西部謙司が考察 サッカースターのセオリー
第88回 エリオット・アンダーソン
日々進化する現代サッカーの厳しさのなかで、トップクラスの選手たちはどのように生き抜いているのか。サッカー戦術、プレー分析の第一人者、ライターの西部謙司氏が考察します。
来月末にサッカー日本代表が対戦するイングランドは、W杯予選を圧倒的な戦績で勝ち抜き本大会へ。ポイントとなったのは6番のポジションを務める23歳、エリオット・アンダーソンの台頭でした。
【6番の発見】
W杯欧州予選で8戦8勝、22得点無失点。イングランド代表の戦績が圧倒的だった。
負傷者などでメンバー構成は難しかったはずなのだが、全くそう感じさせない磐石の予選通過。そして最注目がエリオット・アンダーソンの台頭だった。
2025年9月のアンドラ戦が代表デビュー。ノッティンガム・フォレスト所属の23歳のMFは、そこからあっという間にレギュラーポジションを確保した感がある。トーマス・トゥヘル監督はポジションごとに選手を競わせる方針のようだ。ポジションが重なる選手がいる場合、違うポジションに起用するやり方もあるが、トゥヘル監督は本来のポジションで起用するのが基本。
例えば、10番のポジションには候補が多いが、その選手を8番や6番として起用することはしない。予選で主に10番ポジションを務めたのはモーガン・ロジャースだが、ここにはジュード・ベリンガム、フィル・フォーデン、コール・パーマー、エベレチ・エゼがいて過当競争になっている。実際にはフォーデンを「偽9番」に、エゼを11番(左ウイング)に起用しているが、違うポジションでの適性を探っていたということなのだろう。
多すぎるくらいの10番と違い、極めて層が薄かったのが6番である。だから、ここにアンダーソンが定着した意味が大きいわけだ。
【ミスの少ない堅実さ】
ちなみに6番は守備的MF、8番はリンクマン、10番は攻撃的MFを指す。イングランドは4-2-3-1システムがベースなので、ふたりのボランチに大きな違いはないのだが、トゥヘル監督としては8番と6番では起用するタイプが違うようだ。
イングランドはもともとポジション番号にはわりと無頓着だった。南米では昔からプレーヤーの特徴を背番号と関連させていたが、イングランドが「6番の選手」「8番の選手」と呼ぶようになったのはおそらく2000年代に入ってからだろう。これは推測だが、番号と特徴の関連性が同じであることから、オランダからの影響ではないかと思われる。
2025年に入ってからイングランド代表監督に就任したトゥヘルには時間がなかった。そもそも過密日程の間に組まれる代表戦は準備時間がほとんどない。そこで各ポジションの選手を招集して、クラブと同じ役割を与えてチームを構成した。6番は6番の、10番は10番のプレーをすればいい。それでチームとしてのバランスはとれるという方針である。
9番のハリー・ケイン、8番デクラン・ライス、7番ブカヨ・サカ。この3人はほぼ決定。CBもエズリ・コンサ、ジョン・ストーンズ、マーク・グエイの3人のうちふたり。右SBはリース・ジェームズ、左はニコ・オライリーが有力だが、6番はジョーダン・ヘンダーソンくらいしか候補がいなかった。そこにアンダーソンが台頭してきて、予選を通じて不動の地位を固めつつある。
アンダーソンの強みは正確な右足のパスだ。長いレンジでもインサイドキックで強いパスやクロスボールを届けることができる。ワンタッチコントロールのうまさ、局面での判断の的確さ、守備における献身性もあり、6番にうってつけの人材だ。もとは8番タイプだったが、代表ではライスと組むボランチとして、少し後方で構える場所が定位置になっている。
ミスの少ない堅実さ。6番アンダーソンのプレーぶりは、そのままイングランドのスタイルに重なる。
【静かに勝つイングランド】
圧倒的な戦績とは裏腹に、イングランドのプレーぶりは実はそれほど華々しいものではなかった。
イングランドの試合はあまりエキサイティングではない。ことごとく整然とした静かなゲーム展開になる。これは1990年代以降に際立つ特徴になっているが、今回の予選はその典型だった。相撲の決まり手で言えばことごとく「寄り切り」。堅実そのものの勝ち方は8試合失点ゼロによく表れている。
守備的というわけではない。常にボールは保持している。ただ、攻め込みの変化はあまりなく、ポジションの流動性も低い。それこそポジションごとの役割を淡々とこなしながら、粛々と勝っていった。ポジションを固定しているのでどうしてもそうなるのだ。
ボールを保持しているイングランドがそうなので、相手も同じく静かになる。どちらも大きな動きがなく、カオスにもならず、そのままの形で試合が整然と進んでいく。
意外性が少ない攻撃のなか、低めの位置から前線に鋭いパスを差し込めるアンダーソンは、攻撃のスイッチを入れるうえで重要なポイントだったと言える。
ベリンガム、パーマー、フォーデンを同時起用すれば、イングランドの攻撃には変化と意外性が増すだろう。しかし、トゥヘル監督が予選の方針を継続するならそうはならない。堅実なイングランドは変わらず、堅実な6番であるアンダーソンのパスはより重要性を増すと思われる。
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