【苦境を乗り越え成長】

 卓球の日本一を決める「天皇杯・皇后杯2026年卓球全日本選手権大会」のシングルスが、1月20日から25日にかけて東京体育館で行なわれる。昨年に続き、ダブルスは翌週の1月29日から2月1日まで愛知県のスカイホール豊田で分離開催されるが、先駆けて行なわれるシングルスの戦いに注目が集まる。

 男子シングルスの優勝候補は、3度目の戴冠を狙う張本智和(トヨタ自動車)。

張本は2025年、紆余曲折を経ながらも国際大会でふたつの大きなタイトルを奪うなど、日本のエースとして奮闘した。22歳を迎えた張本は、2026年最初の山場である全日本選手権でどのようなパフォーマンスを見せるのか。

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 張本にとって2025年は、苦しみと喜びが交錯する激動のシーズンとなった。

カタール・ドーハで行なわれた5月の世界卓球(個人戦)では、シングルスで自身初のメダルを狙ったが、3回戦で戸上隼輔(井村屋グループ)と対戦。"同士討ち"となり、1ー4で敗れた。さらに同大会のダブルスでも3回戦で敗れ、男子ダブルスの日本勢で64年ぶりに金メダルを獲得した戸上・篠塚大登(愛工大)ペアに主役の座を譲った。

 11月から12月にかけて中国・成都で行なわれた「ITTF混合団体ワールドカップ(W杯)」は、開催中に入場時に名前がコールされないハプニング(運営側のミスによるもので、選手および日本卓球協会には謝罪あり)や、ライバル国のファンからの激しいブーイングにも見舞われ、それを日中両国のメディアが報じるなど物議を醸した。張本は大会後、「今大会で受けたことは忘れるつもりはない」と語り、コート外でも"敵"と戦う日々を過ごした。

 それでも、さまざまな重圧を背負いながら、日本の中心選手として最前線に立ち続けた。8月に初の日本開催となった「WTTチャンピオンズ横浜」では決勝に進出。8連敗中だった世界王者・王楚欽(中国)に対し、得意のチキータを封印する秘策で流れを掴み、4ー2で初優勝を飾った。

 さらに、10月のアジア選手権(団体戦)準決勝では中国と激闘を繰り広げ、銅メダル獲得に貢献した。

張本は2025年、中国のトップ3選手(王楚欽、林詩棟、梁靖崑)すべてに勝利しており、その手応えを次のように語っている。

「林詩棟選手には6:4くらいの接戦で、梁靖崑選手とは『勝った・負けた』という戦いを繰り返すなかで、五分の勝負になってきた。今後、王楚欽選手以外には、胸を張って『勝てる』と思いながら戦っていける、と感じたのは収穫です」

【2026年の初戦を制して全日本選手権へ】

 そして、2026年への弾みとなるタイトルを手にしたのが、12月の「WTTファイナルズ香港」だ。過去3度、決勝で敗れていた張本だが、この大会でも決勝に進出。パリ五輪シングルス銀メダリスト、トルルス・モーレゴード(スウェーデン)との一戦では、相手の鋭い両ハンドやカットブロックといった変則的なプレーを見事に読み切り、4ー2の勝利で"4度目の正直"を成し遂げた。

 コート内外で苦境を味わいながらも、それを跳ね返し、最後は結果で自身の価値を証明した張本。常に寄り添ってくれるファンの気持ちも背負いながら、2026年への誓いを語った。

「感謝の気持ちが一番大きいです。会場に来てくださった方も、配信をご覧くださったみなさんも、どんな時でも応援してくれる。僕がもっともっと優勝して、みなさんの人生を豊かにできるように頑張るので、これからも応援してもらえたらうれしいです」

 2026年シーズン、張本は最初の公式戦となった「WTTチャンピオンズ・ドーハ」準々決勝で、パリ五輪シングルス銅メダリスト、フェリックス・ルブラン(フランス)を下してベスト4に進出。好調な滑り出しを切った。そして迎えるのは、2018年、2024年に続く3度目のシングルス優勝を狙う全日本選手権である。

 世界ランキング5位で日本男子トップをキープする張本は、当然、優勝候補と目されている。

しかし、歴代王者たちがその前に立ちはだかる。

 対抗馬のひとりは、松島輝空(まつしま・そら/木下グループ)。昨年の全日本では、準決勝で張本、決勝で篠塚を下し、17歳にして全日本王者に輝いた。

 その勢いを維持した松島は、2025年の後半にポテンシャルを開花させ、「WTTチャンピオンズ・モンペリエ」で準優勝。「WTTチャンピオンズ・フランクフルト」では優勝を果たし、世界ランキングを8位まで押し上げた。課題だったフォアハンドの強化を図り、精神面でも成長を見せている。連覇を狙うサウスポーが、進化の跡を全日本の舞台で示せるか注目だ。

【歴代王者たちを倒し、再び頂点へ】

 さらに、2022年、23年の全日本王者である戸上は、ドイツ・ブンデスリーガでの武者修行を経て、昨年の世界卓球のシングルスでベスト8に入るなど、たくましさを増した。2025年3月に就任した元日本代表・上田仁コーチの指導のもと、台上技術やレシーブに磨きをかけ、総合力を高めている。昨年の全日本は谷垣佑真(愛工大)に敗れて5回戦で姿を消したが、力をつけた今年は、張本や松島とともに優勝争いを繰り広げるだろう。

 張本は、昨年に準決勝で敗れた松島に加え、戸上とは2023年、24年大会の決勝で対戦し、1勝1敗で優勝を分け合うなど、男子トップ3の一角として激しい争いを繰り広げてきた。そんななか、10月のTリーグの試合後、全日本の王者だけが持つ"特別な存在感"についてこう語った。

「全日本のチャンピオンというのは、すべての選手にとって"世界を目指すためのスタート"。そこに立てるのは、全日本のチャンピオンだけ。松島選手の前には戸上選手、宇田(幸矢)選手、及川(瑞基)選手がいましたが、優勝はゴールではなく、世界に挑戦するための権利を得られる場所。一度勝てば、10回も優勝した水谷(隼)さんのように、あとは積み上げていくことが目標です」

 今回の全日本の組み合わせでは、順当に勝ち上がれば張本と松島が準決勝で対戦するドローとなっている。昨年は、張本が松島のフォアハンドに押し込まれる場面が目立ち、1ー4で敗れてそのまま優勝をさらわれた。

 経験を積み、世界トップ10入りを果たした松島は、日本代表でも中心選手へと進化を遂げている。もし両者の対戦が実現すれば、今大会で最大のビッグマッチとなるだろう。それを突破した先に待つのは、戸上なのか、それとも......。

 22歳となり、経験を積んだ張本は、2026年最初の山場である全日本選手権でどのようなパフォーマンスを見せるのか。優勝争いの行方に注目が集まる。

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