ジョルジーニョ ロングインタビュー/第4回(全4回)
選手として4年、監督として1年、日本で仕事をしたジョルジーニョは、自身の母国の代表チームから日本代表が初めて挙げた白星を讃えた。森保一監督が率いる日本を励まし、カルロ・アンチェロッティ監督が指揮を執るブラジルについては、今の状況を冷静に観察している。
――昨年10月に、日本とブラジルが親善試合で対戦し、日本が3−2で逆転勝利しました。この試合の感想は?
「もちろん公式戦ではなく、両チームともにテストの意味合いがあったとは言え、日本が初めてブラジルに勝ったことをすごく嬉しく思ったよ。僕は日本で4年間プレーし、1年間監督として仕事をした。そんな深い縁のある日本が今、あれほどの組織力や成熟度を備えるに至ったわけだ。そんな日本代表を見られて、幸せだったよ。
何よりも良かったのは、日本がブラジルと対戦する時に、自分たちを信じていたということ。僕はいつもこう言ってきた。日本に足りないのは、世界の強豪にも勝てると信じることだ、とね。
ブラジルの方は、昨年5月末にカルロ・アンチェロッティが監督に就任し、多くの新しい選手たちを招集し、さまざまなプレースタイルを試している段階だ。ただそれでも、ブラジルは強いチームなんだ。そんな伝統的な強豪国に、日本はセンセーショナルな逆転勝利を挙げた。選手全員が目を輝かせてチームのためにプレーし、実際、勝利に値する試合をしていたよ」
――ブラジルは今、チームを構築している最中ですが、何が必要でしょうか。
「アンチェロッティがチームのために、より良いフォーメーションを見つけることだと思う。彼にはあまり時間がないが、すばらしい監督であるうえに、人心掌握に長けた人物だ。だから、W杯までにやれると信じている。ベストな選手を招集し、より良いシステムを採用して磨きをかけ、選手たちとの関係を構築し、目標達成に向けて全員を集中させていくはずだ。
当然、簡単ではないよ。W杯を軸にしたひとつのサイクルのなかで、監督が3回も代わったんだから。2022年大会まで指揮を執ったチッチの後、暫定監督を務めたハモン・メネーゼス、フルミネンセと兼任したフェルナンド・ジニス、その後のドリヴァウ・ジュニオールがいて、アンチェロッティが4人目だ。代表監督は少なくとも4年間をかけて仕事をすることが理想なんだ」
【「日本の選手たちは勝負どころを心得ている」】
――アンチェロッティが就任するまで、ブラジル代表の問題はなんだったのでしょう。
「過去3人の監督人事のプロセスが間違っていた。ブラジルサッカー連盟は、当時の会長が監督を決めた後で、ディレクター陣と契約していたんだ。逆だよ。サッカーで長く仕事をしているディレクターたちが、きちんと分析して監督を決めるべきなんだ。
ジニスはクラブとブラジル代表の監督を兼任した。
ドリヴァウはクラブの監督として多くのタイトルを獲り続けている監督だ。本来なら必要な戦術を見出し、勝てるチームを作れるはずなんだけど、時間が足りなかった。それが代表チームなんだ。ただ、彼が世代交代のプロセスのなかで、代表経験のなかった多くの選手を初招集したのは大事なことだ。期待に応えた選手たちは、アンチェロッティのチームにも活かされていくことだろう」
――では、近年の日本の成長の鍵となったのは何だと思いますか?
「チーム力だ。僕が選手や監督として日本で仕事をしていた時は、いつでも日本人選手たちを戦術的により良くオーガナイズしようとしていた。Jリーグが開幕した1993年からの成長のプロセスがあって、今、モリヤス監督はすばらしい組織力を持つチームを、作り上げることができたんだ。
しかも強豪との対戦でも、攻撃的にプレーし、試合の主導権を握ろうとした。
それは長年、ひとりの監督を維持したことも大きいし、日本人監督であることも重要だ。文化、そして全ての選手のことを理解している」
――具体的には、どういうところを見て成長したと思いましたか?
「選手たちが、勝負どころを心得ているようだった。たとえば、落ち着いてボールをキープする時、カウンターアタックを仕掛ける時、スピードアップが必要な時、それぞれに正しく動いていた。ポジショニングにも経験が増したことを感じさせた。
2005年のコンフェデレーションカップでのブラジル対日本戦を思い出したよ。ジーコが監督を務めた日本は、高い技術力を活かし、ブラジルに攻撃を仕掛けてきた。ジーコは選手の創造性を発揮させるプレースタイルが好きだったからね。
ただ、犯してはいけないミスもいくつかあった。日本は技術力が高い選手が多いから、高揚して攻撃に出てしまい、オープンになり過ぎる傾向があった。
【「小さな可能性を掴んで、新たな目標を達成してほしい」】
――2015年には、ハビエル・アギーレ監督が解任されて、後任候補のひとりとしてあなたの名前が報道されたことがありましたね。あの頃の日本代表をどう見ていましたか?
「あの時期、日本はすでにW杯連続出場など、多くの伝統ある代表チームと肩を並べるところまで到達していた。ただ、もうワンランクアップするためには、日本独自のプレースタイルが必要だと感じていた。
だから監督は日本人か、そうでなければ、僕もそうだけど、日本でのプレーや指導の経験があり、勝者のメンタリティを持った外国人が良いと思っていた。なぜなら、選手は人間であり、感情も夢もある。問題を抱えたりもする。そういうことに同じ目線で気がつく人がいい。代表では一緒にいられる時間が短いからね。
だからこそ今、モリヤスの成功をすごく嬉しく思う。将来的にはオニキ(鬼木達)が代表を率いることも期待しているよ」
――最後にW杯イヤーの今、日本に伝えたいことはありますか?
「ブラジル戦の勝利は、大いに喜ぶべきことだ。だけど、それはあの日に置いておき、これからは新たなプロセスを構築していかなくてはならない。
簡単ではない。多くの国が優勝を目指して準備をしているんだから。たとえば、ブラジルは南米予選で連敗を経験した。以前なら誰も想像もしなかったことだ。でも、アンチェロッティと共に急ピッチで立て直し、栄光を取り戻す可能性も大いにある。前大会で、日本はドイツやスペインに勝ち、世界中を驚かせた。だけど、ドイツやスペインにもその後の4年間があり、周到に準備している。
W杯ではどんなに完璧な準備をしても、負ける可能性の方が高い。優勝するためのレシピなど、ないのだから。
(了)
>>> 【第1回へ戻る】選手、監督の双方で鹿島アントラーズに在籍したジョルジーニョが古巣の9年ぶりの優勝に祝辞「アリガトウゴザイマシタ!」

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