「スターダム」葉月 インタビュー前編

 リング上で弾丸のようなハイスピードアクションを見せ、感情をむき出しにした真っ向勝負を展開するスターダムの"ワイルドハート"葉月。最近では、昨年12月にプロレス再デビューしたフワちゃんの"師匠"としても注目を集めている。

 だが、10年を超えるキャリアは決して平坦なものではなかった。中学を卒業してから半年での入団、ユニット移籍での葛藤......そして、一度はリングを離れて一般社会に身を置きながら、再び過酷なリングに戻った理由など、その半生を深く掘り下げる。

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【母の夢を背負い、中学卒業から半年でプロレスの世界へ】

――葉月選手は地元・福岡県の中学を卒業した半年後、2013年10月にスターダムに入団しています。まずはプロレスを志したきっかけから伺えますか?

葉月:親がプロレス好きだった影響もありますが、一番は自分の環境ですね。私は中学校にほとんど行ってなかったんです。周囲は「どこの高校に行こうか」と進路を考える時期だったんですが、私は勉強が得意ではなくて......。得意なことといえば「体を動かすこと」とでした。

 あとは、とにかくプロレスが大好きだったんです。母も女子プロレスラーを目指していたけど、当時は身長や体重制限があって夢を断念したと聞きました。「じゃあ、自分がその夢を一緒に叶えようかな」と思ったのがきっかけですね。

――当時、プロレスはよく観ていたのですか?

葉月:WWEばかり観ていました。当初、日本に女子プロレスがあることを知らなかったんです(苦笑)。

――中学を卒業してからスターダム入寮までの半年間、ご自宅でトレーニングをされていたそうですね。

葉月:父が筋トレにハマっていた時期で、自宅にダンベルなども揃っていたので一緒に鍛えました。本当は(中学卒業後の)4月に入寮する予定だったんですが、うちは決して裕福な家庭ではなかったので、半年間バイトをして資金を貯めてから上京したんです。

――入寮の翌年7月にデビューしますが、自宅自主トレと道場での練習の一番の違いは?

葉月:ひとりの時は「どこまで追い込めるか」という自分自身との戦いですが、プロレスの練習は「他人との戦い」でもあります。「あの子はできるのに、なぜ自分はできないんだろう」という葛藤が常にありました。あとは、筋トレだけでは身につかない、受身などの技術的な要素が一気に増えたことも大きかったです。

――同期は、現在タッグチーム(FWC)を組むコグマ選手ですね。ライバル意識や嫉妬心はありましたか?

葉月:めちゃくちゃありましたよ! 同じ部屋の二段ベッドで暮らしていたんですが、コグマは運動経験がなかったのに、なんでも一回見ただけでパッと動けちゃうタイプだったんです。周囲からは「コグマは動けるのに、なんで葉月はできないの?」と常に比べられて......。ずっと「何くそ!」という精神でやっていました。

【紫雷イオとのユニットから移籍して"愛されヒール"に】

――その後は休業期間(2015年8月~16年11月)を経て、2016年11月には、現在「IYO SKY」としてWWEで活躍する紫雷イオ選手とのユニット「Queen's Quest(以下QQ)」を結成しました。

葉月:私が休業していた期間に、イオさんとやり取りをして実現したユニットです。結成後に、イオさんから「葉月がいなかったらできていなかった」という言葉をいただいて、「自分が大事な存在なんだ」と思えたのがうれしかったですね。

――イオ選手はどのような存在でしたか?

葉月:ひと言で言えば「怖い存在」でした(笑)。

仲よくなればすごく優しい方なのですが、上下関係も厳しく、ダメなところはしっかり指摘してくれましたね。私にプロレスの厳しさを叩き込んでくれた存在です。

――ベビーフェイスとして活躍しましたが、2018年のチーム編成ドラフト会議で、ヒールユニット「大江戸隊」へ移籍することになります。

葉月:もともとベビーフェイスの戦い方をしていたわけではないので、スタイル的には「楽しそうだな」と思いました。ただ、ドラフトでイオさんが先に自分を選んでくれなかったのは悔しかったですね。選んでくれていたらQQに残れたのに......。

――先に選択権のある大江戸隊が3巡目で葉月選手を指名。イオ選手も3巡目で獲得を希望していました。

葉月:「私は、そこまで大事な存在じゃなかったんだ」と。だったら、大江戸隊で這い上がって見返してやる、という反骨心が大きくなりました。実際に活動すると、「ヒールは何をしてもいい」という自由さがありましたね。当時の大江戸隊は"愛されヒール"という感じのユニットで、お客さんを楽しませたいという精神はそこで備わったと思います。

――ベビーフェイス時代と比べて、お客さんとの接し方も変わりましたか?

葉月:QQの頃は自分のことで精一杯すぎて、周囲があまり見えていなかったんです。常にほかのメンバーやイオさんと比べられる自分を「どうにかしなきゃ」という焦りが強くて。でも、大江戸隊になってからは「もっとお客さんと一緒に試合を楽しんでいいんだ」と思えるようになりました。今の自分があるのは、あの時があったからだと思います。

【一度リングを離れて気づいたプロレスの楽しさ】

――理由は明かされていませんが、2019年12月に一度、リングを離れることになりましたね。

葉月:正直、やめたくはなかったんです。あれは若気の至りというか、いろいろあった勢いで「もうやめる!」と言ってしまった部分もあって......。リングを離れている間も、常にSNSで動向はチェックしていましたし、「もし今もスターダムにいたら、どうなっていただろう」と考えることは何度もありました。

――その期間、トレーニングは継続していたんですか?

葉月:一切やっていませんでした。筋トレもせず、普通にコンビニや居酒屋でアルバイトをして過ごしていました。

――お客さんなどに声をかけられたりすることはなかったんですか?

葉月:当時はコロナ禍でみんなマスクをしていましたし、リング上の「葉月」と一般人の私とでは性格も雰囲気もだいぶ違うので、まったく気づかれませんでしたね。ただ、バイト生活は楽しかったけど、どれだけ頑張ってもプロレスのように熱狂的に応援されることはない。

「リング上って楽しくて幸せな場所だったんだ......」と感じました。

――復帰は2021年5月。何かきっかけがあったんですか?

葉月:木村花選手のメモリアル興行(2021年5月23日、後楽園ホール)で、一日限定で復帰したことです。そこで試合をして、「やっぱりプロレスは楽しい、またやりたい!」と心から思えたのが大きかったですね。プロレスって「正解がない」と言われるけど、復帰してからは「本当に自分の好きなようにやっていいんだ。無理に型にハマらなくていいんだ」と自然体で戦えるようになりました。

――葉月選手は飛び技、締め技、投げ技のバランスがいい選手ですが、理想のレスラー像は?

葉月:それが、特になかったんですよ。ほかのレスラーは「この選手に憧れて入門した」という理由が多いと思うのですが......。私はWWEを観ていたので、海外のディーバ(女子選手)への憧れはありました。ただ、それを日本のリングで、そのまま表現できるわけではない。自分はリングでの「ケンカっ早い真っ向勝負」が好きなので、それができる相手を常に探しています。

――そんな葉月選手にも、休息の時間は必要だと思います。

オフのリフレッシュ方法を教えてください。

葉月:野球を観に行くことですね。特定の球団のファンというよりは、12球団全部を見ています。球場にもよく足を運びますし、YouTubeでも野球系の動画をよく見ています。

――12球団すべてとは本格的ですね。"推し"の選手もいないんですか?

葉月:「この人もいい、あの人もいい」と魅力的な選手が多すぎて、ひとりに絞れないんです(笑)。だから、プロ野球という競技そのものが好きですね。3月から始まるWBCも、今からめちゃくちゃ楽しみにしています。

(後編:師匠の葉月も驚くフワちゃんの覚悟 自身の飛躍も目指しながら、弟子のことを「第一に考えて動いている」>>)

【プロフィール】

葉月(はづき)

1997年9月29日生まれ、福岡県出身。身長155cm。中学時代、独学でトレーニングを開始し、卒業から半年でスターダムに入団。2014年7月6日にデビュー。

紫雷イオ率いる「Queen's Quest」での活動を経て、2018年に「大江戸隊」へ移籍。2019年12月に突如引退。約2年間のブランクを経て、2021年10月にスターダムへ電撃復帰。現在はコグマとのタッグ「FWC(福岡ダブルクレイジー)」として活躍する傍ら、CMLL日本女子王座・スパーク女子王座の二冠を保持。タレント・フワちゃんのコーチも務めるなど、技術・信頼ともに団体を支える柱のひとり。

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