東京ヴェルディ・アカデミーの実態
~プロで戦える選手が育つわけ(連載◆第40回)

Jリーグ発足以前から、プロで活躍する選手たちを次々に輩出してきた東京ヴェルディの育成組織。本連載では、その育成の秘密に迫っていく――。

【Jリーグ連載】日本屈指のJクラブ激戦区にありながら、東京ヴ...の画像はこちら >>
 東京ヴェルディが活動拠点を置く東京都西部の近郊は、日本屈指のJクラブ激戦区だ。

 FC東京FC町田ゼルビアはもとより、川崎フロンターレ、横浜F・マリノス、横浜FCなどの神奈川県勢とも、アカデミーの選手獲得においては競合する。

 結果、ヴェルディのアカデミーは近年、その競争において後れを取るようになったという。

 だが、自身もヴェルディ(当時は読売クラブ)のアカデミーで育ち、指導者としても多くのプロ選手を育てた菊原志郎(現FC今治U-12監督)は、現状を決してネガティブにはとらえていない。

「フロンターレの生田の練習場もすごく環境が整備されているし、お互いが競争のなかで刺激し合いながら、いろんなクラブがよくなっていくのが一番いいんじゃないかなと思います」

 そう語る背景には、それでもなお、ヴェルディのアカデミーからは優れた選手がコンスタントに輩出されているという自負があるからでもある。菊原が続ける。

「苦しいなかでも、やっぱり面白い選手が出てくるっていうのは、このクラブならではの感覚をみんなが共有して、ヴェルディっていうのはこういう選手を育てるために、こういうことを大事にして、こういう関係を作っていこうということに対して、みんなの共通理解が深いからだと思います」

 菊原がヴェルディのアカデミーで監督やコーチに就いていた当時、「少しでもわかりやすいようにとか、あまり強い言葉は使わないとか、言葉の使い方や伝え方は、変えていかなければいけない」という意識は持ちつつも、基本的には「(自分がアカデミーの選手だった時と)やっていることは変わらない」と語る。

「自分がコーチになっても、やっぱり本気でやって、とにかく子どもたちにいいプレーを見せる。ユースの(コーチだった)時なんか、僕が一番たくさん点を入れたりしましたから(笑)。言葉では言いませんけど、『いいプレーを見せるから、見て感じろ』と」

 そして現在、ヴェルディを外から見る立場になったからこそ、わかってくることもあるという。

「やっぱり他のクラブへ行くと、もちろんクラブとしての哲学はあるけれど、このコーチはここを大事にするけど、このコーチはちょっと違うとかっていうことがあったりする。

 でも、ヴェルディのコーチたちは、ヴェルディってこういうことを大事にしているよねっていうものが、8、9割はみんながそろっている。

コーチも、選手も、その親もみんな、『ヴェルディはここを大事にするんだよ。それをやらないと、ヴェルディではやっていけないよ』っていう感覚が伝統として受け継がれ、残っているのかなっていう気はします」

 ヴェルディのアカデミーで監督やコーチを務めた冨樫剛一(現横浜F・マリノスユース監督)は、まさに選手獲得が思うようにいかなかった時代でも、伝統を引き継ぎ、次世代へとバトンをつなぐことを忘れなかったひとりだ。

「選手たちがサッカーを知るっていうか、サッカーを探求するっていうことに対して、自分たち指導者がどう携わっていくのかは、ものすごく意識していました」

 そう語る冨樫は、自身の中高生時代を振り返り、指導者の立場になった今だからこそ、納得できることが数多くあったと実感する。

「僕らもそうであったように、答えを言ってしまったら簡単なのかもしれません。でも、自分たちで何かを考えてつかんだものが身についていくとなった時、指導者の言葉の使い方や、何を見て、どこまで要求するかが、選手たちの成長にすごく影響を与えるということは、大人になって(ヴェルディに)戻った時、勉強すればするほど、すごく感じたことです。

 自分はすごくいい指導者に巡り合えたんだなっていうことを、あらためてあのクラブに行って感じることは多かったですし、自分もそういう指導をしていければなって思っています」

(文中敬称略/つづく)

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