プレミアリーグ後半戦・注目ポイント
【前編】日本人選手の2026年

 日本人選手にとって、プレミアリーグの冬の移籍市場は非常に穏やかだった。トッテナム・ホットスパーからボルシアMG(ブンデスリーガ)にローン移籍して才能の一端を見せつけた高井幸大を除き、その他4選手は残留。

シーズン後半戦もそれぞれの目標に向かって邁進していく。

 残った4選手のなかで、最も気がかりなのは田中碧だ。所属するリーズでは出場機会が減り、16節のブレントフォード戦を最後に先発では起用されていない。期間にするとおよそ2カ月も経っている。

【プレミアリーグ】鎌田大地は救世主、三笘薫はクラブの宝......の画像はこちら >>
 3-4-2-1の中盤センターはイーサン・アンパドゥが定位置を確保し、もうひとつのポジションをショーン・ロングスタッフ、イリア・グルエフ、田中が競う形になっている。

 田中は14節のリバプール戦、続くチェルシー戦でも後半アディショナルタイムに貴重なゴールを決め、定位置を奪回すると思われた。だが、ダニエル・ファルケ監督は「ディフェンスの際にブロックを崩しすぎる」と苦言を呈していた。

 昨シーズンのチャンピオンシップ(実質2部)でリーズ昇格の立役者となったが、その活躍ぶりも今は昔。0-4の完敗に終わった24節のアーセナル戦でも出番は訪れなかった。交代枠をひとり残していたにもかかわらず、ファルケ監督は田中を投入しなかった。

 リーズは現在16位で、降格圏との差はわずか6ポイント差だ。決して安全圏ではない。

リスクを冒した3ポイントより、1ポイントを確実に稼ぐべき試合も多々あるだろう。田中が定位置を奪回するには、守備時の対応でファルケ監督の信頼を取り戻すことが最重要課題だ。

 昨年12月に右のハムストリングを痛めた鎌田大地が戦線離脱したあと、クリスタル・パレスはリーグ戦8試合を3分5敗・5得点14失点。攻撃はアクセントを欠き、守りは杜撰(ずさん)になった。日本が誇る司令塔の不在は顕著に表れている。

「2月8日のブライトン戦には復帰できるだろう。戻ってきてもらわないと困る」

 オリバー・グラスナー監督は、一刻も早い鎌田の復帰を待ち望んだ(76分から出場)。無理もない。守備の要でキャプテンだったマルク・グエイが冬の市場でマンチェスター・シティに移籍し、得点源のジャン=フィリップ・マテタはひざの故障で長期欠場の可能性大。クリスタル・パレスの三本柱と称された選手のうち、希望は鎌田ただひとりだからだ。

【ブライトンは「FC MITOMA」】

 ただ、グラスナー監督の任期は今シーズン終了までとなっている。契約延長はしない。鎌田も同様だろう。

師弟関係のふたりは十中八九、来シーズンも行動をともにするに違いない。

 したがって、残された4カ月がクリスタル・パレスでの集大成となる。グエイとマテタがいなくなった今、鎌田にかかる負担は尋常ではないほど大きくなるとはいえ、彼ならば易々とチームを引っ張ってくれるのではないだろうか。

 今シーズン前半戦、クリスタル・パレスは一時、トップ4もうかがうほどの勢いだった。しかし、いつの間にか13位にまで急降下している。鎌田が「救世主」になるしかない。

 一方、前半戦で調子を落としていた三笘薫は、ここにきて徐々にコンディションが整いつつある。左足首の痛みや体調不良でベンチ入りさえできない時間が続いていたが、2026年を迎えたあたりから上向いてきた。

 彼の復調とともにブライトンもわずかながら調子を取り戻し、チャンピオンズリーグ出場権争いやリーグ優勝争いを左右するクラブのひとつとして注目されている。

 日本代表の左ウイングが幅を取ることによって、相手の陣形は横に広がらざるをえなくなる。当然ながらピッチ上の各所にスペースが生じ、ブライトンはMFや左サイドバックが攻撃的に振る舞えるようになった。

 16節のリバプール戦で復帰した三笘は、途中出場ながら25分ほどプレーした。

その後プレータイムを限定しつつ、24節のエバートン戦でようやくフル出場。ファビアン・ヒュルツェラー監督とメディカルスタッフが三笘の健康を管理しているため、左足首の痛みが再発するリスクは小さいと考えていいだろう。

 ブライトンサポーターには失礼だが、このクラブは「FC MITOMA」である。彼の有無でパフォーマンスが激変する。そして今、頼りになるエースのコンディションは上昇カーブを描いている。上位にとって、最も厄介な存在といって差し支えない。

【遠藤航はCBでも強さを発揮】

 そして最後は、ビッグクラブに所属する日本人プレミアリーガー遠藤航について。選手層の厚い昨季王者のリバプールにおいて、彼の序列がようやく上がってきた。

 近ごろの選手は辛抱強くない。出場機会に恵まれなくなると、SNSを通じて不平・不満を明らかにする。マーカス・ラシュフォード(バルセロナ)、アレハンドロ・ガルナチョ(チェルシー)、ジェイドン・サンチョ(アストン・ヴィラ)......彼らはみなマンチェスター・Uから"追放"された。

 しかし遠藤は、アルネ・スロット監督による理不尽な扱いにも愚痴ひとつこぼさず、いつか訪れるチャンスのために準備を怠らなかった。

「ワタ(遠藤の愛称)はとても多彩で、期待を裏切らない男だ」

 同僚のアンディ・ロバートソンも、その人間性を絶賛する。

 その地道な努力と負傷者続出の緊急事態から、遠藤はセンターバックや右サイドバックの貴重な戦力に浮上してきた。

 遠藤は身長178cmと決して大柄な選手ではない。しかし空中戦の技術・強さでは、CBのポジションを争うイブラヒマ・コナテやジョー・ゴメスにも引けを取らない。また、右サイドバックとしてはジェレミー・フリンポン(筋肉系の故障で長期離脱の可能性)のようなスピードこそないが、ライン間をカバーする巧みなポジショニングで安定感をもたらしてくれる。

 サンダーランドから今冬に加入したルシャレル・ヘールトロイダは守備的MFや右サイドバックをこなすとはいえ、リバプールで即フィットできるのかは未知数というしかない。

「準備がすべて」

 メジャーリーグで一世を風靡したイチローの名言だ。遠藤は今日もひたむきに汗を流している。

 プレミアリーグの冬市場は全体的に静かだった。日本人選手のニュースにいたっても、田中のガラタサライ移籍はメディアのおとぎ話にすぎず、何度となくプレミアリーグのクラブが取り沙汰される守田和正も例によってスポルティングから動けなかった。

【日本人の評価は右肩上がり】

 開幕まで残り4カ月に迫った北中米ワールドカップが影響しているのだろう。代表チームでポジションを勝ち取るためには、所属クラブで好パフォーマンスを発揮しなければならない。移籍して周囲との信頼を「ゼロスタート」で築くのはリスクが大きすぎる。

 ただそれでも、日を追うごとに日本人選手の評価は高くなる一方だ。フェイエノールトの上田綺世やパルマの鈴木彩艶は、ワールドカップ終了後の移籍先としてプレミアリーグを選択するのではないだろうか。佐野海舟(マインツ)や佐野航大(NEC)、鈴木淳之介(FCコペンハーゲン)ら急激に評価を伸ばしている若手たちも、トップステージでプレーする姿を見ていたい。

 次夏の移籍市場では、少なくない数の日本人選手が話題になる公算が大きい。世界との距離は確実に、そして急速に近くなってきた。

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