F1第1戦オーストラリアGPレビュー(後編)
◆レビュー前編>>
開幕戦オーストラリアGP決勝のスタートでは、事前に懸念されていたように(※)失速やホイールスピンで出遅れるマシンも散見され、17番グリッドのフェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)は混乱をぬって10位までポジションを上げた。
※新レギュレーション導入に伴ってパワーユニットの特性が変化し、それによってスタート時の操作が難しくなったと指摘されている。
しかし、「あと1台喰えればQ1突破か」と沸いた予選も、Q1突破の16位まで0.722秒もの差があったように、決勝でも10位のポジションを維持するのは現実的ではなかった。
「スタートが今日のレースのベストな部分だったね。いいスタートがきれて10位までポジションアップができて、最初の2周は最も楽しかった。これは予想外だったね。でも、そこからは本来のポジションに下がっていくだけで、アラームが出たので一度ピットに戻ってマシンを止めたんだ」アロンソはそう語るが、15位に踏みとどまっていた11周目にVSC(バーチャルセーフティカー)が出たのを見てピットインさせたチームは、『プランB』への切り替えをアロンソに伝えていた。
おそらく、集団から大きく引き離される状況ではなかったからこそ、やれるところまで"レース"をしてみようではないか、というプランだ。でなければ、わざわざ約5秒のゲインのためにVSCの間に慌ててピットインする必要性はない。
だが、アロンソは「プランBって何だ? 今朝の話と何が変わったんだ?」と、テストプログラム遂行にこだわる姿勢を見せた。目の前のポジションひとつやレースの自己満足より、ここでひとつでも多くさまざまなデータを収集しておくことが今後の熟成につながる、という意見だろう。
チーム代表代行の立場であるチーフトラックサイドオフィサー(CTO)のマイク・クラックはこう説明する。
「パワーユニット関連のトラブルはなかったし、走りきることは可能だったと強い自信を持っている。我々がパーツ不足に直面しているのはみなさんもご存じだと思うが、我々が走っているポジションを考えれば走り続けることによって得られるものはあまりなかったから、パーツの温存を決断したんだ」
クラックがいう「パーツ」というのは、スペアがないバッテリーを、念には念を入れて次戦に向けて温存したという意味だろう。
【ストロールも振動対策に前向き】
結局のところ、車体もパワーユニットも、まだまだ実力を発揮できるほど走り込めてはいない。
開幕前テストのバルセロナでもバーレーンでも、そして開幕戦のメルボルンでも、走行距離は圧倒的に少ない。今はまだ、ライバルたちが開幕前にやっていた確認作業とマシン熟成のためのデータ収集、信頼性確保の作業を進めている状態だ。
しかし、信頼性の確保については対策が進み、決勝を走りきることに問題はないレベルまではきた。バッテリーのスペアについても、今回問題に見舞われたのは高電圧系ではなかったため、現場で修理したのち、中国GPではスペアとして利用できるよう検討を進めているという。
「ドライバーが神経系にダメージを負うリスクがあるため15~25周しか走ることができない」とエイドリアン・ニューウェイが発言した件についても、コクピットに振動が伝わっていることは確かだが、そのデータを正確に収集したわけではなく、医学的見地で語ったものでもない。
今回のオーストラリアGPでは、そもそも「バッテリーへの振動」対策のみで、コクピットに伝わる振動対策は行なっていない。チームも金曜フリー走行ではセンサーを積んで計測したが、土曜・日曜は重量増を避けるために振動を計測するセンサーは搭載していない。
つまり、それほど深刻には考えていないということだ。
「私自身もドライバーたちと振動について話しましたが、バーレーンのテストと比較すると大きく改善していると話していましたし、ランス(・ストロール)も感覚としては半分くらいになったと言っていました。彼らもドライブできる状態になってきたということなので、振動対策が見えてきたことは収穫かなと思います。
ドライバーに対する振動については、感覚的なことではなく、数値的にどうかというのをもう少し詳しく分析して、そのうえでアストンマーティン側とともに振動対策をさらに進めていきたいと考えています」(HRC渡辺康治社長)
「我々としてはその点を改善する必要があるのは間違いないが、こういった振動を計測できるのは(余分なセンサーを搭載できる)FP1とFP2だけだ。予選・決勝に向けてそれらを搭載するわけにはいかないからね。
【HRC渡辺社長のビジョンは?】
開幕戦オーストラリアGPでアストンマーティン・ホンダは、ライバルとは戦わず、まだ自分たちと戦っている段階でしかなかった。
それは、誰が悪いとかどこに責任があるという話ではなく、身内と戦うのでもない。自分自身の問題と向き合って改善することでしか、前に進むことはできない。
パワーユニットの振動や信頼性の問題に関しては、1戦遅れでようやく遅れを取り戻してきた状態だ。ここからようやく、ライバルたちがすでにバーレーンテストでやってきたように走行距離を重ね、車体とパワーユニットの熟成を重ねて性能を向上させていく道のりが始まる。
「まだパワーユニットの使い方に制限をかけている部分もあるので、現時点でパワーユニットのパフォーマンスとマシンパッケージとしてのパフォーマンスがどうこうと言うようなレベルまでパワーユニットを使ってはいません。
振動対策がさらに進めていければ、次はパワーユニットをフルに使っての性能確認と、それを向上させていくための本来やるべき開発に着手していけます。それをなるべく速く進めたいと思っています」(HRC渡辺社長)
「中国GPではもっと走行させることができると、自信を持っています。来週末は、今週よりも普通のレース週末になるはずです」(HRC折原GM)
パフォーマンスはまだまだトップに遠く及ばないレベルだが、走ることでしか前には進めない。そして己を知り、己を磨いて、百戦危うからずと言えるところまでいくしかない。
次の中国GPこそは"レース"をし、ライバルたちと戦い、本当の意味での開幕を迎えられることを期待したい。



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