市原吏音インタビュー後編
(RB大宮アルディージャ→オランダ・AZアルクマール)

◆市原吏音・前編>>冨安健洋に次ぐ若さでオランダへ「移籍金はJ2史上最高額」

 先のU-23アジアカップでキャプテンを務めた市原吏音(いちはら・りおん)が、J2のRB大宮アルディージャからオランダ・エールディヴィジのAZアルクマールへ移籍した。

 2028年開催のロサンゼルス五輪世代を牽引する20歳のセンターバックには、さまざまなオファーが届いていた。

そのなかからエールディヴィジを、AZを選んだ理由とは?

市原吏音は日本代表のワールドカップメンバー入りも視野「滑り込...の画像はこちら >>
「僕は大宮が好きですし、国内で移籍をするつもりはなくて、『海外へ行くなら大宮から』というのは決めていました。そのタイミングを、ずっと見計らっていたということです。

 オランダリーグは日本人が多くて、ある程度、日本人への理解もある。国民性もそうですし、リーグ的にも日本人にフィットしやすいのかなと。AZには代表選手でもある毎熊(晟矢)さんもいますし、日本人のトレーナーの方もいるし、世話役をしていただける女性の方もいると聞いたので、ファーストステップとしてこれ以上ない環境というか。何不自由ない環境だと思います」

 移籍を検討したのは、今回が初めてではない。ユースからトップチームへ昇格するタイミングを含めて、熟考を重ねてきた。

「移籍のタイミングって、夏と冬があるじゃないですか。代理人の方とも『いつがいいんだろう』というのを、これまで何度も話してきました。

 AZはずっと自分にアプローチしてくれて、自分をホントにほしいという熱量が一番強かったクラブと感じたんです。ほかのリーグへ行く選択肢もありましたけど、僕自身としては迷わずに『AZへ行きます』と伝えました」

 ロス五輪世代では、同学年のFW後藤啓介(シント・トロイデン/ベルギー)やDF小杉啓太(フランクフルト/ドイツ)らが、18歳からヨーロッパでプレーしている。昨年のU-20ワールドカップでともにプレーしたMF齋藤俊輔は、今冬にベルギー1部のウェステルローの一員となった。

また、学年ではひとつ上になる塩貝健人は、今冬の移籍市場でNEC(オランダ)からヴォルフスブルク(ドイツ)へ移籍した。

【日本代表になるために欧州で活躍】

「同世代が行っているから自分も......っていう気持ちは特になくて。行くからには1年とか2年で帰ってくることがないように、と考えてきました。

 向こうへ行ってしっかり活躍して、きちんとプレーして帰ってくるのが自分のプランなので、それをできるのはいつなんだろうと。(6月開幕で)ワールドカップもあるのでそこを見据えて、最後に滑り込みでも(メンバーに)入れるようにがんばりたいなと思います」

 U-23アジアカップ優勝を決めた試合後のインタビューで、市原は「オリンピックもありますけれど、ワールドカップを目指してがんばりたいです」と今後の抱負を述べた。佐藤龍之介(FC東京)らロス五輪世代から日本代表入りしている選手もいるなかで、森保一監督が指揮するチームに食い込むイメージは固まっているのか。

「いや、まったく見えてないっすね。まだ、まったく見えてなくて」と、市原は顔の前で手を振った。

 ここまで一度も日本代表に選ばれていない選手が、チーム作りが最終段階へ入ったこのタイミングで招集されるのは、たしかに難しい。それでも、4年に1度しか巡ってこない機会なのだ。チャレンジする価値はある。ほんのわずかでも可能性を見出せるのなら、チャレンジしないなんてもったいない。

「日本代表のセンターバックにケガ人が出ているなかで、このタイミングで自分が海外へ挑戦して、ある程度のパフォーマンスと結果を残すことができれば、チャンスはあるんじゃないのかなとは思います。

けれど、まだ向こうでスタートラインに立ったわけでもないので、謙虚にやっていきたいと思います」

 海外でプレーする最大のモチベーションは、日本代表に選ばれる可能性を拡げるためだ。高校生だった当時から「ヨーロッパのあのクラブでプレーしたい、というこだわりはないんです」と話していた。AZへの移籍が決まっても、「日本代表になるためにヨーロッパのクラブで活躍する、という感じなんです」と、変わらない思いを明かしていた。

【等身大の20歳がどこまで通用するのか】

「そこから5大リーグへ挑戦したいなとは思いますけれど、まずはやっぱりオランダでしっかり結果を残すことが一番です。なるべく早くAZでピッチに立って、いい報告ができるようにがんばりたいです」

 センターバックとしてのクオリティは、ヨーロッパでも十分に通用する。空中戦でも地上戦でも、相手FWと競り合いながら跳ね返す力がある。プロ入り後は、シュートブロックの技術にも磨きがかかった。クロスやシュートをギリギリでブロックするシーンは、年代別の日本代表でもRB大宮でも、何度も見られた。

 また、ビルドアップも冷静だ。相手のハイプレスを受けても、市原はすぐにボールを離さない。縦パスから横パスへプレーを変更することができ、相手のパワーを逆手にとってパスからドリブルへ切り替えることもできる。

 等身大の市原が、オランダでどこまで通用するのか。

どこまでステップアップしていくのか。

 楽しみな挑戦が、ついに始まる。

<了> 取材協力:RB大宮アルディージャ


【profile】
市原吏音(いちはら・りおん)
2005年7月7日生まれ、埼玉県さいたま市出身。大宮アルディージャのアカデミーで育ち、2023年7月の天皇杯・セレッソ大阪戦でクラブ史上最年少18歳5日でのトップチームデビュー。翌年トップチームに昇格し、いきなり副主将に任命されてJ3優勝に貢献。日本代表歴は各カテゴリーで呼ばれ、2026年のU-23アジアカップではU-21日本代表の主将を務めた。2026年1月、オランダ1部のAZアルクマールに完全移籍。ポジション=DF。身長187cm、体重81kg。

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