2025年12月、大阪ブルテオンはブラジルで行なわれた世界クラブ選手権に参戦し、前回大会王者ブラジルのサダ・クルゼイロを下すなど快進撃を続けた。準決勝ではポーランドの欧州代表ザヴィエルチェを下し、ファイナリストになった。

 帰国した直後の12月27日、大同生命SVリーグ。ブルテオンはサントリーサンバーズ大阪の本拠地で戦い、セットカウント3-1で敗れている。コンディションの悪さは誰の目にも明白だった。

「言い訳はしない」

 ブルテオンの指揮官であるトーマス・サムエルボヘッドコーチは潔く語ったが、ミゲル・ロペスなど主力を温存し、西田有志も2セット目の途中からはベンチに下げていた。

 それでも、チームは粘り強い守備のなかで、わずかながら勝機をつかみかけていた。控え選手たちの健闘も目立った。最後は流れを逃したが、世界2位となったブルテオンの底力は見せた。

 そのディフェンスの要こそ、リベロの山本智大だ。

 サントリー戦では、唯一奪った3セット目で、山本が才能の片鱗を見せている。

 3-3の場面だった。イゴール・クリュカの際どいサーブを完璧にレシーブ、Aパス(セッターの位置に正しく戻すパス)をセッターのアントワーヌ・ブリザールに返す。これによってアドバンテージを得たフランス代表ブリザールは、持ち前のトリッキーさでツーアタックを選択し、鮮やかに得点を決めている。

【男子バレー】山本智大が見せる世界ベストリベロの腕前 「対決...の画像はこちら >>
 山本は、サントリーの巨人ドミトリー・ムセルスキーの強烈なサーブに必死で体を投げ出す。エースを取られることもあった。しかし、そのたびに「次は止める」という気迫を漂わせた。世界クラブ選手権でベストリベロに選ばれた腕前は見せかけのものではない。その対決姿勢が、彼の技量を高める。

「いつも"打ってこい"っていう感じではいますね」

 インタビューで、山本に守りの美学について聞いたことがあった。

「どの試合でも、自分が拾ったら、"こいつ、次はどこ打つんだろう"って、それで(相手が焦って)アウトにしたら、自分の1点だなって。もちろん、拾えないスパイクを打とうとしてくる相手はいるし、このレベルに来ると、さすがに当たっている選手のスパイクを拾えないこともあるんですが、触ることはできるんで、触れたら"勝ち筋はあるかな"って。(リベロとして)世界トップには来たので、あとはどの試合でもコンスタントに力を出せるように......」

【経験を糧に受け身でレベルアップ】

 山本の守備力は、常に相手の気力、体力を削ぐ。「このアタックでは拾われるかもしれない」――そう疑わせることで、心理的なミスを誘発する。堅守の圧力だ。

 同時に、山本は常に味方を明るく盛り立てる。

リードを許していても、笑顔でチームを支えられる。成功を信じられるメンタルが周りに伝播し、福をもたらす。奇跡的なディグは専売特許だが、守備者としての落ち着きと寛容さこそが彼の異能だ。

――リベロというポジションの邂逅とは?

 インタビューで、山本のルーツに迫ったことがあった。

「最初からスパイクを結構拾えたので、"めちゃくちゃリベロいいな"って。レシーブには自信があったので、"いけるじゃん"って手ごたえがありました。練習だけでなく、試合でもいいパフォーマンスが出せて。(中学生時代に)埼玉県と試合をしたんですけど、その時、埼玉は準優勝でしたが、僕ら(北海道)は彼らに勝ったんですよ。中学校の日本代表の選手が4人もいたんですが、エース級の選手のスパイクを余裕でポンポン止めました。"これで日本代表か、いける"って」

 リベロになる運にも恵まれていた、ということか。

「運はありますが......。小1からバレーを始めて6年間、中学校と、父の教えで基礎練習ばかりやっていました。

基礎がないと応用がない。培われたものがあって、対応できるようになったと思います。自分の基盤は小中9年間で、レシーブの形を作って、ボール感覚を養ったことですかね。たとえば手で投げたボールを正面で取ったり、足を動かして膝と膝の間で受けたり、その型を徹底的に作り上げました」

 ボールを受ける日々により、リベロとして成熟してきた。ボールスポーツの守備者に共通して求められる資質は、失敗や敗北も含め、経験を糧に受け身でレベルアップできるかだ。攻撃者が創意工夫で能動的なのとは対照的だが、山本はまさにそうだった。

 リベロとしてゾーンに入ったときの山本は無双で、それは強大な敵との対決を触媒にして起こる。たとえば、ネーションズリーグで30年ぶりにブラジルを下した試合でのディグ連発は圧巻だった。また、パリ五輪のイタリア戦も、逆転負けはしたが、ワンハンドのディグなどは神がかっていた。

「ブラジル戦は、(ボールの軌道が)見えていました。"当たったら拾える"というゾーンに入っていたので、手に当たったら勝ちでしたね。同じフィーリングを感じる瞬間は他の試合でもあるんですが、ブラジル戦は"すべてを上げられる"っていうレベルで拾えていました。

ゾーンに入るきっかけは、まず相手が自分に打ってくることですかね? そうしないと(ボールを)拾えない。自分のところに打ってきてくれることプラス、味方ブロッカーがうまく自分のところへ飛ばしてくれること。ブロッカーとのコンビネーションは大事です」

 国際試合では、相手から「山本には打つな!」と指令が飛ぶことも珍しくない。それだけ畏怖されている。打ち込んで適応させてしまったら、呪いや災厄のように行く手を阻まれるのだ。

 2026年も、リベロ山本が展開するレシーブは、味方にとっては祈りたくなる代物になるだろう。

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