ホンダF1バーレーン合同テスト
前半戦レポート(前編)

 怒濤のような3日間のテストを終えたホンダの折原伸太郎トラックサイドゼネラルマネージャーは、思いのほか明るい口調で語り始めた。

「疲れましたね(苦笑)。

去年までのテストと比べると仕事量がケタ違いなので、単純に疲れたというのが正直なところです」

 バーレーン合同テストのアストンマーティン・ホンダには、異様な空気が漂っていた。いや、正確に言えば、アストンマーティン・ホンダに関する不穏な噂話ばかりがひとり歩きしていた。

【F1】アロンソが怒ってグローブを投げた...話はデマ アス...の画像はこちら >>
 冷却に苦しんでいるだとか、エンジン回転数制限を設けているだとか、さまざまな噂や憶測が流れた。さらには、チームオーナーのローレンス・ストロールがスタッフを叱責しただとか、フェルナンド・アロンソが怒りのあまりグローブを投げ捨てたといった話まで流れてきた。

 結論から言えば、それらすべては現実からあまりにかけ離れていた。

「いろいろとトラブルがあったので(テスト周回は)200周ほどに留まってしまいました。本当はもっと稼ぎたかったんですが、新しいもの(マシンパッケージ)ですから細かなトラブルが出て走行距離が稼げないのはある程度は覚悟していましたし、そのなかで最低限の距離は稼げたかなと思っています。

 それ以上に大きかったのは、今回たくさんの計測器を積んで走りましたので、そこから得られたデータです。それをHRC Sakura(栃木県さくら市)にフィードバックして解析に生かし、そのデータを元に次のテストに向けて何を改善しなければいけないかを見てくれています。そのために必要なデータを収集できたのが、我々としては大きな収穫でした」

 依然としてトップから4.5秒落ちの新規参戦キャデラックと同等のペースでしか走れていないことや、バーレーン初日にパワーユニットのデータに異常が出たため安全策で走行を止めたことは事実だ。

 そういった事実があるがゆえに、あまりにアグレッシブに攻めたマシン設計で冷却が厳しそうなイメージもあいまって、バーレーンの気温30度のコンディションに合わせた排熱ルーバー(スリット状の排気口)を装着したことや、エネルギーマネジメント的にメインストレートで最高速を伸ばしていないことなどが、曲解されて「推測」につながってしまった。

【テストプログラムが遅れた理由】

 ホンダの折原トラックサイドゼネラルマネージャーはこう説明する。

「まだ冷却系がどうこうと語れるような温度のなかで走っていないので、何とも言えませんね。

排熱ルーバーを開ければ当然ラクになりますし、閉めればキツくなりますし、(チームとして空力的要求から)自分たちが走らせたいルーバーレベルで走った時にパワーユニットの温度が何度になるのかは、来週のテストで見ていくことになると思います。

 今は普通に走らせることが最優先です。そのために、やや安全方向にマージンを持たせたルーバーの数にして走らせています」

 これは通常のレース週末でも行なう作業である。

 チームとしては空力性能をロスしないように、可能なかぎり排熱ルーバーは閉じたい。しかし閉じすぎれば、パワーユニットの温度が上がってしまう。その究極的なバランスを取る作業は来週のテストでやることで、今は冷却に厳しいパッケージなのかどうか判断する段階にないという。とにかく今は、それ以前の基本データ収集のため「普通に走っている」段階だ。

 また、エンジンの回転数にしても、それ以上は回せないと噂された11,000rpm以上に使っている。

 バーレーンでの前半3日間のテストは、アストンマーティン・ホンダにとって極めて重要なステップになるはずだった。

 新車AMR26の製造が遅れ、1月のバルセロナ合同テストで走れたのは、実質的にわずか1日のみ。ライバルたちが事前シェイクダウンを済ませたうえで3日間フルに走ってきたのに対し、アストンマーティン・ホンダは1日のみ。その後の200kmのフィルミング走行(撮影目的のプライベート走行)は、バルセロナでもバーレーンでもキャンセルした。

 つまり、今回のバーレーンが実質的に走行2日目。ライバルたちのバルセロナ初日と同じフェーズだったわけだ。

 だからこそ細かなトラブルも発生し、トラブル自体が些細なものでも原因の究明や対策に時間を要し、テストプログラムは遅れることになった。

【バルセロナの後れは大きな痛手】

 フェルナンド・アロンソも、その点には苦言を呈した。

「望んでいた状況にないことは確かだし、遅れも取ってしまっている。なかには1月9日にシェイクダウンをしたチームもあったんだ。彼らはそこから1カ月にもわたってデータ分析と問題解決に当たってきたことになる。

 バルセロナで十分に走り込むチャンスを逃したのは、我々にとって大きな痛手だった。バルセロナの前にフィルミング走行もしなかったし、今回のバーレーンの前にもやらなかったから。

 だから今回のバーレーンが、初めての本格的なテストになってしまっている。走るたびに小さなトラブルがあちこちに出て、テストプログラムに影響を及ぼしてしまっているんだ」

◆つづく>>

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