先日、U-23アジアカップを制したのは、ひとつ下の世代のU-21日本代表だ。しかもそのチームには、欧州でプレーする同世代の選手がほとんど含まれていなかった。
後藤啓介(20歳)/シント=トロイデン(ベルギー1部)
191cmの高さと足元の柔らかさを兼ね備える万能型のストライカーだ。ジュビロ磐田の最年少得点記録を持ち、昨年11月に20歳で代表デビューも飾っている。ロサンゼルス五輪世代では、もっとも知名度の高い選手のひとりだ。
中学3年時に磐田U-18に飛び級で昇格し、当時はボランチやトップ下で起用されていた。転機は高校1年時に訪れた。前田遼一氏(現日本代表コーチ)が磐田U-18の監督になると、ストライカーのレジェンドの教えを受けながら本格的にFWでプレーし始めたのだ。高校2年時にトップチームデビューを飾り、翌シーズンからプロ契約を結んでJ2で7ゴールをマークした。
その結果が評価され、2024年1月にベルギーの名門アンデルレヒトに期限付きで引き抜かれた。新天地ではセカンドチームに籍を置き、1年後に正式に契約。トップチームでは全公式戦10試合3得点を記録し、今季は更なる出場機会を求めてシント=トロイデンにローンで加わった。
温厚で人懐っこいキャラクターだが、物怖じせずに自分の言葉をストレートに発する。印象的だったのは、U-22代表の一員として出場した昨年9月のミャンマーでのU-23アジアカップ予選。長距離移動を経て合流したが、コンディション面を考慮されて先発出場は1試合にとどまった。何故なのか──。後藤は疑問を解決すべく、大岩剛監督と練習後に15分ほど個別で話す場を作ってもらった。
「海外組として長い時間をかけてミャンマーに来たのに、出場時間は初戦の20分と第2戦の60分。やっぱり、もう少し試合に出たかった。なので、剛さんのところに話を聞きに行ったんです。状況などをしっかり説明されて、モヤモヤした気持ちはなくなりました」
わがままを通すために話をしたのではなく、監督の考えを尊重しながら、最適解を探るための行動だった。他者の声に耳を傾け、自分に取り込める力もまた後藤の魅力だ。
【仏3部で修行するFWとブンデス行きを勝ち取った点取り屋】
高岡伶颯(18歳)/ヴァランシエンヌ(フランス3部)
身長165cmのスピードスターは、日章学園高3年時にイングランドのサウサンプトンと契約を結び、高校卒業後すぐに欧州で研鑽する道を選んだ。
最大の武器は抜群の急加減速と貪欲さだろう。プレスの際には二度追い、三度追いを繰り返し、ボールを奪ったら、がむしゃらにゴールを狙う。
18歳でサウサンプトンに引き抜かれたのは、偶然ではない。
日章学園高1年時の2023年2月に行われた九州の新人戦で結果を残し、3月に開催されたU-17日本代表のアルジェリア遠征で世代別代表に初招集された。同年7月のU-17アジアカップではスーパーサブとして起用され、11月にインドネシアで開催されたU-17ワールドカップでは、4戦4発の活躍でチームのベスト16進出に貢献。
高校3年時の公式戦ではリーグ戦の1試合を除き、出場した全試合でネットを揺らすなど、抜群の決定力を示した。これまでに吉田麻也や菅原由勢、松木玖生を獲得してきたサウサンプトンが、日本の超逸材に注目していたとしても不思議はない。
サウサンプトンではU-21チームからスタートし、昨夏にフランス3部のヴァランシエンヌへ期限付き移籍。そこでもリザーブチームでプレーする予定だったものの、開幕前の紅白戦でアピールに成功し、トップチームに帯同すると第2節ル・プイ・フット戦でいきなり先制点と決勝点を挙げ、2-1の勝利の立役者となった。
その後はゴールが遠く、昨秋のU-20ワールドカップでも無得点で不完全燃焼に終わり、チームに戻ってからも出場時間を伸ばせていない。それでもストライカー向きのポジティブな性格で、日々成長しているはずだ。
塩貝健人(20歳)/ヴォルフスブルク(ドイツ1部)
アイントラハト・フランクフルトの小杉啓太と同様に、この1月にドイツ・ブンデスリーガのクラブに引き抜かれたロサンゼルス五輪世代の出世頭のひとりだ。
横浜FC Jr.ユースから國學院久我山高に進み、3年次の高校サッカー選手権に出場。その後、慶應義塾大に進学すると、ここで才能が花開く。フィジカルの強さを活かした推進力に加え、パンチの効いたシュートでゴールを量産。1年時の関東大学サッカーリーグでは3部ながら15得点を挙げて、トップスコアラーとなった。
その活躍により、横浜F・マリノス入団が内定。2024年4月には特別指定選手としてJ1デビューを飾り、プロ初ゴールもマークした。世代別代表にも名を連ね、6月にU-19日本代表の一員としてモーリスレベロトーナメントに参加。そこで欧州クラブのスカウトから見初められると、進路を欧州挑戦に変更した。8月にオランダ1部のナイメヘンに加入すると、1年目は25試合で4ゴールを記録し、今季は12試合で7得点を奪った。
タフな精神を備え、何事にも負けず嫌い。ゴールを奪うための我の強さが際立ち、周りにパスを要求されても自ら打つような強気な姿勢が光る。向上心も高く、常日頃から「A代表に行くチャンスはあるはず」と上のステージを目指し、貪欲な姿勢でトレーニングに励んでいる。ポストワークや守備時の個人戦術など、課題もあるが、それを補って余りある得点力はこの世代で頭ひとつ抜けている。
【もうひとつ下の世代にも逸材が】
新川志音(18歳)/シント=トロイデン(ベルギー1部)
年齢的にはロサンゼルス五輪世代の1つ下の世代で、来年のU-20ワールドカップがメインターゲットとなる。ただし、大岩剛監督のチームに飛び級で継続的に参加しているように、そのポテンシャルは計り知れない。
機動力を生かして単独で仕掛け、カットインも縦への突破も得意。落ち着いたフィニッシュを巧みに打ち分け、ストライカーだけでなく、ウイング、サイドハーフもハイレベルにこなす。
昨年の今頃は鳥栖U-18に所属し、Jリーグにもデビューしていなかった。しかし、高校3年生を迎える直前の昨年2月半ばに2種登録をされると、磐田とのJ2第2節でプロデビュー。途中出場ながらPKを奪取するなど注目を集め、その後はU-18チームではなく、トップチーム主体の活動となった。
5月半ばには2026年シーズンからのトップチーム昇格が決まり、シーズンを通じ3−4−2−1の最前線もしくはシャドーで起用された。ブレイクの兆しを見せるなか、自身の価値を決定付けたのが、9月のU-23アジアカップ予選での活躍だ。
アフガニスタンとの初戦で先制ゴールを決めると、残る試合でも決定的な活躍を何度も見せる。飛び級での選出とは思えないほどのパフォーマンスで、今後の飛躍を予感させた。すると、帰国直後のJ2で3戦連発と爆発。9月のJリーグ月間ベストヤングプレーヤー賞を受賞し、10月には翌シーズンを待たずにプロ契約を締結した。
12月下旬のSBSカップでは来年のU-20ワールドカップをターゲットとするU-18代表で主軸を務め、バルセロナやレアル・マドリーの下部組織に所属する選手を揃えたスペインを翻弄。年明け早々にはシント=トロイデンへの完全移籍が発表され、1年で驚くべきステップアップを遂げた。「刺激になっている」という同時期に海を渡った神代慶人(フランクフルトⅡ)と切磋琢磨しつつ、気鋭の18歳はさらなる飛躍を誓う。
(了)
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