間後の全日本は落ち込んだ気持ちを立て直して合計216.24点の3位になり、五輪代表の座を勝ち取った。

 千葉のGPファイナルの結果を見れば、前半の3回転ループと3回転サルコウがダウングレードの転倒となったなかでも合計210.22点というのは、実力がある証拠でもある。その2本のジャンプが自己ベストを出したカナダ大会と同じような出来にできれば、220点台中盤を出す力は持っている計算になる。

 GPファイナルで味わった屈辱と、そこから短期間で気持ちを立て直した全日本の経験で、精神面も強くなってきているはずだ。ひと皮剥けた姿を五輪でも存分に発揮すれば、中井とともに表彰台争いに食い込める可能性もある。

 ミラノ・コルティナ五輪のフィギュアスケートは、女子シングルが最終戦。その9日前に終わる団体戦でメダルを獲得して勢いをつくれれば、3人は上位争いを繰り広げられるはずだ。

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