東京ヴェルディ・アカデミーの実態
~プロで戦える選手が育つわけ(連載◆第29回)

Jリーグ発足以前から、プロで活躍する選手たちを次々に輩出してきた東京ヴェルディの育成組織。この連載では、その育成の秘密に迫っていく――。

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第28回◆プロ選手が育つ東京ヴェルティ・アカデミーの特徴>>

 かつて東京ヴェルディユースのキャプテンを務めた中野雅臣。思えば、いくつかのJクラブのアカデミーで練習に参加した小学校6年生の彼が、そこから東京ヴェルディを選んだのは、「サッカーが一番楽しかったから」。

 その後、中野は中学生になり、高校生になり、トップチームへと続く階段を上がっていくことになるのだが、小6の時に受けた印象が、大きく変わることはなかった。

 中野が語る。

「自分的にはもう、よみうりランドのクラブハウスにいられたこと自体が、人としても、選手としても、成長できる環境だったなっていうふうにはすごく思います。スタッフも選手も、たぶん一番サッカーを考えている人たちが、一番サッカーを楽しんでいる人たちが、そこに集まっていたと思うので。自分にはサッカーを楽しめる環境があったのでうまくなれた。もうそれが一番だったな、と思っています」

 ただし、中野が言う「サッカーを楽しむ」とは、言葉から受ける印象ほど和やかなものではない。本人の言葉を借りれば、「"本気で"サッカーを楽しんでいる人たちの集まり」。それがヴェルディというクラブだった。

「ただ楽しくボールを蹴っている、とかじゃなくて、真剣に相手の逆を取りにいって、負けたら本当にケンカみたいになるし(苦笑)。そういう雰囲気は、どこへ行ってもあまり感じられないものだったなって思います」

 はたして、サッカーを楽しめる環境に身を置いた中野は、順調に成長を続け、Jクラブのアカデミーに所属する選手なら誰もが夢見る、トップ昇格を実現させたのである。

「(トップ昇格を伝えられた時は)うれしいのはうれしいんですけど、でも危機感というか、覚悟というか、そういう気持ちのほうが大きかったですね。その(気持ちの)切り替えみたいなところは難しかったんですけど、『もうアカデミーじゃないんだ』『楽しいだけじゃないんだ』っていうところは強く意識しました」

 とはいえ、元をたどれば、中野にとって"Jクラブのアカデミーに入ること"イコール"プロを目指すこと"ではなかった。

「ヴェルディ(のアカデミー)に入ってから、その先にユースがあって、プロがあるっていう一貫した環境に身を置いたので、そこで意識するようにはなりましたけど、(小6の時に)ヴェルディに入るからプロを目指すみたいな感覚ではなかったです」

 だが、ヴェルディというクラブの雰囲気が、中野の気持ちを自然とプロへと向かわせたのは確かだろう。少なくともユースに上がる頃になると、「全員がギラギラして、絶対にトップに上がるぞ、と。(ユースチームの選手たちには)その選択肢しかなかったと思います」。

 中野が「今はもうだいぶ変わってきましたよね。大学出身は即戦力ですから」と語るように、今でこそ大学経由でプロになる選手も少なくない。ヴェルディでもDF谷口栄斗(今季、川崎フロンターレへ移籍)をはじめ、大学経由でトップチーム入りを果たすアカデミー出身選手が生まれている。

 しかし、中野の感覚で言えば、「当時は、トップに上がれなかった選手が(大学へ)行く、みたいなイメージ」だったという。

「最近になってそういう(大学経由でプロになる)選手が増えてきたと思いますけど、当時はあまり......、ヴェルディだったら、もういち早くプロで、っていう考えの人が多かったと思います。なので、そこは......、あまり考えたことがありませんでした」

 ヴェルディだったので――。中野が何度か繰り返したその言葉は、当時のユースチームが当然のようにトップ昇格を目指す集団であったことを物語っている。

(文中敬称略/つづく)◆東京Vユースの元主将にとって「ヴェルディっぽいな」はこれ以上ない誉め言葉だった>>

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