昨季のチャンピオンズリーグ(CL)決勝は、パリ・サンジェルマン(PSG)対インテルの一戦だった。準決勝の敗者がバルセロナとアーセナルの2チームで、準々決勝の敗者はアストン・ビラ、レアル・マドリード、ドルトムント、バイエルンの4チームだった。

 一方、昨季のリーグフェーズの上位8チームは以下の順で並んでいた。リバプール、バルセロナ、アーセナル、インテル、アトレティコ・マドリード、レバークーゼン、リール、アストン・ビラ。

 両方に名を連ねるインテル、バルセロナ、アーセナル、アストン・ビラの4チームは、年間を通じて高位で安定した戦いをしたことを意味する。

 最も波があったチームは優勝したPSGだった。リーグフェーズの5節まで成績は1勝1分け3敗。プレーオフに出場できる24位以内にも入れずにいた。そこから3連勝を飾り、グループリーグを15位で通過した時も、このチームが優勝するとは想像できなかった。しかも決勝に関しては圧倒的な力での優勝だった。CLを初年度(1992-93シーズン)から見てきた筆者だが、昨季のPSGほど圧倒的な力で優勝したチームはない。

 昨季から導入された新しいレギュレーションを最も有効に使ったチームとも言える。リーグフェーズで全36チーム中、24位以内に入っていれば、何とかなる。勝ち点12を奪っておけば最低でもプレーオフに進出できると割りきれば、CLのリーグフェーズをテストの場に充てることもできる。

大きなクラブであれば泰然自若に構えることができる。

 昨季、PSGがチーム力を途中から上げた原因は大きく言えば2つある。デジレ・ドゥエ(フランス代表)の台頭と、フビチャ・クバラツヘリア(ジョージア代表)を冬の移籍市場でナポリから獲得したことにある。これで攻撃の破壊力がグッと増した。

 リーグフェーズを1位で抜けたリバプールは、そのPSGと決勝トーナメント1回戦で激突。試合は延長PKとなる接戦となった。敗れたリバプールは損をした気分を味わったのではないか。その後のPSGの快進撃を見ながら、リーグフェーズを1位抜けしたことを後悔していたかもしれない。新レギュレーションに従えば、リーグフェーズを好成績で通過するメリットはあまりない。

【優勝の順番が回ってきそうなアーセナル、バイエルン】

 にもかかわらず、今季、アーセナルは首位を快調に走っている。これまで唯一、6戦全勝を飾っている。国内リーグでも首位を行く。アーセナル強し。

欧州にはそんなムードが漂っている。

チャンピオンズリーグ優勝戦線を占う アーセナルかバイエルンか...の画像はこちら >>
 これは一昨季までのグループリーグにはなかった傾向だ。グループが横並びしている状態では突出感は出にくいからだ。アーセナルには昨季のリバプールと同じ匂いを覚える。16強の決勝トーナメントを前にした段階で、アーセナルは標的になりやすい立場に身を置くことになった。

 一方で長い目で見ると、そろそろアーセナルに順番が回ってきそうな機会が訪れているようにも見える。欧州のビッグクラブの立場に身を置くようになっておよそ30年。しかし、アーセナルは欧州一の座に一度も就いていない。チームにどことなく漂うサッカーの甘さを指摘する声もあるが、運に恵まれていないという見方は十分にできる。今季あたりは天の配剤に恵まれる番であるような気もする。

 MFマルティン・スビメンディ(スペイン代表)、CFビクトル・ギェケレシュ(スウェーデン代表)、右ウイングのノニ・マドゥエケ(イングランド代表)などの獲得で、選手層が厚くなったことは確かである。ペースをシーズン終盤まで維持する持久力はついている。

 そのアーセナルに次いで、リーグフェーズで現在2位につくバイエルンにも、そろそろ順番が回ってきてもおかしくない好ムードを感じる。

 ここ数年のバイエルンはどこか単調だった。大きな選手の身体能力に頼る、ドイツらしいサッカーに傾き、巧緻性、俊敏性に欠けた。他のビッグクラブに比べ、バランスという点で劣っていた。

 そこに17歳のレナト・カール(U-17ドイツ代表)が現れた。1トップ下あるいは右ウイングのポジションで、縦横無尽の動きを見せる168センチの小兵だ。繊細さと大胆さを兼ね備えた、最近のドイツには珍しい牛若丸的なテクニシャンである。

【PSGは敗れて強し】

 かつてはドイツにも、ピエール・リトバルスキー、トーマス・へスラー、オラフ・トーンなど、小柄なテクニシャンは存在した。2014年ブラジルワールドカップで優勝した時のキャプテン、フィリップ・ラームもそこに加えることができる。だが、最近は大型化が進むばかりになっていた。たとえば最近までケガで戦列を離れていた10番のジャマル・ムシアラ(ドイツ代表)。テクニシャンではあるが、身長は184センチと大きく、すばしっこさに欠けた。

ラテン選手に備わるいい意味での狡さにも欠けた。

 それだけにカールが新鮮に見える。まさに見ていて楽しい17歳。バイエルンは、そろそろではないかと言いたくなる理由だ。

 しかし、真の底力を感じるのはやはり昨季の覇者PSGだ。決勝でインテルを5-0のスコアでねじ伏せた時、来季もPSGの時代は続くと見たが、いまもその思いに変化はない。

 PSGは今季、リーグフェーズ第4節でバイエルンに1-2のスコアで敗れている。どこかで見た光景に似ていると思ったら、昨季の一戦だった。両チームは昨季もリーグフェーズ第5節で対戦していて、結果は1-0でバイエルンの勝利だった。

 その試合、いっぱいいっぱいの戦いに見えたバイエルンに対し、PSGには余力を感じた。敗れてなお強し。次に勝つのはPSGと言いたくなる終わり方だった。

その余裕を具体的に言えば、ウイングの駒の多さだ。両ウイングに常に強力なウインガーを配置できる。それは現代サッカーにおいては、プレスが常に高い位置からかかりやすいことと同義語なのだ。守備力の低いウインガーはいまや少数派だ。

 イギリスのブックメーカー各社の優勝予想では、アーセナル、バイエルン、マンチェスター・シティ、PSG、バルセロナ、レアル・マドリード、リバプール、インテルの順で並ぶ。

 PSGは4番手と低めだが、それだけに狙い目となる。バルセロナとレアル・マドリードのスペイン勢は、国内リーグにかつてのような勢いがないことが足枷になっている気がしてならない。格や威厳が失われつつあるように見える。

 2月2日まで開いている移籍市場にも注目したい。このタイミングで誰を獲得するか。獲得した選手がはまれば、チーム力は上昇する。第2のクバラツヘリアは現れるのか。

 CL決勝は5月30日。そしてそのわずか12日後の6月11日には2026年ワールドカップが開幕する。ワールドカップ観戦を楽しむためにも、CLはその予習となるはずだ。

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