東京ヴェルディ・アカデミーの実態
~プロで戦える選手が育つわけ(連載◆第39回)

Jリーグ発足以前から、プロで活躍する選手たちを次々に輩出してきた東京ヴェルディの育成組織。本連載では、その育成の秘密に迫っていく――。

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 トップチームが長らくJ2に甘んじ、ユースチームが高円宮杯U-18プレミアリーグから陥落していたことで、東京ヴェルディはアカデミーの選手獲得競争において、近隣の他クラブに後れを取るようになった。

 その事実は、現在アカデミーのヘッドオブコーチングを務める中村忠、そして昨季までユースチームの監督を務めていた小笠原資暁(現トップチームコーチ)がそろって認めるところだが、現在は横浜F・マリノスでユースチーム監督の職に就く冨樫剛一もまた、かつてはヴェルディの現場スタッフとして、それを実感したひとりである。

「いろんなクラブがスカウティングをして、選手に入ってもらう努力をしているなかで、ヴェルディがその争いに勝てないということは、すごく多かったです」

 冨樫が続ける。

「たとえば、東京都のU-12トレセンに20人の選手がいたとしたら、18人はFC東京が(U-15の)むさしと深川で分け合って、あとのふたりぐらいが、うちのセレクションに来てくれる。そんな厳しい状況が実際ありました」

 かつてのヴェルディと言えば、クラブユースの代表的存在。菊原志郎(現FC今治U-12監督)は、自身がアカデミーの指導者としてヴェルディにいた頃を振り返り、「いい選手がたくさん来てくれた。(有望な)選手を取れないということはなかった」という。

 だがしかし、「やっぱりJ2に落ちてからですかね。FC東京だとか、川崎フロンターレだとか、周りのクラブの人気が出てきた」。そう言って、菊原が続ける。

「僕はもうクラブ(ヴェルディ)を離れて長いので、最近のことはわかりませんけど、ミニラ(中村)と話していても、『いい選手が取れないんですよ』って聞きますから」

 東京近郊のJクラブ勢力図について、「ヴェルディ(の人気)が少し抜けていたところから、だんだんと落ちてきた一方で、他のクラブが上がってきた」とは、菊原の弁。

 菊原は続けて、「僕自身はヴェルディに10歳から40歳ぐらいまで30年ぐらいいたので、今まではなかなか外から見る機会がなかったけど、(外から見ても)ヴェルディはやっぱりヴェルディ。

大事にしているものは変わっていない」としたうえで、こう語る。

「ただ、ちょっと(選手が)小ぶりになってきている。ジュニアユースとか、ユースの試合を見ても、昔だったら11人中11人がいい選手。さらにベンチの選手を含めて、15人ぐらいが『いい選手だね』って言われていたけど、今だとやっぱりそこまではいない。

 本当に高い基準でいい選手って言えるのは4、5人ぐらいで、本当にプロになりそうだなっていうのはひとりかふたり。そういう意味では、(いい選手を取れなくなったことで)多少小ぶりになったっていうのはあると思います」

 だが、菊原同様、現在はヴェルディを離れた冨樫が思うのは、「もちろん、いい種があればいいものが育つんでしょうけど、それにはやっぱりいい畑、いい土壌がないといけない」ということ。そのうえで、「よみうりランドは、あらためていい土壌と思います」と言い切る。

 冨樫がそれを実感したのは、F・マリノスのユースチームとともに練習試合で彼の地を訪れた時だった。

 その日のよみうりランドでは、同じグラウンドでユース(高校生)の試合前にジュニアユース(中学生)の試合が行なわれていた。それを見ていた冨樫が、ふと傍らに目をやると、グラウンド脇のちょっとしたスペースを利用して、ジュニア(小学生)の子どもたちがミニゲームをやっていたという。

「その子たちは午前中に練習が終わって、持ってきたおにぎりを食べて休んで、それから勝手にミニゲームをやっている。一見すると邪魔に見えるんですけど、それがすごく大事だっていう認識をクラブ全体が持っている。

 だから、僕自身も(中学時代に)練習は休みでも、グラウンドへ行く。行けば誰かが来るし、誰も来なくても、ひとりで壁当てをしていれば、コーチが出てきて1対1をやってくれるし、誰かもうひとり来たら、2対1が始まる。もっと増えたら、じゃあミニゲームをやろうか、となるんです」

 ヴェルディのアカデミーで育ち、日本代表でも背番号10を背負った中島翔哉(現浦和レッズ)の名を挙げ、「翔哉なんか、1日中いましたからね。朝来て、壁にボールを蹴って、僕ら(コーチ陣)と一緒にボール回ししたりして。で、自分の(チームの全体)練習をやって、その後もまだ残っていました」とは、菊原の回想である。

 冨樫は、ヴェルディのアカデミーが選手を集めることの難しさを知ったうえで、それでも誇らしげに語る。

「あのクラブは相変わらず強い土壌を持っているなって。ヴェルディはこの土壌があれば大丈夫だって思います」

(文中敬称略/つづく)

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