全日本卓球シングルス 女子

【張本が過去2年、あと一歩届かなかった頂点へ】

 卓球の日本一を決める「天皇杯・皇后杯2026年卓球全日本選手権大会」のシングルスが、1月20日から25日にかけて東京体育館で行なわれた。
 
 女子は大会開幕時点で世界ランキングトップ15に6選手が名を連ね、歴代屈指のハイレベルな争いが予想された。そんな大会で初優勝を果たしたのは張本美和(木下グループ)。

過去2年、決勝の舞台で涙を飲んできた17歳が、ライバルたちとの厳しい戦いを制して悲願のタイトルを手にした。

【女子卓球】張本美和が「3度目の正直」で早田ひなを下し、全日...の画像はこちら >>

 相手との攻防に勝利しただけでなく、悔しさを味わってきた張本が自分自身との勝負にも打ち勝った末の優勝だった。

 張本は2023年から2024年にかけて日本女子卓球界の新星として台頭し、16歳で出場したパリ五輪では女子団体の銀メダル獲得に貢献。その後も順調に成長曲線を描き、パリ五輪後は日本女子のエース格へと成長した。世界ランキングでも、日本人選手のなかで最高位をキープし続けてきた(大会開幕時は世界ランキング7位)。

 2028年のロサンゼルス五輪でも活躍が期待される張本だが、順調に見えるキャリアのなかで手にできていなかった称号が「全日本王者」だった。過去2年は決勝に進出したものの、いずれも早田ひな(日本生命)に0-4で敗れた。

"3度目の正直"を誓って臨んだ今年の全日本では、まずジュニアの部で、石川佳純以来となる4連覇を達成。並行して出場した一般の部も安定した内容で勝ち上がり、終盤へと駒を進めた。
 
 そこで待ち受けていたのは、国際大会でも活躍を続ける日本女子屈指のタレントたちだ。

 準々決勝では、世界ランキング14位の長﨑美柚(木下アビエル神奈川)と対戦。主導権を握られる時間帯もあったが、試合の中で修正を重ね、4-1で勝利を収めた。

さらに準決勝では、6回戦で伊藤美誠(スターツ)を下して勝ち上がった横井咲桜(ミキハウス)とフルゲームにもつれる激戦に。苦しい展開を跳ね返し、逆転で決勝進出を決めた。

【追い詰められた女王・早田が見せた底力】

 そして、3年連続で同じ顔合わせとなった早田との最終決戦。女子では小山ちれ(1992年から1997年/6連覇)以来、史上4人目となる全日本4連覇の偉業を目指した早田も"女王"にふさわしい勝ち上がりを見せ、準決勝で木原美悠(トップおとめピンポンズ名古屋)を4-2で退けて決勝にたどり着いた。

 この日の決勝は、過去2年と異なる展開になった。第1ゲームこそ、早田が終盤の連続ポイントで7-11と先取したものの、第2ゲームでは張本が序盤から6連続ポイントを奪い、11-2で奪取。巻き込みサービスや投げ上げサービスなど、サーブの種類を次々に変えて戦術転換を図る早田だが、張本はそれに対応。第3ゲームも11ー9で奪ってさらに流れを引き寄せた。

 過去2度の決勝では早田に長所を消された張本だが、この試合では先手を取る強気の姿勢が随所に見られた。第4ゲーム、7-6と早田に1点差に迫られた場面でタイムアウトを要求。父である張本宇コーチの助言を受けてコートに戻ると、早田のフォア前へのサービスに対し、迷いなくフォアハンドを振り抜いた。そこから連続ポイントでゲームをモノにしたが、その一打は試合を象徴するようなポイントだった。

 だが、早田も底力を見せる。

強烈なフォアハンドやチキータなど多彩なレシーブを駆使し、5-11で第5ゲームを奪取。続く第6ゲームは、張本が伝家の宝刀であるYGサービスを効果的に使い、10-6とチャンピオンシップポイントを握るも、そこから早田が圧巻の6連続ポイントで逆転。五輪や世界卓球など、数々の修羅場をくぐり抜けてきた早田の極限でのプレーは、会場に漂い始めていた"張本美和の初優勝"という空気を変えるに十分な迫力だった。

 しかし張本は、それに呑まれなかった。フルゲームとなった最終第7ゲーム、3-1とリードした場面で強い執念を見せる。自らのサービスからのチキータで得点すると、その後も早田のミドル、バックを厳しく突き、フォア側へのストレートに強打を沈めた。

 サービスから反撃に出たい早田に対し、張本はフォアの強打を一切緩めない。表情を変えることなく攻めの姿勢を貫く17歳の姿からは、過去2年、決勝で味わった苦しみと決別しようとするようなすごみが感じられた。そして再び10-6とチャンピオンシップポイントを握ると、最後はサービスからのバックハンドで決めた。その瞬間、張本は両手を上げて喜びを爆発させた。

【ロス五輪に向けて担う、日本女子のエースの役割】

 試合後、張本は第6ゲームを落とした直後の心境を、率直な言葉で振り返った。

「(第6ゲームを)10-10と追いつかれて負けた瞬間は、正直なところ『もうこの試合は終わったな』と感じてしまって。

『落ち着かなきゃ』とすごく弱気になってしまったんですが、最終ゲームは思いきってやるという気持ちになれました。『負けるかもしれないけど、攻めて負けるほうがいい』と思いましたし、結果として攻めて勝つことができたので、その選択がよかったと思います」

 3年連続で同じ決勝カードとなったことが象徴するように、早田ひなと張本美和という"二大看板"が近年の日本女子卓球界を牽引してきた。そのなかで、確かな積み重ねを経てきた張本が、全日本の舞台でついに頂点に立った。準々決勝以降は苦しい戦いが続いたが、苦境を跳ね返す力を示した。

 3度目の挑戦で全日本のタイトルを手にした張本だが、ここからはロス五輪に向けたエースとしての役割が待ち受ける。兄・張本智和(トヨタ自動車)が男子の世界で長年担い続けてきたように、自国ファンの期待を背負いながら、国際大会では中心選手として勝敗の責任を引き受ける立場に立つこともあるだろう。
 
 日本の至上命題である"中国超え"を果たし、国際大会で金メダルを獲得する。妹もまた、新たなフェーズへと足を踏み入れていく。

(男子編:松島輝空が張本智和戦で見せた鋼の精神力 日本のエースを2年連続で下して全日本を連覇>>)

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