2025年6月、WBO世界ウェルター級タイトルマッチ。王者ブライアン・ノーマンJr.(米国)に挑んだ佐々木尽(八王子中屋)は、5回KO負け。
再び、日本人未踏の頂きを目指す24歳の現在地。そして、ともに戦う71歳のトレーナー、中屋廣隆の覚悟を追う。(4回連載/最終回)
最終回/「The Story」――証
2026年2月19日、東京・後楽園ホール――。
「赤コーナーより、佐々木尽選手の入場です」
静寂。落とされた天井の照明。
俺を突き動かす、確かな何かをくれ。
暗闇を切り裂くギターの旋律。
8カ月ぶりの再起戦。
24歳で迎える『The Beginning』。
「このまま終わらせることはできない。何度くたばり、朽ち果てたとしても」
自問自答を繰り返した。そして、リングイン。観客席は早くも、再起を待ち侘びたファンの熱気に包まれた。
試合開始を告げる鐘が鳴る。尽は、開始早々からフルスイング。左中心にフックの連打。どよめく観客。前日は、「明日はまず、左ジャブで圧倒したい。成長した姿を見せたい」と話していた。だが、リング上にいたのは、以前と同じ自分。
相手が打ち合いを望めば、一歩も引かずに真っ向勝負。
よくも悪くも、それが、佐々木尽だった。
実力差は明白――。
2ラウンド、早くも"時"を伺い始めた。
残り、1分51秒。
連打をあえて浴びる。1発、2発、3発、4発......。
打ち返さない。ただひたすら、浴び続けた。
そして......。
18発目、右アッパーを受けた瞬間、鋭くコンパクトに切り返した左フック。
相手は、吊り糸の切れた操り人形のように、落ちた。
ノックアウトタイムは、2ラウンド、1分21秒――。
18発連打を浴び、一発で倒した。
試合後、衝撃のKO動画はSNSで瞬く間に拡散され、思いがけず、世界中に広まった。
8カ月前は意識を飛ばされ、年間最高KO賞の"倒され役"だったボクサーは、"倒し役"としてその名を広めた。
試合評価は賛否両論。SNS上では「尽の試合は面白い」「最高!」「華のあるボクサー」という称賛もあれば、「残念」「成長していない」「一発頼みでは、世界は無理」という冷ややかな意見も。
試合後の囲み取材――。
「本当は、もっと練習してきた左ジャブを使うつもりでした。でも、相手は、予想とは違って、最初から出てきた。自分は、下がるボクシングはしたくない。なので、今日に限っては、あれが正解と思っています」
八王子中屋ジムで初めて取材した時、「自分のボクシングをひと言で表現するとすれば」と尋ねた。
「The Movie」
即答だった。
「勝っても負けても、映画のような試合を見せたい」
再起戦は、期待通りの「The Movie」。
ただし、時には退屈な演技もできなければ、世界は厳しい。それも現実。
尽も理解している。それでも――。
「練習通りにはいかなかった。ただ、それも想定内でした」
控室、笑顔の尽を見守るトレーナーの廣隆は答えた。
相手が打ち合いを望めば、一歩も引かずに真っ向勝負。
確かにそれは、以前と同じ。だが、ジャブを突いて距離を測り、両腕のガードだけでなく、頭を振ったり、スウェーで避けて攻撃を返した。被弾もわずかにずらし、芯は外した。8カ月前とは違う姿。
「中屋、トレーナーとは耐えるもんだ。耐えることが、トレーナーの仕事だ」
廣隆が30歳でトレーナーを始めたばかりの頃、尊敬し、慕っていた先輩トレーナー、横田忠から言われた言葉。当時、師匠から言われた言葉の重み。70歳を過ぎた今、あらためて噛み締めていた。
成長を待つ。急がない。そして、信じる。
それが、廣隆の流儀。
ただし、信じることはできても、待てる時間は無限ではない。
誰よりも実感し、背負っていたのは他ならぬ、廣隆自身だった。
「尽が世界チャンピオンになるストーリーは、そのまま、私の人生のストーリーに被ります」
40年前、廣隆は、育ち盛りの息子3人を抱えながら、生活のための仕事を辞めた。ボクシング業界に戻り、「トレーナーとして生きる」と決めた時、みんなから反対されても、笑顔で背中を押してくれたのは、妻だった。
「そのほうが、貴方らしいかもね」
相談した時、妻はあっけらかんと笑顔で答えた。
今、妻は難病と向き合っている。
残された時間は限られた。
自分にできる、唯一の恩返し。大勢のボクサーを指導し、日本、東洋など数々のチャンピオンを輩出しながらも果たせていない、「世界チャンピオン」を育てる夢。それを叶えること。40年前、「ボクシングに生きる」と決めた自分のわがままを受け入れ、人生すべてを懸けて支えてくれた妻の覚悟は、間違いではなかった。廣隆は、証明したかった。
尽は、おそらく廣隆にとって、ともに世界を目指す最後の弟子。
そんな思いや覚悟は、3人の息子、尽にも打ち明けず、戦い続けていた。
穏やかに、淡々と、「焦ることはない、大丈夫だから」と言いながら――。
試合翌日――。
尽は休む間もなく、廣隆の長男・一生(いっせい)会長とともにアメリカ・ラスベガスへと旅立った。現地で1カ月に及ぶ合宿に入る。日本では手合わせすることすら叶わない、世界基準のウェルター級の猛者がひしめくボクシングの本場で、実戦感覚を研ぎ澄ますためだ。
廣隆は一週間後、一生会長と入れ替わる形で現地へと向かう。
羽田空港まで向かう足で、妻を介護保険施設に預ける。帰国後は同じく、八王子に戻る途中で迎えにいく段取りも整えた。
八王子中屋ジムの壁には、主の戻りを待つ赤いジャンパーが、静かにかけられたままだった。
34年という歳月を吸い込み、色褪せた戦友。
裏地を張替えたり、擦り切れた袖、抜けたポケットの補修をしてくれたのも、妻だった。
帰国後、廣隆はジムに戻れば、すぐに袖を通す。
そして......。
尽の24戦目は、2026年5月2日。東京ドームに決まった。



![[アシックス] ランニングシューズ MAGIC SPEED 4 1011B875 メンズ 750(セイフティー イエロー/ブラック) 26.0 cm 2E](https://m.media-amazon.com/images/I/41dF0gpSbEL._SL500_.jpg)
![[アシックス] ランニングシューズ PATRIOT 13 1011B567 メンズ 010(ブラック/デジタルアクア) 25.5 cm 3E](https://m.media-amazon.com/images/I/41ZS3Bh2dVL._SL500_.jpg)
![[アシックス] ランニングシューズ GEL-KAYANO 31 1011B867 メンズ 001(ブラック/ブラック) 27.0 cm 2E](https://m.media-amazon.com/images/I/418iZuXV-tL._SL500_.jpg)




![【日本企業】 ぶら下がり健康器 懸垂バー 懸垂マシン [コンパクト/10段調節/日本語説明書/2年保証] 筋トレ チンニングスタンド (ブラック)](https://m.media-amazon.com/images/I/41B0yIoAZrL._SL500_.jpg)
![[Xiyaoer] 靴下 メンズ くるぶし 10足セット夏用 【吸汗 防臭 綿】 カラフルソックス カジュアルソックス 綿 24-27cm 靴下 おしゃれ スポーツ くつした メンズ 男性用 ビジネス クルーソックス くつ下 通気性 吸汗速乾 リブ柄 (10足セット6)](https://m.media-amazon.com/images/I/51dJIW6OMFL._SL500_.jpg)