MLBのサムライたち~大谷翔平につながる道
連載27:上原浩治
届かぬ世界と思われていたメジャーリーグに飛び込み、既成概念を打ち破ってきたサムライたち。果敢なチャレンジの軌跡は今もなお、脈々と受け継がれている。
MLBの歴史に確かな足跡を残した日本人メジャーリーガーを綴る今連載。第27回は、クローザーとして世界一を経験した上原浩治を紹介する。
過去の連載リスト〉〉〉
【超人的だった2013年シーズンの奮闘ぶり】
全米有数の人気球団であるボストン・レッドソックスの2013年のミラクルランに貢献したことで、上原浩治は一躍ビッグネームになった。あの年の上原の超人的な活躍は、ボストンの歴史に刻まれている。
当時メジャー史上 10位(リリーフ投手としては2位)の 37打者連続凡退、 30回1/3イニング連続無失点、リリーフ投手史上最高のWHIP(投球回あたりの与四球・被安打数) 0.57、ア・リーグ優勝決定シリーズMVP、そしてレギュラーシーズンからプレーオフでの3シリーズすべてで胴上げ投手......あらためて振り返っても見事だった。その頑張りによって、"コウジ・ウエハラ"はその時点で全国区の存在になった。
「自分が抑えになるとは思ってなかったし、(優勝投手になる)経験もほとんどないですから、今年だけで4回経験できて、すごくいい1年でした」
上原は自身の働きをそう振り返っていたが、メジャーでの9年間で22勝26敗、95セーブ、防御率2.66という成績を残したなかでも、この年がベストイヤーだったことに疑いの余地はない。もっとも、実はこの年を迎える前までも、上原はマウンドに立ちさえすれば常に最高級のピッチングをしてきた投手だった。
「ほかのシーズンも今年と同じほど、いい投球を続けていた。ただ、今はクローザーという役割になったから、注目度が高まっているんだろう」
レッドソックスのジョン・ファレル監督は2013年中にそう述べていたが、2009~2012年までの上原の働きを詳しく振り返ると、指揮官の言葉はあながち間違いとは言えない。ボルチモア・オリオールズ時代の2010年7月~2011年4月にはメジャー歴代3位の35試合連続無四球を達成した。テキサス・レンジャーズに所属していた2012年も打者有利の球場を本拠地にしながら防御率1.75。この年のK/BB(奪三振を四球で割った数字) 14.33 は、年間イニング以上投げた投手のなかではデニス・エカーズリー(オークランド・アスレチックス)が1989~1990年に残した数字に次ぐメジャー史上3位の大記録だった。
主に中継ぎという役割ゆえに注目度こそ低かったが、上原はメジャーの数字マニアを感嘆させるような数字を残してきた投手だったのだ。
「構えた場所に寸分の狂いもなく投げ込んでくるから、受けるのが楽しい投手だった。僕がやらなければいけないのは、打者が(主にストレートかスプリットの)どちらの球種を待っているのかを見極めて、待っていないほうのサインを出すことだけだったからね」
オリオールズ時代の女房役だったマット・ウィータース捕手はそう語っていた姿も印象的だった。
【専属トレーナーが語るメジャーで成功した理由】
そんな上原の出世を妨げていたのは故障の多さだった。最初の2年間で4度も故障者リスト(DL)入りし、以降もシーズン中の離脱が恒例になっていた。ファレルが指摘した「クローザーになったこと」と同様に、評価、名声がなかなか高まらなかった理由はこの耐久力不足にあったと言っていい。
ところがプレーオフ出場が絶望的になった2014年終盤に休養を取った以外、ボストンでの2013~14年は長期離脱なし。2013年途中からは守護神としてマウンドに立ち、2013年に世界一、2014年はオールスター選出と成功の階段を駆け上がっていく。シーズンを通じて働くことで、上原はメジャーでもついに注目を浴びたのだった。
上原のコンディション向上の理由を、2010年から上原の専属トレーナーとして身体作りを担当した内窪信一郎氏に尋ねてみたことがあった。
「よく『何か変えたのか』と聞かれるのですが、特別なことをやってきたわけではありません。もちろんトレーニングメニューを多少は変えましたが、それが決定的な要因だとは思わない。
2009年にメジャー入りした上原は、当初は先発ローテーションに入り、右肘のケガから復帰した2010年途中からリリーフとして起用されるようになった。その後、調整法に適応を施しながら、少しずつ身体が慣れていった。そして、メジャーでのフルシーズンという激務についに耐えられるようになったのが2013年だったということか。
2015年以降、上原はまたも故障に悩まされるようになった。シカゴ・カブス、日本球界に復帰して再入団した巨人でも一定の成績は残したが、やはり全盛期の輝きを取り戻すことはなかった。それでも、抜群の制球力を武器に、アメリカのファンを沸かせたピーク時の記憶が色褪せることはない。特にボストニアンはあの伝説的な2013年を忘れることは絶対にない。好調時の支配的なパフォーマンスと、優勝投手としての勇姿ゆえ、上原はレッドソックスファンのヒーローであり続けるに違いないのである。
【Profile】うえはら・こうじ/1975年4月3日生まれ、大阪府出身。
●NPB所属歴(11年):読売(1999~2008、18)
●MLBプレー歴(9年):ボルチモア・オリオールズ(2009~11途/ア)―テキサス・レンジャーズ(2011途~12/ア)―ボストン・レッドソックス(2013~16/ア)―シカゴ・カブス(2017/ナ) *ア=アメリカン・リーグ、ナ=ナショナル・リーグ
●MLB通算成績:22勝26敗81ホールド95セーブ(436試合)/防御率2.66/投球回480.2/奪三振572
●主なMLBタイトル&偉業歴:ワールドシリーズ優勝、リーグ優勝決定シリーズMVP(2013年)
●主な日本代表歴:2004年アテネ五輪(3位)、2006年WBC(優勝)、2008年北京五輪(4位)










![Yuzuru Hanyu ICE STORY 2023 “GIFT” at Tokyo Dome [Blu-ray]](https://m.media-amazon.com/images/I/41Bs8QS7x7L._SL500_.jpg)
![熱闘甲子園2024 ~第106回大会 48試合完全収録~ [DVD]](https://m.media-amazon.com/images/I/31qkTQrSuML._SL500_.jpg)