【序盤でミスも感じさせた成長】

 ミラノ・コルティナ五輪、初の大舞台となった佐藤駿(エームサービス・明治大)がメダルを獲るための最大の条件は、ショートプログラム(SP)で自己最高得点(99.20点)を上回る100点台に乗せて勢いをつけることだった。

 条件達成への準備は、2月8日(現地時間)の団体男子フリーではできていた。スピンなどのレベルの取りこぼしはあったものの、ジャンプはすべてをきれいに決めるノーミスの演技だった。

体調のよさとともに、一時は4回転フリップを入れてイリア・マリニン(アメリカ)に挑むことを検討するほど攻めの気持ちも湧き上がっていた。

【ミラノ五輪】9位発進の佐藤駿「逃げ出したいくらいの緊張」 ...の画像はこちら >>

 しかし、最終組1番滑走の佐藤は序盤でミスをしてしまった。

「滑り出してからはいつもどおりの心境でやれたと思います。でも演技前は正直、もうやばいくらい......。心臓が飛び出しそうで逃げ出したいくらいの緊張がありました。6分間練習もこれが終わったらすぐに(本番を)滑らなければいけないという緊張があって、いつもよりもちょっと元気がなかったかなという感じでした」

 最初の4回転ルッツは、団体戦ほどの鋭さのないジャンプではあったが、確実に着氷した。だが、次の4回転トーループ+3回転トーループは4回転の着氷が少し乱れ、強引につけた2回転トーループはステップアウトしてしまい減点。「ちょっと回りすぎたかなという感じ。少し力が入っていた」と佐藤は振り返る。

 それでもそのあと崩れないところに、佐藤の成長が見てとれる。五輪出場枠数が自身の演技にかかった昨季の世界選手権フリーを滑りきった自信が今季につながった。五輪の団体男子フリーでも、最終滑走者でありチームの命運がかかったプレッシャーのなかできっちりとノーミスの演技を見せ、自己ベストの194.86点を出した。

 そんな経験が心の支えとなったか、チェンジフットシットスピンをレベル4にして立て直すと、後半のトリプルアクセルも確実に決めた。

 得点は88.70点。演技構成点は8点台前半から半ばに抑えられる評価となり、4位以下の4選手が92~93点台で競り合うなかで9位発進になってしまった。

【実力を発揮できれば追い上げは可能】

「(五輪は)初出場だったけれど、最終グループに入れてもらえるくらいのランキングに自分がなっているのがうれしいことだったし、公式練習からすごくレベルが高いなかでたくさんの刺激をもらいました。

 悔しさが残る演技になってしまい、フリーでは最終グループで滑れないのが残念ではありますが、この舞台ですごく楽しく滑れた。しっかりと気持ちを切り替えてさらにいろんなものを他の選手から吸収して、この五輪をいい形で終えて、次につなげていければいいかなと思います」

 本人も周囲も「もしかしたら届くかもしれない」と思っていたメダルは、少し遠のく結果になってしまった。だが今季、GPシリーズから安定した成績を残すまでに成長した彼の実力を持ってすれば、フリーでの追い上げは十分に可能だ。

 演技終了後には、申し訳なさそうな表情をして胸の前で両手を合わせた佐藤。そのあとの観客席へのあいさつでも礼をして、その都度両手を合わせた。納得できない演技に終わったことを謝るような振る舞いは、佐藤駿"らしさ"を感じさせた。

 フリーは、団体のように攻める気持ちを持った演技を再現するはずだ。どこまで順位を上げられるか、期待したい。

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