Jリーグ懐かしの助っ人外国人選手たち
【第29回】パトリック
(川崎フロンターレ、ヴァンフォーレ甲府、ガンバ大阪、サンフレッチェ広島、
京都サンガF.C.、名古屋グランパス、ツエーゲン金沢)
Jリーグ30数年の歩みは、「助っ人外国人」の歴史でもある。ある者はプロフェッショナリズムの伝道者として、ある者はタイトル獲得のキーマンとして、またある者は観衆を魅了するアーティストとして、Jリーグの競技力向上とサッカー文化の浸透に寄与した。
第29回はパトリックを取り上げる。2013年の川崎フロンターレ入りをきっかけにJ1の6クラブを渡り歩き、2025年からはJ3のツエーゲン金沢でプレーしている。Jリーグ14年目のシーズンを迎える38歳は、Jリーグの歴史に静かに、しかし確かにその名を刻印している。
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パトリックことアンデルソン・パトリック・アギアル・オリヴェイラは、12年間で6つのJ1クラブに在籍し、J1リーグ戦328試合出場を記録している。外国人選手ではセレッソ大阪ひと筋のGKキム・ジンヒョン、鹿島アントラーズや横浜F・マリノスで活躍したFWマルキーニョスに次いで歴代3位に食い込む。また、昨シーズンはJ3に戦いの場を移し、ツエーゲン金沢で33試合に出場した。2026シーズン中にJリーグ通算400試合出場を達成する可能性もある。
J1通算101ゴール。外国人選手ではマルキーニョス、ウェズレイ、ジュニーニョ、エジミウソンに次ぎ、アンデルソン・ロペスと並ぶ数字だ。そもそも100ゴール以上を記録している選手は、日本人を含めてもわずか17人である。このふたつのデータを紹介するだけで、パトリックという選手の足跡の大きさがわかるはずだ。
しかし、Jリーグへのデビューは、ひっそりとしたものだった。
風間八宏監督が指揮する川崎フロンターレでプレータイムを確保できず、2013年7月にヴァンフォーレ甲府からのオファーを受けて移籍する。J1残留を目指すチームで得点源となったものの、パトリックはJリーグでのキャリアを一度、ここで止めることになる。
【ガンバ大阪でブレイク】
パトリックは2014年、ブラジルに戻ってプレーすることになった。しかしそれも束の間、7月に再び来日し、今度はガンバ大阪に加入する。ブラジルワールドカップ後のリーグ戦再開とともにピッチに立ち、加入後初スタメンから3試合連続ゴールを記録してチームを勢いに乗せた。
「2013年のフロンターレとヴァンフォーレでの経験があったので、ガンバに来た時には日本のサッカーについて理解できていました。だからチームにすぐ、馴染むことができました。それから、長谷川健太監督が試合で使ってくれたことが大きかったですね。監督から信頼されていると感じることができて、その安心感が思いきったプレーにつながりました」
J2から復帰した1年目のシーズンで、ガンバはJ1リーグの頂点に立つ。リーグカップと天皇杯も獲得し、国内3大タイトルを独占した。パトリックはリーグ戦19試合出場で9ゴールをマークし、リーグカップと天皇杯ではタイトルに直結するゴールも奪う。遠藤保仁、阿部浩之、宇佐美貴史らの優れたパサーとアタッカーに囲まれ、ポテンシャルを一気に解放したのである。
シーズン途中に加入した外国人選手は、ディフェンスのポジションの選手なら守備力の向上を、攻撃の選手なら得点力アップに直結する働きを問われる。外国人最多の得点を記録しているマルキーニョスは「ハーフシーズンの助っ人」として、東京ヴェルディ1969と清水エスパルスのJ1残留に貢献した。それによって、彼のキャリアはさらに充実したものとなったと言える。
パトリックも同じだっただろう。2014年の活躍を受けて翌2015年もガンバのユニフォームを着ると、その夏に2016年末までの契約延長を勝ち取った。
2017年の途中から在籍したサンフレッチェ広島では、2018年にキャリアハイとなる20ゴールを叩き出した。しかし翌2019年、一気にプレータイムが減少してしまう。そんなタイミングで、古巣のガンバ大阪からオファーが届く。パトリックは夏の移籍市場で復帰を果たし、2020年、2021年、2022年と3年連続でチームトップの得点を記録した。
【Jリーグで長くプレーするコツ】
パトリックのキャリアを辿ると、2シーズン連続で低調なパフォーマンスに終わったことがない。シーズン途中の移籍などをきっかけとして、復調を繰り返しながらキャリアの継続に成功している。
その理由が、2016年シーズン前のインタビューにある。
「自分がゴールを決め続けている時でも、プレーに満足することはありません。前の試合でうまくいかなかったプレーを、次の試合へのトレーニングで改善していくことを、僕はいつも意識しています」
外国人選手には、とかく「主張が強い」との視線が向けられがちだ。パトリックは「言うべきことがあれば、僕も言いますよ」とうなずき、「ただ......」と言葉をつないだ。
「監督の言うことを素直に聞いて、まずは取り入れてみます。監督は自分のプレーを客観的に見ているから、僕自身は気づかないことが見えている。僕はブラジル人ですが、ここは日本です。自分が今いる環境のなかで、一番成長できるために何をするべきか。監督でも、コーチでも、チームメイトでも、僕へのアドバイスには耳を傾けるべきだと思いますね」
実際にパトリックは、日本で成長を感じていた。ブラジルではペナルティエリアの幅で勝負する典型的なストライカーだったが、日本ではサイドへ流れてプレーするようになった。
それによって、スピードも自身の強みだと気づくことができた。
「あとはやはり、足もとのプレーがレベルアップしたと思います。
2026年はJ3のツエーゲン金沢でプレーする。チーム2位の11ゴールを記録した昨シーズンに続いて、パトリックは背番号10を託された。日本で14年目のシーズンを迎える優良外国人は、ピッチ内では大胆かつ豪快に、ピッチ外では謙虚に、サッカーと向き合っている。

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