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前編:河村勇輝、NBA2年目の挑戦

【1月下旬にコートに復帰】

 ニューヨークにこれほど多くの日本人が集まったのは、いつ以来だろう?

 1月23日、ニューヨークのウェストチェスターで行なわれたウェストチェスター・ニックス対ウィンディシティ・ブルズのGリーグ公式戦の公式入場者数は2068人。その3分の1くらいは日本人だったのではないか。お目当てが誰であったのかは明白であり、この夜、ブルズの背番号11、河村勇輝の一挙一動に大きな歓声が挙がり続けた。

 観衆の前でプレーできる喜びを隠しきれなかったのは、河村のほうも同じだった。

「バスケットができることは当たり前じゃない、こういうふうに全力でプレーできることは当たり前じゃないと毎日ひしひし感じながら、それに感謝しながら、プレーできているかなと思っています。そういったメンタルの持ち方、マインドセットの部分に関しては、よりバスケットへ真摯に向き合えているという感覚はあります」

 今シーズン開幕前にブルズとの2ウェイ契約解除が突然発表されてから約3カ月――。その理由が右足の血栓であることを明かし、体調回復とともに2ウェイ契約を結び直した河村にとってニックス戦は復帰2戦目だった。

 この日はベンチからの登場で約21分プレーし、3得点、7アシスト、2リバウンドをマーク。電光石火のスピードと流麗なパスワークは健在だった。シュートの精度はいまひとつだったが、長いブランク明けであればそれも仕方ない。この時点ではまだ約20分のプレー時間制限があったが、コンディションが整うとともにシュートタッチは徐々に戻るだろう。

 何より、ボールを持った瞬間、"次に何が起こるのだろう?"とアリーナの空気が張り詰めるような独特の雰囲気を作り出せるポイントガード(PG)である点は変わっていない。今後も特にGリーグでは多くのハイライトシーンを演出し、地元ファン、さらには日本人ファンを惹きつける稀有なファンタジスタであり続けるはずだ。

 もっとも、アメリカでの1年目だった昨季にメンフィス・グリズリーズで22戦のNBAゲームに出場した河村にとって、復帰することが決してゴールではない。ハリウッド映画なら、突然のアクシデントからコートに戻ったところでエンドロールが流れそうだが、現実のキャリアは続いていく。

「焦りは、あまり感じてないです。もちろんプレーできることをもう一回、証明しないといけない部分はありますが、現時点ではとにかくバスケットができていることのありがたみを感じながら、プレーしてるかなという感じです」

 ニックス戦後にはそう述べていた河村だが、今後、コンディション向上とともに、また新たな戦いが始まる。大事な2年目の前半をほとんど棒に振ったあとで、どう巻き返していくか。あくまでNBAでのプレーを基準に考えるなら、ここからキャリアを前に進めるのは簡単なことではないはずだ。
 
 所属するブルズはジョシュ・ギディー、コビー・ホワイト、アヨ・ドスンム、トレ・ジョーンズなど多くの実績あるガード選手を抱えている。

 河村はチーム内にケガ人が多かったマイアミ・ヒート戦では今季初のベンチ入りを果たし、31日の同カードで今季NBA初出場。この日は6得点、2アシスト、2スティールと活躍したが、今後どうなっていくかはわからない。2月5日のトレード期限までにロースター構成が劇的に変わらない限り、後半戦でも一時的なスポット以外の出番を得るのは至難の業だろう。

【攻守における課題と今後の展望】

河村勇輝が1月下旬にコートに復帰 NBA公式戦にも今季初出場のなか今後の進むべき青写真とは?
河村の背番号はGリーグでは11、NBAでは8をつけている photo by Getty Images
 そんな状況下でも可能性を上げるために、取り組むべきことは何なのか。

 まずオフェンス面でステップアップするための当面の課題として、ニックス戦後の河村は決定力の強化を挙げていた。

「ペイントアタックしたあとのスコアのところです。3Pだけじゃなく、ミドル、フローターだったりは、(休んでいた)この3カ月間もやっていこうと考えていました。

そこはチャレンジしていくべき問題だなと思っていますし、あとは決めきるだけ。引き続きチャレンジしていきたいです」

 実際に昨季の河村はパスワークとドリブルなどで魅了したものの、フィニッシュ(得点を決めきる)で手こずるシーンが見受けられた。Gリーグのシーズン24戦では3P成功率41.0%と好成績を収めたが、フィールドゴール(FG)成功率は40.0%。2Pのシュート時には相手ディフェンダーのリーチ、高さに苦しんだと考えるのが自然な答えであり、河村自身がそれに対する対処を考えてきたというのは理解できる。

 もっとも、オフェンスに関しては、稀有なセンスを持った河村ならば活躍の術を見つけるのではないか。武器は豊富にあり、まだ向上の余地もある。それよりも最大のカギは、ディフェンス面でいかに貢献方法を見出していくかだろう。

 173cmと小柄な河村がコートに立てば、常にミスマッチ(マークされる選手との身長差)が生まれる。もちろんいまに始まったことではないが、アメリカではその幅がより広がるだけに、サイズのハンデを少しでも埋めるための対策は必須だ。聡明な河村ももちろんその点は承知しており、運動量を武器にした守備に主眼を置いている。そして、昨季までよりさらに一歩先に進むため、数値アップを目指すべき部分も見えてきている。単にプレッシャーをかけるだけではなく、目標はスティールの数を増やすことだ。

「チームからも言われているのは、フルコートでピックアップして、プレッシャーをかけること。しっかりと時間をかけさせ、相手のオフェンスのリズムを崩すことは僕のひとつの仕事ですね。ギャンブルとまではいかないですけど、スティールを狙えるときにはどんどんボールにプレッシャーをかけていきたい。去年はどちらかというとプレッシャーだけでしたが、今季はもっとボールにアタックしながら、そこでスティールを稼ぐ。スティールでチームに貢献できればいいなとは思っています」

 ハードな守備からターンオーバーを誘発できれば、そこからイージーバスケットにつなげることができる。目論みどおりなら、その流れはオフェンスの課題であるフィニッシュにも好影響を及ぼすだろう。

 右足の血栓は本当に痛かったが、自身の課題が明確になっているだけに、まだ巻き返すだけの時間はある。

 確かな能力を持ち、敵地のコートをもファンで埋め尽くすスター性を持ったファンタジスタは、どんなチームにとっても貴重な存在に違いない。Gリーグだけでなく、NBAでの存在感をさらに高めるためにーー。

 当然のことだが、シーズンの残り約2カ月半は極めて重要な時間になる。スティールから相手ゴールに向けて突っ走るシーンを頻繁に生み出すようになれば、河村のNBAでの未来はもっと明るく開けてくるはずである。

後編につづく〉〉〉「ベテラン記者が解説する河村勇輝の現在地とブルズのチーム編成の意図」

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