MLBのサムライたち~大谷翔平につながる道
連載24:田澤純一
届かぬ世界と思われていたメジャーリーグに飛び込み、既成概念を打ち破ってきたサムライたち。果敢なチャレンジの軌跡は今もなお、脈々と受け継がれている。
MLBの歴史に確かな足跡を残した日本人メジャーリーガーを綴る今連載。第24回は、日本のプロ野球を経ずにメジャーにわたった田澤純一を紹介する。
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【2013年レッドソックス世界一に貢献】
メジャーでの通算成績は388試合を投げて21勝26敗89ホールド4セーブ、防御率4.12。主に短いイニングでの登板が多い中継ぎの役割だったこともあって、田澤純一のアメリカでのキャリアにはそれほど華やかな印象は残っていないかもしれない。
それでも2009年にアメリカに渡って以降、田澤はまるでローラーコースターに乗っているような波瀾万丈の日々を過ごしていった。日本のプロ野球を経なかったことで大きな物議を醸してのMLB入り、日本人投手史上最年少での勝利、トミー・ジョン手術による戦線離脱からの再起、そしてボストン・レッドソックスの一員としてのワールドシリーズ制覇への貢献......。
本当にいろいろなことがあったが、20代中盤、好調時の田澤はメジャーでも有数のセットアッパーだったことを忘れられるべきではない。最速97マイル(約156.1キロ)の速球と切れ味鋭いスプリッターが主武器で、真っ向勝負で打者をねじ伏せる豪快さが持ち味だった。2012年には44イニングを投げて45奪三振、防御率1.43という見事な成績をマーク。近年のメジャーで、特に重視される項目のひとつである奪三振と与四球の比率で、この年に40イニング以上投げたMLB全投手のなかでトップだったことも特筆すべき点だ。
「田澤の球の威力はレッドソックスのブルペンのなかでベスト。春季キャンプ開始直後、ブルペンで田澤を初めて捕球した(デビッド・)ロス捕手が、スプリッターは彼が受けたなかではジョン・スモルツ以来最高だと言っていた」
『ESPN.com』の有名記者、バスター・オルニーが2013年にボストンのラジオ番組に出演した際、そんな逸話を披露して話題を呼んだこともあった。主にアトランタ・ブレーブスで通算213勝、154セーブを挙げたレジェンド投手の名前が引き合いに出されたことからも、田澤のポテンシャルの高さが伝わってくる。
実際にこの2013年こそが、田澤の野球人生の中で最大のハイライトとなった。
シーズン中、71試合の登板で25ホールド、防御率3.16という上質な成績を残し、快進撃を続けたレッドソックスをクローザーの上原浩治とともに支えた。特にプレーオフでの頑張りは、群を抜いていた。タンパベイ・レイズとの地区シリーズではエバン・ロンゴリア、デトロイト・タイガースとの優勝決定シリーズではミゲール・カブレラ、そしてセントルイス・カージナルスとのワールドシリーズではマット・ホリデイ、アレン・クレイグといった名だたる強打者とばかり対戦。終盤イニングのピンチの場面に登場し、相手の主砲から決定的なアウトを奪うのが田澤の仕事だった。
【セットアッパーとしての矜持】
この年の最後の登板は、レッドソックスが3勝2敗と王手をかけて迎えたワールドシリーズ第6戦。5点をリードした7回裏2死満塁、4番のクレイグを迎えたところで田澤がマウンドに立った。ここでもクレイグをきっちりと一塁ゴロに討ち取り、カバーに入った一塁ベース上でガッツポーズ。相手の反撃の芽を摘み、事実上、ワールドシリーズを終わらせた瞬間でもあった。
「打者ひとり(の対戦が多かった)と言われればそれまでかもしれないですけど、(強打者を抑えたことを)評価してもらえればうれしいかなと思います」
レッドソックスが予想外の形で世界一にたどり着いたあと、田澤は謙虚にそう語っていたのが思い出される。ワールドシリーズでは5試合に登板し、2回1/3を1安打3奪三振で無失点と堂々たる仕事ぶり。プレーオフ通算でも13試合で7回1/3を投げて、防御率1.23、6奪三振という見事な成績を振り返るまでもなく、田澤の頑張りがなければレッドソックスの優勝はあり得なかったはずだ。
これ以降、田澤は同じ輝きを取り戻すことはなかった。翌2014年も優れた数字を残したものの、その後の成績は下降線を辿る。2013、2014年と2年連続で71試合に登板した疲れか、消耗が早かった印象がある。そんなキャリア後半の推移は、メジャーでリリーフ投手が長期に渡って効果を保つことの難しさを象徴するようでもある。
しかし−−。比較的短命に終わったからといって、ピーク時に田澤が見せた鮮やかなピッチングの残像が消えるわけではない。メジャー有数の名門チームの優勝に本当に大きな形で貢献したことも忘れられるべきではない。
日本では本格派で売っても、よりパワフルなメジャーではかわす投球が中心になる日本人投手も少なくない。そんななかで、全盛期の田澤は1~2イニングなら力の投球で強打者たちを圧倒できる稀有な存在だった。その一瞬の輝きは特にレッドソックスファンには記憶され、語り継がれ、今後もボストンの街を訪れるたび、大歓声で迎えられることになるのだろう。
【Profile】たざわ・じゅんいち/1986年6月6日、神奈川県出身。横浜商科大高(神奈川)−新日本石油ENEOS。
●NPBプレー歴:なし。
●MLBプレー歴(9年):ボストン・レッドソックス(2009、2011~16/ア)−マイアミ・マーリンズ(2017~18途/ナ)−ロサンゼルス・エンゼルス(2018/ア) *ア=アメリカン・リーグ、ナ=ナショナル・リーグ
●MLB通算成績:21勝26敗89ホールド4セーブ(388試合)/防御率4.12/投球回395.1/奪三振374 *プレーオフ(1年/2013):1勝0敗6ホールド(13試合)/防御率1.23/投球回7.1/奪三振6
●主なMLBタイトル&偉業歴:ワールドシリーズ優勝(2013)
●日本代表歴:2023年アジア大会(3位)










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