高丘陽平、MLSを語る(前編)
日本人ゴールキーパー、高丘陽平(29歳、バンクーバー・ホワイトキャップス)がMLS(メジャーリーグサッカー)挑戦3年目で成し遂げたことは偉業である。
MLSの2025年シーズン、高丘はリーグ最多のクリーンシートを記録し、オールスターに選出されている。
12月7日(現地時間)に行なわれたMLSカップ決勝では、年俸30億円の世界最高選手、リオネル・メッシを筆頭にスター揃いのインテル・マイアミと激戦を繰り広げている。
「誰もやったことがないことをしたい」彼はそう言って海を越えたが、有言実行だった。
高丘は、モダンなタイプのGKと言えるだろう。身長183cmと、現代のGKとしては小柄だが、広いエリアを守り、1対1での瞬発、爆発力に優れ、優れたポジショニングでアドバンテージを取り、フィールドプレーヤーのような足元の技巧で"プラスワン"になれる。同じ183cmのヤン・ゾマー(インテル)やダビド・ラヤ(アーセナル)が同系統か。
2022年、高丘は横浜F・マリノスでリーグ優勝を遂げ、ベストイレブンにも選ばれている。その地位は安泰だったが、自らの信条に従って行動した。そして挑戦を正解にしている。すでに1年半の契約を延長し、2026年シーズンもバンクーバーでプレーを続けるという。
異国で足跡を記す日本人GKに、MLSの3年目を振り返ってもらった。
――リーグ戦は34試合で38失点。チームはどの大会でも優勝を争い、北中米王者を決めるCONCACAFチャンピオンズカップではインテル・マイアミを撃破して決勝に進み、リーグは2位でプレーオフを勝ち進んで、MLSカップもファイナリストでした。守りだけでなく、攻撃の一歩目も任され、八面六臂の活躍でしたね。
「個人としても、チームとしても"納得感"のあるシーズンでした。監督がデンマーク人のイェスパー(・ソーレンセン)に代わって、攻撃も守備も落とし込みがあり、選手がやるべきことを理解していました。失点数を減らせたのは、周りが自分のパーソナリティを尊重してくれるようになって、力を出しやすくなりましたね。その環境を2年で作って、成果を出せた3年目でした」
【自分のよさが生きるスタイル】
――今シーズンのバンクーバーはハイラインで挑む攻撃的チームでした。その中心に日本人GKがいるのは誇らしかったです。
「ディフェンスラインは高く上げ、背後は自分がカバーする格好で。広いエリアをカバーするんですが、そのタスクはマリノス時代と似ていましたね。自分を信じて使ってくれたので楽しかったです。1、2年目はラインが低く、裏を守る仕事はなかったので、3年目は自分のよさが生きるスタイルでした」
――プレーオフ準々決勝のダラス戦は、ムサとの対決が見物でした。
「日本だったら、相手がトラップしたところを迷わず狙っていたと思います。でもMLSのアタッカーは選択肢が多いから、こっちも常にいくつか選択肢を用意する必要があって。ディフェンスも戻ってきていたし、もう一個引きつけてドリブルタッチしたところで勝負しようとしていたんです。でも、思ったよりタッチがでかくて......長いタッチを狙いつつ、引き込むことも狙って、半々で準備すべきでしたね」
――世界トップのアタッカーとの対峙で思考を重ねて、GKとしての厚みが増しました。それが出たのがPK戦で、ダラスが2本外しましたが、落ち着きを感じさせました。
「PK戦は"勝てる"と思っていました。ダラス戦はラストワンプレーで追いついたんですが、PKの前に(トーマス・)ミュラー(元ドイツ代表)がクーラーボックスの上に座り、『よく追いついた。まずはひと呼吸を置いて、PKは時間かけていいから。自信を持ったところにそれぞれ蹴れ』って、監督のように喋っていた。その光景を眺めながら、なぜか"勝った"という確信があって、精神的優位に立てました。よくない時は、頭の中に"絶対に止めないと"という思いがぐるぐるするのが、あの時はクリアで無に近い状態でした。
【とにかく喋るトーマス・ミュラー】
――シーズン途中で入ったミュラーはいきなり得点を量産しましたが、やはり格が違いましたか?
「ミュラーは溶け込むだけじゃなくて、コンペティター(競争者)で、(36歳ながら)"まだまだ戦っている"と感じました。初日の練習から誰よりも声を出し、味方を鼓舞して、プレッシングに行くときは隣に指示出しながら......。チームにとってプラス要素しかなかったです。『空間認知者』という異名だそうですが、本当にそのとおりでした。
どこに立てばボールがうまく運べるか、自分が動いて味方に入ってもらう、というのを常に喋りながらやる。たとえば右センターバックに『もっと運んでこい』と檄を飛ばし、ウイングに『中に入れ』と指示し、自分はクロスして。プレッシングも周りとつながり、9番、ボランチ、ウイングと喋りながらするので、彼のように空間を意識し続けて動ける選手は初めてでしたね」
――プレーオフ準決勝、ロサンゼルスFC戦はソン・フンミンやロリスもいる相手で、これまでも立ちはだかってきた強豪です。
「バンクーバーは2023、24年と2年連続プレーオフで、ロサンゼルスFCに負けて勝ち進めませんでした。だから、負けるわけにはいかなくて。延長戦でひとり退場し、もうひとりがケガで続行不可能で9人になったんですが、僕は"大丈夫"と思っていました。危ないシーンはあっても慌てず、延長後半も9人で乗りきり......PK戦は相手GKもロリスでしたが、勝ったなと」
――またも相手が2本外し、PK戦で勝利を勝ち取りました。
「MLSに来て、PKの場数を踏めているのはありますね。プレーオフもそうだし、夏に開催されるリーグスカップも、90分で同点だとPKで、いろいろ試し、準備ができました。PKは、それに至る状況をどう作るか。サッカーは生ものなので、試合前の準備から試合の内容へと変化するなか、何を感じるか。そこで勝てると感じられるか、ですが、個人的に自信になっています」
――プレーオフ西地区決勝では、サンディエゴのロサノに一撃を食らいましたが、追撃を許さずに3-1で下し、見事に優勝しました。
「90分をとおしてパフォーマンスがよく、前半で3-0と圧倒できました。サンディエゴは前から来るチームで、パスではがせて......それでリズムをつかんだというよりは、どう転んでもいいように捉えられるようになりました。たとえ失敗しても修正すればいいわけで、脳内で都合よくいいほうに書き換えられるようになったというか(笑)」
――ただ、MLSの頂点を決めるカップ戦決勝、インテル・マイアミ戦ではメッシの凄みを感じました。
「メッシにしか見えない風景があって、自分も感じようとしたのですが......」
(つづく)
高丘陽平(たかおか・ようへい)
1996年、神奈川県生まれ。横浜FCジュニアユース、ユースを経て、2014年、トップチームに昇格。その後、サガン鳥栖、横浜F・マリノスを経て、2023年、MLSのバンクーバー・ホワイトキャップスに移籍。3シーズン目となる2025年は、MLSの頂点を決めるMLSカップ準優勝に貢献した。

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