高丘陽平、MLSを語る(後編)

 高丘陽平(バンクーバー・ホワイトキャップス)は、3シーズンに渡ってMLS(メジャーリーグサッカー)で戦っている。

 アメリカ、カナダを本拠とするMLSは、多国籍リーグである色合いが非常に強い。

たとえばバンクーバーの場合、カナダ、アメリカ、ベルギー、メキシコ、パラグアイ、ペルー、スコットランド、ドイツ、ウルグアイ、そして日本人選手が一同に集う。監督はデンマーク人だ。

 各チームには各国の代表級選手が名を連ねており、リオネル・メッシ(インテル・マイアミ)は看板と言えるだろう。他にもジョルディ・アルバ、セルヒオ・ブスケツ(インテル・マイアミ、ともに2025年で引退)、ルイス・スアレス、ロドリゴ・デ・パウル(インテル・マイアミ)、トーマス・ミュラー(バンクーバー)、ソン・フンミン、ウーゴ・ロリス(ロサンゼルスFC)、リキ・プッチ、吉田麻也、山根視来(ロサンゼルス・ギャラクシー)、クリスティアン・ベンテケ(DCユナイテッド、2025年で退団)など錚々たるメンバーだ。

 MLSはリーグ主導でクラブが存在している。つまり、選手が契約を結ぶ相手もMLSとなる。本社があり、支社がある感覚か。財政面は、サラリーキャップ制度でコントロールされている。

 選手の平均年俸は約8000万円から1億円とされ、ヨーロッパのトップリーグと同等だろう。J1リーグ(平均約3000~4000万円とされる)と比べると、少なくとも倍以上は高い。DP(特別指定選手の制度。各チーム3選手まで)では、メッシのように年俸30億円の選手も抱えられる。

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 好条件だけに、世界中の猛者が集まってきて、必然的にリーグのレベルも高くなる。北中米ワールドカップ開催を2026年に控え、人気も高まりつつある。サウジアラビアのようにオイルマネーで選手を獲得するだけでなく、MLSではスタジアムでサッカー熱を感じられるからだ。

【オールスターへはプライベートジェットで】

「日本代表に入ってワールドカップでプレーする。それもバンクーバーに移籍した大きな動機でした。現状では代表に選ばれていないし、大会半年前でチームも固まって難しいと思いますが、諦めるつもりはないです。引退するまでは、自分の力のすべてを注いで、やり続けるだけで」

 高丘は決然と言う。昨年の日本代表の北米遠征では、メキシコ戦を観戦した。じりじりとした展開で、自分が入ったらどうするか、イメージをした。仮説を立て、実行するのがプレーの改善につながる―――。それはMLSで、高丘が日々やっていることだ。

――MLSは全体として高給です。欧州のトップリーグにも引けを取らない。

「平均年俸はわからないですが、自分のチームの主力の平均は1億円から1億5000万円くらい。自分の年俸も報道されていましたが、その間ですね(笑)」

――とにかく待遇がよく、選手の移動は専用機だとか?

「MLSが飛行機会社と提携しているので、どのチームも専用機ですね。選手と関係者だけのプライベート空間で、それぞれが勝手に過ごしています。ラテン系の選手は後部座席でスピーカーからガンガンと音楽を流し、踊っています。前のほうは、CAさんも誘ってトランプで遊ぶ。今年は人狼ゲームも流行っていました。自分は寝ていることが多いですね。フルフラットで横になり、足も伸ばして寝られるので。体が固まったら立ってストレッチして......」

――大陸間を移動するので、移動時間は長そうです。

「バンクーバーからだと、マイアミが一番遠いですね。6時間半かかり、3時間の時差。移動で1日が潰れちゃいます。

でも、行きは簡単な税関審査だけで、帰りは試合が終わったらバスに乗って空港で飛行機に横づけ、パスポートチェックだけで乗り込めるので、移動距離は大変ですけど、ルートは整理されているからストレスがありません。

 オールスターに選出された時は、チームがプライベートジェットを用意してくれましたよ。4人が選ばれて、試合があったサンディエゴから開催地のオースティンに飛び、終わってから中二日のホームゲームだったので、バンクーバーに戻ってきました。8人乗りのジェットは贅沢でしたね」

【GKの能力を上げてくれたアタッカー】

――選手もセレブ生活を送っているんですか?

「ピンキリですね。パラグアイ代表MFのアンドレ・クバスは、バスケットコートもある広い家に住んでいます。でも、普通のマンションの選手も多いですし、自分もそうです」

――実はJリーガーのほうが高級車志向は強いとか......。

「そうなんですよ。ゲレンデ(ベンツ)に乗っている選手とかはいない(笑)。稼いでいるのに、車の使い方は実用的ですね」

――平均観客動員数は1試合約2万5000人で、スタジアムの様子も盛り上がっています。

「最後のホームゲームは5万4000人が入っていました。バンクーバーに在籍して3年間、一番結果が出たこともあって、熱が上がってきているのを感じます。ワールドカップの開催都市になったのもあるでしょうけど、チームが強かったことで"町全体で応援しよう"というのを感じました」

――バンクーバーは多国籍軍ですが、チームワークに優れていた印象です。

基本の会話は英語ですか?

「そうですね。みんなが流ちょうに喋れるわけではないですが、たとえば滋賀生まれでペルー代表のケンジ(・カブレラ)は、英語が得意ではなくても単語で会話するし、強い"生きる力"を感じます。そういう選手が生き残るんだと思います。パーソナリティのある選手が揃っているし、違う方向を向く選手はいません。みんな家族ぐるみの付き合いで、イタリアンを一緒に食べに行ったあと、クラブやバーに行くなど、仲はいいですよ」

――GKとして、対峙したことで能力を上げてくれたアタッカーはいますか?

「(デニス・)ブアンガ(ロサンゼルスFC所属のガボン代表FW、2023年MLS得点王)には何点もぶち込まれているんで......前を向いてドリブルし、直線的にゴールに迫る怖さはありますね。ゾーンに入った時の彼は止められない。右も左もパンチあるキックが蹴れて、日本ではニア上を決められることはほぼなかったんですが、彼には決められています。過去の試合で受けたことのないシュートが来る、というのは対応が必要で、どう止めようか考えさせてくれる選手ですよ」

――最後に、MLS挑戦の果てにどんな風景を見たいですか?

「ベストは(1年半の)契約が終わっての欧州挑戦ですけど、MLSで他のチームを探す選択肢もあります。"やりたい"って思える挑戦をしたいですね。たとえば日本人GKとしてチャンピオンズリーグに出たい。まだやっていないことだと思うので、プレミアリーグのようなトップリーグでもプレーしたいですね。MLSで、自分イコール日本人GKのイメージを作れました。

他の場所でどう評価されるか、その挑戦はしたいですね」

高丘陽平(たかおか・ようへい)
1996年、神奈川県生まれ。横浜FCジュニアユース、ユースを経て、2014年、トップチームに昇格。その後、サガン鳥栖、横浜F・マリノスを経て、2023年、MLSのバンクーバー・ホワイトキャップスに移籍。3シーズン目となる2025年は、MLSの頂点を決めるMLSカップ準優勝に貢献した。

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